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2019年4月の音楽(とか)のこと

社会人生活の始まり、研修期間。東京編を終えて、4月3週目から6月1週目まで東北の田舎町(仙台から電車で1時間)でのホテル暮らし。掃除をしなくていいというメリット以上に、狭い、荷物・家具を増やせない、郵便・通販が面倒というビジネスホテル生活がストレスフル。早く定住がしたい。早く大学-大学院6年間を過ごした関東の某市に戻りたい。おまけにホテルのWi-Fiも色々支障をきたすレベルで弱くてイライラするし、「ちょっといいクラフトビール飲みながら歩いて帰ろう~」とコンビニ、スーパー、ドラッグストアを物色するとそんなものは一つも売っていないのです。

いつになくネガティブな書き出しをしてしまった。仕事というか研修自体は楽々なのに。今の一番の癒しはランニングかもしれない。送迎タクシーで帰る同期に荷物を預けての7.5 km退勤ランが実にしっくり来ている。週4ペースで走っていたら、かなり身体が整ってきた。


アルバム

ミツメ「Ghosts」

Weyes Blood「Titanic Rising」

Dexter Story「Bahir」

2、3月に比べるとなんとなーく新譜モードに戻り始めている。2017年にシングルとして「エスパー」がリリースされた時から待望だったミツメの『「エスパー」が入ったニューアルバム』は1ヶ月通しでよく聴いた。特にお気に入りなトラックはミニマルファンク「ふたり」だ。

<あなたとわたし 遠い昔には 同じ人から 枝分かれになり>

という歌いだしがこのアルバムのベストメロディ賞です。

<こうして偶然 隣にいるのかな 果てしない月日を越えて>

とさらにもう1ライン付け足してみると、例えばそのリリックにはcero「Orphans」ひいてはアルバム「Obscure Ride」に近いものも感じはしないだろうか。Ghostsというタイトルもいかにもである。「そこにいないけど、いる」、「いるけど、いない」ということ。

あまりに新譜を追えていなかった4月上旬に複数人からおすすめ頂いたWeyes Bloodは「僕に薦めるのもさもありなん」といった内容。ジョニ・ミッチェルやジュディ・シルといった70年代フォークシンガー系統のソングライティングを基調としたオーケストラルフォークに加えて、M6「Movies」ではSon Luxを彷彿とさせるようなエクスペリメンタルなエレクトロチェンバーミュージックといった面も見せている。前作とかはよくあるゆるめインディーポップSSWかなーと思ってスルーしていた記憶があるので、このタイミングで聴けてよかったです。

あとはたしかTAMTAM 高橋アフィさんのレコメンドで知った、LAのコンポーザー/マルチプレーヤーDexter Storyの新作。「エチオ・ジャズ」って聞いても僕は全く想像つかないんだけど、アフリカンなビートと、各パートのレイヤーが気持ちよくて、ゲストボーカルのセレクトも抜群にいい。特にギターの音が好きです。cero「レテの子」にメインリフもリズムパターンもかなり近い曲があったりするので、たまに遭遇する「ceroは高城さんの歌が苦手で…物足りなくて…」みたいな人は聴いてみたらいいんじゃないすか??

Bibio「Ribbons」

in the blue shirt「Recollect the Feeling」

4月の主役、年間ベスト級がこの2枚。Bibioはこれまでもやんわり聴いていたからこそ、ここに来てこんなにドンピシャの作品が来て驚いている。M4「Curls」は間違いなく今年のベストソングの一つ。10年代らしいフォークトロニカ・アンビエントにも、6・70年代のアシッドフォーク隠れ名曲みたいにも聴こえるどこまでも懐の深い曲だと思いました。ケルティックなフィドルリフがトロットロなめらかでとにかくツボ。その素晴らしさから再生環境もないのに思わずアナログ盤を衝動買いしてしまう。パープルヴァイナルめちゃくちゃ可愛いです。実は去年末くらいから、今更なタイミングにちょっと気恥ずかしさを感じつつもアナログ熱が高まっている。今のところ他にcero「POLY LIFE MULTI SOUL」、平賀さち枝「さっちゃん」も確保済みです。早く定住先に戻ってレコードプレイヤーを導入したくて仕方ない。

in the blue shirtも1stとはガラッとイメージが変わっていてビックリ。チョップドボーカルを多用したりエクスペリメンタルな面も見せながら歌心が全面に出ているのが素晴らしい。ザックリとしたフィーリングだけどDirty Projectorsの近作や、一昨年のMura Masaのデビューアルバムなんかと並べてみると面白そうだ。トロピカルな音使いや、トラックにおける人声の配置みたいなところに注目してみれば、特にMura Masaの名前を出した意図は分かってもらえるかと。

Kevin Morby「Oh My God」

なぜかこれまで名前すら知らなかったKevin Morbyを初聴き。元 Woodsのメンバーなんですね。The Beach Boys - Fleet FoxesのラインやJohn Caleだったり、あらゆる年代のSSW、フォークロック総集編といった風合の良作。ウワモノが全部気持ちいい。


