2018年12月の音楽(とか)のこと

『年間ベストがあるから一番好きな月は12月だと、この際勢いで言ってしまいたい』とは私が2018年年間ベストアルバムのnoteさわりで書いた文言だが、その1文を書いて数分もしないうち、いやもはや書いている途中で「7月フジロックあるやんけ!!」と気づいてしまったので、最初はなかった「勢いで」の文言をそっと足したという経緯があります。ちょっと盛るためには勢いが大事だったのだ。

だけど12月が楽しいのだってもちろん事実だ。今年よかったものをまとめるだけで、色んな人がまとめているのを見るだけでなんでこんなに楽しいのだろう。私も今年のベストアルバム30枚について書きました。アルバムごとのコメントから全体の総括まで、現時点では、無い知恵を振り絞って自分の渾身のものが書けたと思います。これは面白いと思います。ランキングだけザっと確認したという方も、今一度下記リンクから、暇つぶしに読んでみてほしいと思います。大変失礼ながらこれを読んでいるということは十分暇なはずなので。

年間ベストのほかにもリンク先の某所で、日本語の歌詞についてサラッと書きました。CRCK/LCKS「O.K.」、小沢健二「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」、折坂悠太「揺れる」の3曲について。

去年書いたベストアルバムについてのページとかを見ると、その稚拙な文章に我ながら恥ずかしくなってしまう。今年のも来年読んだらめちゃくちゃ恥ずかしくなるくらいレベルアップする2019年になったらいいなと思います。


12/9、ROTH BART BARONのライブの前に、ツイッターで交流のあるお二人(1人とは3回目、もう1人とは初めまして)とご飯がてら長々話し込んだ。ここ2年くらいおかげさまで、割と身近で音楽について話せるような知り合いも増えてきたけど、中でもウォッチしている部分が非常に近く、色んな前提というかそういうものが共有できているうえで、かつ僕より知識があるお二方との「座談会」はとても刺激的で楽しかった。改めてありがとうございました。12月にやると年間ベストと絡めてその年の振り返り座談会みたいになってより楽しいんですよね。来年も12月にこういうのやりたいなーと思うので、どなたでもお気軽に誘ってください。もちろん12月でなくとも。


アルバム

Victory「The Broken Instrument」

Jacob Collier「Djesse (Vol. 1)」

ayU tokiO「遊撃手」

12月でもけっこう新しいもの聴いたし、いいものがあったという感覚がある。VictoryとJacob Collierは聴いて即年間ベストに入れました。Victoryは6月リリースだったけど、12月に初めて見かけて、ふと聴いてみたらとてもびっくりしました。完璧なSSWアルバムだ。そういえば聴いてないなーと思い立ってこのタイミングで買った7月リリースのayU tokiOのアルバムもとてもよかった。各パートの距離感やレイヤーの雰囲気はPeople In The Boxの「Kodomo Rengou」とも近しいところにいると思う。その上、より歌がキャッチーで管弦の録音もいい。「あひる」のメロディーラインとかツボです。ストリーミング配信されていないがゆえに、届くべきところにまだ届いていないっていうのは多分にある作品だと思います。

He Was Eaten By Owls「Inchoate with the Light Go I」

Foxwarren「Foxwarren」

崎山蒼志「いつかみた国」

この3枚はタイミング次第では年間ベストに入れたかもしれない。一部で超話題??のHe Was Eaten By Owlsは確かにとんでもない代物だった。あまりにも美しすぎる管と弦(ストリングス+アコースティックギター)。いわゆるポストクラシカル方面のものなんだけど、けっこうインディーロック文脈なんかも取り込まれていてとても聴きやすいですね。僕なんかだと蓮沼執太フィルやSufjan Stevensあたりを思い浮かべて聴いてしまうな-。あとはご存知Andy Shauf率いるバンドFoxwarrenの10年越しのファーストアルバムは全うすぎるくらい完璧だ。Andy Shaufの作る音楽って、他の凡百のフォークロックと何が決定的に違うみたいなのを今の自分の知識では上手く言えないんだけど、明らかに惹きつけられるものがあるなー。サウンドプロダクションも細かく聴くとエグいらしいですね。崎山蒼志君も12月に入ってからやっと聴いた。過去の影響源をもとにコンテンポラリーな動きと共鳴するということが高いレベルでできているんだろうなーというのを、ひしひしと感じるEPだ。ナンバーガールやらブランキーやらの話はよく出てきますが、僕もこれはそこら辺の純邦楽ロック(何をもって”純"なんだろう…?)の正統後継であり進化系なのでは、と思いながら聴いている。特に「塔と海」とか。今後ばっちり仕上げた作品を送り出してくるのがとても楽しみ。

