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2019年1月の音楽(とか)のこと

何ヶ月かに1回、フジロック全22回のラインナップを遡って一気見しちゃうことがみなさんはありますでしょうか。僕はある。今回は今から見ると奇跡のようなこんな並びを見つけた。2006年。FIELD OF HEAVEN。

サマソニのヘッドライナーのあれこれ(に伴うタイムライン)や匿名映画関係者へのインタビュー記事や、関ジャム年間ベストソングの放送受けたクソライターのリアクションといった胸糞の悪くなるあれこれ。文化をリスペクトすることと、その「これから」について考えることを忘れてしまってはならないと思うのです。特にあのライターの乱暴なラべリングは最悪だったな。もう全くシーンが追えていないから、ああいうポーズを取って、ハッタリかましておかないと、格好がつかないんだろうなー。


修論を1月まるまる使って書いて、先日提出した。書いてる途中はもちろん個人プレーなので、他のことはあまり出来ていないけど、音楽を聴く時間だけはむしろ増えた。コロコロ移り気に色んなの聴こうと思えるエナジーもなんだか妙にあった。そんな今月のメインは圧倒的に旧譜です。やんわりとしたキーワードはVan Dyke Parks、ニコ・ミューリー、USインディー(ゼロ年代ブルックリン)、チェンバーポップ。

卒業旅行。友達数人の日程の都合でNY→北海道に縮小。国外はタイだけに落ち着きそうだ。タイのポップミュージック事情はどうなんでしょうね。まだ特に調べようとしてないあたり特別興味があるわけではないんだろうなと自分で思っている。なんせ(?)予定通りの日程でNYに行っていたら、Son Luxが観れていたかもしれないのだ!!しかもJames Blake、Deerhunterと並ぶ中の取捨選択をして。


アルバム

Julian Lynch「Rat's Spit」

James Blake「Assume Form」

Julia Kent「Temporal」

Deerhunter「Why Hasn't Everything Already Disappeared ?」

Sharon Van Etten「Remind Me Tomorrow」 

新譜はそんなに聴いていない中で、Real EstateのリードギタリストJulian Lynchの新作が圧倒的だ。分かりやすく、その他大勢とは一線を画すサウンドプロダクション。ローからハイまでの音場がめちゃめちゃに広くて、その中を丁寧に磨き抜かれた各パートが数ミリの狂いなく緻密に配されているようだ。一方でその作りこまれ具合に息が詰まるかといったらそんなことはなくて、丁寧なコーラスワークが効いているフォークソングを基調にしたソングライティングは素朴ですらあるし、時折顔を出すトライバルなパーカスの響きは軽快だし、2曲目「Meridian」の終始鳴っているベースミュージックを想起させる強烈なローは大胆でクール。ニューエイジフォークと称されていることが多いがさもありなんといったところ。完璧なバランス。間違いなく年間ベスト級。

Julian Lynchと同じ発売週は確かに注目リリースが固まっていた。ただ、みんな揃いもそろって同じの聴きだすこと(しかも複数枚)ないんじゃないの!?それもいいけど、ちょっとつまんないよねーっていうのは実際思っていて、そんな気持ちを持っていた人が結構いたからこそ、ただJulian Lynch聴いた感想ツイートしたら100以上いいね来たんだと思っている。

ゴタゴタ言っててもこの週リリースのものではJames Blake、Deerhunter、Sharon Van Ettenあたりは普通に好きです。James Blakeは個人的な聴きどころとして、1曲目「Assume For」のピアノループとしつこくないメロディーラインの美しさ、10曲経た上で鳴らされる「Don't Miss It」の重量感といったところを挙げたい。Moses Sumneyはもうちょい目立って欲しかったな。Deerhunter、Sharon Van Ettenはあまり聴き込めていません。あとはAntony & The JohnsonsのチェリストJulia Kentのソロアルバムとか。先行配信されていた「Imbalance」はエレクトロニクスの効いた最高ポストクラシカル。今年はこういう方面もっと聴いていきたいなー。


Billie Eilish「WHEN I WAS OLDER -Music Inspired By The Film ROMA-」

Lana Del Rey「hope is a dangerous thing for a woman like me to have - but i have it」

