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当選をゴールとしない「選挙活動」を応援する

7月21日は参院選の投票日だ。

本来人間はポリティカルな存在だし、ソーシャルな存在であるのに、いつしかそれは生き方とかスタンスみたいなものに分類されて、そこから距離を取るような生き方やスタンス、というものが成り立つかのようなファンタジーが共有されて、かくいう私もつい最近まで「ノンポリ」を決め込んでいた。

政治的であることが、暑苦しくて、気持ち悪くて、素直に恥ずかしかった。選挙に出る人の何がすごいって、あの定型の選挙ポスターをそこいら中に貼られて恬然としてられることがすごい。政治的なヒト、モノ、コト、全てがダサくて恥ずかしくて、目を背け続けた。

そんな「ノンポリ」な私にこのたび転機が訪れた。

竹細工を学ぶために一年間滞在していた大分県別府で、「にわか隊」というイベントに参加したのがきっかけだった。

にわか隊は、温泉にまつわる全曲オリジナルの楽曲を、全曲オリジナルの振り付けで、さらにオリジナルのコスチュームで、別府の温泉街を生演奏とダンスで練り歩く、という最高なイベントだ。

そこで音楽監督をしていたのが、東京在住の片岡祐介さん。元々は打楽器が専門だが、ピアノも弾くし作曲もするし、最近では「純セレブスピーカー」という怪しげだけど素敵なスピーカーを作っている。現在メインの活動はユルイ音楽療法のようなもので、子どもや障害者と音楽をメディアにした対話を行なっている。

片岡さんに別府でお会いしたのは数回だけだけど、その後私がnoteに上げた記事をいたく気に入って下さっていた。特に「灰人(グレート)」に関する記事は、片岡さんの提唱する「純セレブ」という概念と密接に関わっており、お褒めをいただいた。

そんな縁で先日片岡さんから依頼をされて、豊島区で行われた乳幼児の親子向けイベント「片岡祐介と遊び楽団」でアシスタントとして一緒に楽器を弾く機会があった。片岡さんは子ども達に教えようとか子ども達を導こうとか、そんな下心なくフラットに子どもとの対話を音楽を通して楽しんでいた。この人を音楽の師と仰ごうと決めた。

その際に「ぜひ会ってほしい人がいる」と片岡さんから話があり、イベント終了後に安冨歩さんという人の引っ越し作業のバックで演奏するために埼玉の東松山へ移動した。移動の車内で安冨さんについて色々と話を聞いたが、経歴が多岐にわたり過ぎていて全くつかみどころがなかった。

安冨さんのおうちに到着し、わけもわからないまま引っ越し作業のバックで即興ライブを行った。

車内で前もってもらっていた情報から「女性装」という部分が抜け落ちていたので、最初に対面した時は正直面食らった。でも目が澄んだいて、私みたいな怪しい人間にも暖かく接してくれて、特に警戒はしなかった。

引っ越し作業が一段落して、ようやく安冨さんとお話をした。

「参院選に出るかもしれない」

初対面の私に機密性の高い情報がいきなり打ち明けられた。安冨さんの片岡さんに対する信頼と、片岡さんの私に対する信頼が、安冨さんの私への信頼につながっているのだと直感した。信頼は対面した回数に比例するような単純なものではない。

昨年東松山市長選に出馬した時の話をしてくれた。そして参院選に出馬したらこんなことをしたいという構想も。

政治だけの話だけではないのたけど、強固な枠組みがあったとして、その枠組み自体が立ち行かなくなってきているにも関わらず、その枠組みを更新するためにはいったんその枠組みの中で競い勝ち残らないと、枠組みは更新されない、という状況がいたるところにあって、私は既成の枠組みの中で競うことが苦手で、むしろそれによって既成の枠組みが強化されていくような気もしていて、とりあえず距離を取る、ということが多かった。「ノンポリ」を決め込んでいたのも、そんな諦念によるところが大きかった。

でも安冨さんは違った。

「選挙権のない人に向けて活動したい」

「馬を連れた選挙活動をしたい」

「なるべく生演奏と一緒に街宣したい」

「ネットを駆使した活動になる」

選挙に出馬、となると誰もが集票マシーンのように自分の名前を連呼したりビラを撒いたり手当たり次第親族知人に投票を呼びかけたり、人を票と見なすようなことになってしまいがちな中、安冨さんは当選を目的としない選挙活動を目論んでいた。

生まれて初めて、選挙に興味が湧いた。

それは安冨さんが臨む選挙への興味であって、選挙一般への興味では全然なかった。

それから一週間ほどして安冨さんの出馬が正式に決まり記者会見が行われ、公示日を迎えた。

「音楽監督」である片岡さんが仕事で遠方にいるとのことで、公示日の演奏は私に白羽の矢が当たり、新宿駅西口で行われたれいわ新選組としての第一声では、なぜか安冨さんのバックで私が演奏していた。

その後も都合のつく限り音楽担当として選挙応援に駆けつけ、うひゃうひゃと音を奏でた。路上演奏ばかりしてきた私にとっては、選挙というだけで公道であればどこで弾いても怒られない(むしろそれを止めると選挙妨害と見なされる)というのが夢のようで、リアルに路上演奏をするためだけに出馬してみようかと考えたりした。

安冨さんの「選挙活動」はとにかく型破りだ。

まず一言たりとも「投票を呼びかける」ということをしない。自身の名前もたまにしか紹介しない。スピーチの内容も毎回まるで違う。なのに毎回示唆に富んでいて考えさせられる。同じ土俵での勝負を避けつつ、明確な主張(「子供を守ろう」)を続けていた。

そして馬選挙。

都市部に馬を連れ込み一緒に歩く。馬がいるだけで風景や空気は一変し、人が集まる。特に子ども達は大興奮だ。動物愛護的な視点からクレームめいたもの(団体からの声明も含めて)が多く届いているらしいが、安冨さんはしっかりと馬選挙を行う理由について、自身の経験も交えながら極めてロジカルに説明を行なっている。

安冨さんと一緒にいると、今まで漠然とした使命感や必要性を感じて私が取り組んできたこと、それは路上演奏であったり竹細工であったりするのだけど、そうしたことを私が選択した背景と理由を明らかにしてくれた、と感じることが多い。私の生き方を強烈に肯定してくれるような安心感があるから不思議だ。

安冨さんと知り合わなければ、山本太郎の主張にどんなに共鳴したとしても、「選挙応援」はしなかっただろう。

型破りな手法によって既成の枠組みを炙り出す(逆照射する)という安冨さんのある意味で捻くれた、ややこしい、でもとにかく楽しい「選挙」だからこそ、私も応援したいと思えたし、私の野良スキルが生きているという実感がある。

さあ、投票日まで残すところ3日となった。

当選をゴールとしない安冨さんの「選挙活動」の応援は、とりあえず20日の大阪で一区切り付きそうだ。

でも当選をゴールとしないなら、公示や投票がなくても「選挙活動」は「バンド活動」みたいに続けられたりするのかもしれなくて、そんな緩くて楽しい「選挙活動」なら私も一緒に続けていきたい、とか思う。

最後に安冨さんが街宣で紹介していたバンクシーの言葉を。

許可をもらうより許してもらう方が常に簡単です。愛を込めて。














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