曽我部恵一「There is no place lile Tokyo today!」

七尾旅人「Stray Dogs」

空中泥棒「Crumbling」

曽我部さんのペースが止まらない。ここまで躁状態のような出され方をすると反動があるんじゃないかと少し心配になる。今作はこの前のラップアルバムより現代的なプロダクションで好きだなー。「Popcorn Ballads」と同じ流れで聴ける感じ。というかこっちも充分ヒップホップアルバムですよね。七尾旅人は年間ベストを1枠開けて「これを入れてさあ終わり!」くらいの期待で待ってたんだけど、ちょっとどこに入れればいいか、そもそも入るのか分からなくなってしまって保留した。いや、ちょっとずつ聴きこむともちろんいいとは思うんだけど、くるりの「ソングライン」を聴いた時と全く同じ気分になってしまった。いや、いいんだけど…っていう。韓国の新鋭、公衆道徳改め空中泥棒はなんだか分かりそうで分からない状態が続いていて難儀していたんだけど、ここにきてだいぶ自分の中で輪郭がはっきりしてきたように思う。なんだか歌もしくはリズムに意識の中心を置く聴き方だと、どんどん実態が遠ざかっていってしまう気がしますね。


王舟「don't hurt pride」「Muzhhik」

全く話題になっていない王舟の新曲が素晴らしい。特に「Muzhhik」は「ディスコブラジル」や「Moebius」あたりのダンスナンバーの正統進化系と言えそうな、よりアンビエントやIDMに寄ったベッドルームエレポップで至高です。もともと王舟の歌はなんだか格別に好きなんだよなー。1stアルバム「Wang」は今でもふとした時によく聴きます。

イ・ランと柴田聡子「Run Away」

2018年最後の最後に待っていた衝撃、イ・ランと柴田聡子の共作曲が今年のベストトラック級の出来だ。メールでの交換形式で編み上げられた楽曲は、2人のラフで伸びやかかつ、主旋律、副旋律がクルクル入れ替わっていく緻密で美しきコーラスワークをこれでもかと味わうことができる。これぞ器楽的なボーカルの極みではないか。日本語と韓国語が半々くらいで歌われるリリックも最高だなー。最初の柴田さんのリリックで「4月」とあるけれど、なんだか年末的な静けさと優しさを持っているのも1発でやられてしまったポイントです。この2人だけでも十分それを彷彿とさせるけれど、例えばさらに平賀さち枝さんあたりを加えたりなんかしたら、完璧なアジア版boygenius (Julien Baker、Phoebe Bridgers、Lucy Dacus) の出来上がりではないか。という妄想をしてみたりするのも実に楽しいですね。


ライブ

12/1 cero @恵比寿LIQUIDROOM

12/9 ROTH BART BARON @渋谷WWW

年間ベスト1位と3位のワンマンという完璧なライブ納め。ceroはアルバムツアーでもない、リキッドルーム規模の単発ワンマンという一番惹かれる形のワンマンに相応しい期待通りのライブだった。1st、2ndアルバムから今の編成で個人的にやって欲しいランキング1位の「outdoors」は思ってた通り角銅さんのパーカッション大活躍だったし、本編ラスト「FALLIN'」→アンコール「Poly Life Multi Life」→「わたしのすがた」という嘘みたいな流れに完全にやられたセットリスト (「小旅行」を待ってWアンコールしていたのは僕だけじゃないはずだ)と、曲間の繋ぎ(特に「夜去」→「outdoors」→「遡行」)が完璧だった。

そしてROTH BART BARON。あんまり細かい感想を書けそうにないけど、Moses Sumneyに続く今年ベストライブではないだろうか。えげつない音が出ていた。このツイートが全てかなーという気が我ながらしています。

3曲目、大きいビートと小っちゃいビートが混在する「Innocence」から、大きいビートだけ残るように繋がれた「電気の花嫁 (Demian)」からは完全に気分は苗場のグリーンステージであった。割と新参なので数曲知らないのあって、後でセットリストを確認してみたら事前にちょっと聞いた話通り「そこからやるか??」というようなけっこうオールタイムを意識したセットリストもよかったなー。前述の「電気の花嫁 (Demian)」のように華やかな前作「ATOM」の曲の使いどころもなんとも絶妙だったし、2曲目でいきなり「Skiffle Song」が来ていたのですね。ラストのアンプラグド「アルミニウム」なんて、あんなの分かってても完全にやられてしまう最終兵器まで持っててずるいバンドだなーと思います。


その他雑記

Netflixでアルフォンソ・キュアロン「ROMA / ローマ」を観た。その映像と音響の途方もない作りこまれ具合に自宅の視聴環境の貧弱さを実感してしまう。モノクロで、いやだからこそあんなに豊かな光が描けるのだなー。最終盤、海の波はオープニングの床掃除で作り出される波に循環していくようだし、玄関につっかかってしまう車とか細部が好きだなー。割と序盤ですが、このショットとか素晴らしい。



今年も残すところあと3,40時間ほどとなった。こうやって年末までネタが尽きずにいろいろ楽しめるのも、それを書いて残しておこうと思うのも本当に皆さんのおかげです。ありがとうございました。という感謝の挨拶で今年の毎月の「音楽(とか)のこと」締めたいと思います。来年も引き続きよろしくお願いいたします、よいお年を。

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ひいもと

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