Vampire Weekend 「Harmony Hall」「2021」

早くこの後のメイン「旧譜」を見てほしいので、ここはこんないい曲がありましたというだけにしておきたい。特にBillie Eilishの映画「ROMA」からのインスパイアを大々的に表明した新曲は素晴らしくて、めちゃめちゃ聴いた。


旧譜 

まずは新譜で名前が出てきたJulia Kent繋がりでAntony & The Johnsonsから話を始めてみよう。ANOHNI名義のソロ共々、最近特に彼の歌がどうしようもないほど沁みる。「The Crying Light」は全てが完璧な人生有数の名盤(spotifyにないのはなぜ??)。そんな彼をオーケストラアレンジで支えたのが、ご存知Nico Muhlyだ。

そんなNico Muhlyとのコラボレション歴もあるRufus Wainwrightは今回初めて聴いた歌がガッと前に出てくるオーケストラルポップ。そんな彼、Antony & The Johnsonsの上記リンクのアルバム「I AM A Bird Now」にもボーカルで参加している!!ここら辺のゼロ年代の細かいクレジット的な部分は、何も分かってなかったので、そういうの調べてて面白かった!!というのがまず主題の1つ。そしてRufus Wainwrightをフックアップしたような側面を持つ人物として、今回の最重要人物Van Dyke Parksが登場するのです。

Nico Muhly、Van Dyke Parks両者が登場したからにはまずこの人を挙げておきたい。Joanna Newsomという名前だ。上記2ndアルバム「Ys」はVan Dyke Parksによる、4th「Divers」はNico Muhlyによるオーケストラアレンジ。2ndはしかも録音がスティーブ・アルビニ、ミックスがジム・オルークというマジでよく分からないけど、圧倒される布陣。大作チックになる2nd以降より、絶妙なポップネスが気持ちいい1stが好きです。そんな彼女の音楽を称す時に多用されるのは「フリーフォーク」というワード。

フリーフォークといえばAnimal Collective、そして彼らといえば、ゼロ年代のブルックリンインディーシーンを代表するバンド、で間違いないですよね??この一月はここら辺のUSインディー熱がとても高まっていた時期で、これら以外にもよく聴いた。それはツイッターで10年前とか何聴いてた?みたいに話してる人がいたり、Deerhunterの新譜が好評だったり、Panda Bearの新作のドロップが近づいてきて楽しみだったり、あとなんか感覚的に、やっぱりここら辺今一度聴き返して面白いぞというのや、僕なんか後追いで表面軽く撫でただけなのでしっかり浸み込ませておきたいなというのとか。「デイヴ(Dirty Projectors)やジャステイン・バーノンやPanda Bearだったり、10年前より今の方が儲かってるというか働いているというかだよねー」みたいな超絶ざっくりとそういうこと言ってる人もいて確かになー、確実に今のポップミュージック支えている音楽家たちだなーと改めて思ったりもした。Animal Collectiveとか全部カバーできているわけでは全くないので、聴きこむの超楽しいなーという状況の途中、今も。最後に、Grizzly Bear「Veckatimest」のオーケストラアレンジはNico Muhlyであるという話をして、無理やり軌道修正。

Nico Muhlyと言えば、僕の敬愛する音楽家Sufjan Stevens、ブライス・デスナー(The National)と組んだこの壮大な作品「Planetarium」はもちろん忘れてはならないだろう。Sufjan Stevensがここで出てきたところで、彼がボーカルで参加しているClare & The Reasonsに展開していきたい。甘いけどボトムがしっかりしているチェンバーフォークは今の若手女性SSWモノに目がない人もドンピシャだと思うけどなー。こういう音楽は時代とともに埋もれていきやすいとこはありますよね。そんな彼女たちの上記ファーストアルバムにはVan Dyke Parksが参加!!ということでまたもやVan Dyke Parksに戻ってくるのです。ところでSufjan Stevensがそもそもカントリー、フォーク、オーケストラル・ポップまで取り入れ、古典から現代までのアメリカ音楽を消化したその作風がVan Dyke Parksと比較されたりしますからね(と最近どっかで読んだ話を自分の見解のように書いてみている)。