Gus Dapperton「Where Polly People  Go to Read」

Loyle Carner「Not Waving, But Drowning」

Dos Monos「Dos City」

Kevin Abstract「ARIZONA BABY」 

あとよかったのはここら辺。日本のインディーミュージックをガツガツ掘る気力はあまりないので、Dos Monosを聴き始めたりするのにもこのくらいの時差があります。

折坂悠太「抱擁 / 櫂」

The Lumineers「Gloria」

優河「June」

折坂悠太新曲。相変わらず録音が本当に素晴らしいなー。KIRINJI「愛をあるだけ、すべて」なんかも手掛ける五月女哲平のアートワークもいい。概形もラインも歪んでいたり真円じゃなかったりする中央の円が素敵。安定のThe Lumineers。5日間くらい音楽聴いてない状態明けがちょうどリリースだったので、ふっと再生したらあまりに純度の高いエナジーに完全にやられてしまった。アルバムと(行けるかかなり危うい金曜日の)フジロックのステージ超楽しみです。今激推しのSSW優河のEPに先駆けた新曲も最近よく聴いている。昨年のアルバム「魔法」も併せてぜひ、The xx、Beach House、ミツメあたりのドリーム・ポップ、インディーロックラヴァー達にもっと聴いてみてほしい。もっと話題になって然るべきシンガーだと思います。

ライブ

3/30 優河 @原宿VACANT

4/14 柴田聡子 @仙台FLYING SON

4/29 七尾旅人 @恵比寿ガーデンホール

3月頭には中村佳穂も見ているし、なぜかバンドセットのSSWばかり見ている。そして、優河、柴田聡子、12月のROTH BART BARONと遡ってみると、ギター 岡田拓郎ばかり見ている最近です。初めて見れた優河は単純に歌がうますぎて震えました。その秘訣の一つは、自分の歌が一番映えるキーをしっかり把握したソングライティングにあるんだろうなーと思う。

僕の4月と言えば柴田聡子。新作「がんばれ!メロディー」は聴けば聴くほど味が出てくる。

セルフタイトルの3rdアルバム以前は完全に未聴だったのだが、この日初めて聴いた2nd「いじわる全集」収録の「いきすぎた友達」のリリックに衝撃を受ける。

私たちいきすぎた友達 盆も正月も一緒
電話に出る声あんたか父さんか兄さんかわからない

たぶん男女の幼馴染についての話な気がしていて、この言葉数だけで積み重なった関係性だったり距離感のイメージが一気に広がっていくよう。

まだまだ続いているGWには七尾旅人の昨年発売のアルバムツアーへ。20年目で初めてのバンドセットという嘘のような本当の話。去年末にでたアルバム「Stray Dogs」が今になってびっくりするくらいしっくりき始めている。リリース直後の「過去作に比べるとインパクトが足りないかな…?」とか思ってた自分とは何だったのか。これが日本のソウルミュージック。ライブでは特にKan Sanoのキーボードがかなり雰囲気を支配していて起点となっていたように思う。オーソドックスなコーラス主体の「迷子犬を探して」と1stから彼が得意としている器楽的なボーカルが面白い「崖の家」、それから大名曲「Memory Lane」が特に素晴らしかった。


その他雑記


柴田聡子のライブを観に仙台へ行ったときに、案内してもらったレコード店Vol.1(ver.)で知ったのはGofishのこの曲と百戦錬磨のドラマー坂田学のソロ歌モノアルバム。

今年は個人的に柴田聡子とイ・ランの年です、ここまで。何回も言ってますが最高なので聴いてね。


最高のディスクガイドも入手しました。


アメリカの知られざるSSW(ほとんど6,70年代)集と書くといかに今僕にとってドンピシャか分かるでしょう。ホントに知らない作品だらけでビビります。「ベーシック60」みたいな紹介文なしの取り上げられ方をされてるやつや、各ジャンル分け例で出てくる数少ない知っている名前を挙げてみるとVan Dyke Parks、Judee Sill、The Band、The Beach Boys、Steely Dan、Ry Cooder、Dan Penn、Roger Nichols & The Small Circle Of Friends、The Millennium、Ned Dohenyといったところ。どう?最高そうでしょう? 「知られざる」作品ばかりであるという実にわかりやすい証として、サブスクリプションで体感半分以上が未配信であるというのがある。なので上がっているテンションに比して、実際に聴けている作品はあまり多くないです。自分ひとりじゃ手に負えない部分があるので、誰かにも買ってもらって情報交換しながら聴き進めたいなーとか思う。実際聴いたのだと下の3枚とかけっこうよかった。


4月上旬に心動かされたのはこの対談。

クラムボンがいかに偉大かということはもっと語られて然るべきだと思います。


映画はスパイク・リー「ブラック・クランズマン」とポール・シュレイダー「魂のゆくえ」が素晴らしかった。「魂のゆくえ」の無駄なく引き締まった美しい脚本には心底感動してしまった。


エッセイの気分でもありました。

イスラエルの作家エトガル・ケレット「あの素晴らしき七年」が最高すぎて呻きながら読んだ。特に三年目「Sweet Dreams」とラスト7年目「Pastrami」が至高。


ときに嫌になってしまうインターネット。

僕はこれが全てだと思います。こうやって書いているのも、それによってほんのちょっとでもインターネットがおもしろくなればいいなーと思います。

どうぞお気軽にコメント等くださいね。