ということでやっと本命、Van Dyke Parks御代自体の話をします。と言いたいところなんですが、実はそこまで細部を語るほど聴きこめていないのだ!!肝心なところなのに!!それなりに聴いた感じ1967年の「Song Cysle」はこの時代たまにある、ずば抜けたクオリティーお化けアルバムだなといったところか。The Beatlesの諸作やBeach Boys「Pet Sounds」やThe Millennium「Begin」なんかね。そういえば、この人の一番有名なワークはBeach Boys「Smile」かもしれないのだった。1983年「Jump!」はちょっとやり過ぎ感もあるくらいの可愛いオーケストラルポップアルバム。逆に聴きこめば面白くなっていきそうだ。

前述のとおりVan Dyke Parks自体は聴きこめていないのだけど、重要なのは実はそこではないと考える。僕が今回これを書きたかったのは、自分の最もコアな部分の源流の音楽家の一人をようやく発見できたというところにある。つまりVan Dyke Parksの存在を知り、その影響と50余年の緩やかな繋がりを、歴史を断片だけでも把握したことに価値がある。自分のコアとはなんであるか。僕はここまで自分の好きな音楽ジャンル、系統(コア)を簡潔に言い表す言葉が見つからずにいたのだけど、今は限りなく完璧な回答がある。「ちょっとエクスペリメンタルなチェンバーポップ・フォーク」です。これで僕の好みの半分くらいは近くは説明できてしまうかもしれない。書き出すと単純なワードだけど、何か形にできずにいたことを認識したそのきっかけであり、源流がVan Dyke Parksというアーティストなのだ。

「ちょっとエクスペリメンタルなチェンバーポップ・フォーク」って探すのにちょっと苦労するタイプの音楽だ。これに属すると僕が思う音楽は、例えばシューゲイザーやネオソウルとかなんでもいいんだけど、そういうところと比べて、タグ付けが曖昧で色んなジャンルやラベルの狭間にいて、見つかりにくい仕組みになっていることがあまりに多くないだろうか?だからこそ面白いし、これ!といったものにヒットした時の喜びは格別なのです。それをサポートする太い一本の幹がVan Dyke Parks。

ということで今回「こんなとこにいたのか!」と見つけたのがこのあたり。ポール・サイモンの「Graceland」はこの1ヶ月実は一番聞いた作品かもしれない。丁寧なオーケストレーション、コーラス、軽快で時にトライバルなビートアレンジ、直球のグッドメロディーと僕の理想のポップソングの型の1つと言っても過言ではないほど、全てが好みだ。サイモン&ガーファンクルの~みたいな情報から、あんまり自分事じゃないように感じてたんだけど、このクオリティー、ポップネスの隙間から垣間見える実験精神にはびっくりした。小沢健二「僕らが旅に出る理由」の元ネタとして超有名な「You Can Call Me Al」の次の曲「Under African Skies」が一番好きな曲です。完璧。そのコーラスワークに、思わずDirty Projectorsを思い浮かべてしまう。ホントはアンドリュー・バードは「Thrills」というアルバムの方が聴いたんだけどspotifyにない。Antony & The Johnsonsも一部なくてJoanna Newsomもまるまるなくてというようなことあるから、Appleとどちらかに絞れないんですよねー(逆もまたしかり)。そんなアンドリュー・バード「Thrills」はとてもファニーでちょっとエクスペリメンタルで、最高です。なかなかフォルダリングしづらいところにいますよね、彼も。

去年リリース作で今年に入ってグングン来ているのは、Sons of Kemetと優河。どちらも今去年の年間ベスト作ったら入りそうだ。Sons of Kemetは完全に今年入ってから聴きました。「UKジャズ」と「ワールド」っていう表層的なところだけ見ても、自分の去年のリストに入らないわけないやつ。優河は出たときも数回聴いていたんだけど、あれは幻だったのかと思うほど、これをスルーした自分の節穴ぶりが信じられない。最初から最後まで最高のフォークソング集。ほんのちょっとドリームポップっぽい匂いがあるのが抜群だと思う。実際この一月は再生回数で言えばこれかPaul Simonかでしたね。彼女の妹は女優の石橋静河だという情報もごく最近知ってびっくりした。あとはWilliam Ryan Fritchとかも存在はなんとなく知っていて、2年前のこれを聴いたらとてもよかったり。彼こそまさに「ちょっとエクスペリメンタルなチェンバーポップ・フォーク」ですよね。あとは去年末、年明けすぐ位はジョニ・ミッチェルを聴き返している時間も多かった。


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