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食べる理由、食べる場所

食べ物にかけるお金をできるだけケチらないようにしている。しかも、必ず気に入った店で外食する。

というのも、食事には、お腹を満たしたり栄養を補給したりする以外にとても意味を感じていて(求めていて)、それがうまく言葉にならなかったのだけど、ようやく答えが見えてきたので走り書きしておく。その前に

気に入った店とはなんぞや。

個人的に気に入っているのは「カルチャーを持っている」、「ご飯が美味しい」店な傾向がある。もっといい言葉があるかもしれないけど。後者については次項で説明するとして、前者は食を通して何かメッセージを伝えようとしている店のこと。

例えば近所の松陰神社前でいうとPre's de Shoin(プレドショウイン)である。リヨンとサッカーが好きな鉢巻頭の店主・大杉さんのビストロ。リヨンに行ったことはないが、現地の街の大衆酒場ってこんなんだと思う。そんでもって店内はサッカーに関するものが随所に散りばめられていて、っていうか大杉さんがスパイク履いてるときもある(最近はテレビが導入されてワールドカップ観戦も始まった)。そんな感じでバシバシと自分の好きなカルチャーを押し付けてくる。これが気持ちいい。別にカルチャーがすでに定義されているものでなくてもいい。「信念」と言ってもいいんだけど、そこまで堅苦しいものじゃなく、“自分が好きなものを自分なりに解釈して自分の手で伝えたい”という気持ちが伝わってくる。これを味わうのが好きなんです。

で、食事の役割について。

「考えるため」の食事

まず1つ目の役割は、「考えるため」。

そのためには美味しいものが必要である。美味しいものを食べると、何かアイデアを閃いたときと同じような感覚になる。ピン!って。テンションが上がるから似てるのかも。五感がフル回転を始める。あるいは食事からコミュニケーションが生まれていく。

何かを思い出すことも多い。途中まで考えて放置していた考えごとが突如リロードされて、バラバラに散らばっていた思考の断片がみるみるとデフラグされていく。

ゆえにランチミーティングは大いに有意義なんだけど、飯が不味い(=つまらない)とテンションが下がるわ五感を使わないわでスイッチが入らない。ゆえに不味い店を指定してくる人のことは信用しない。逆に美味い店を知っている人には全幅の信頼を置く。

最近は、夜に一人で考えごとをしたいときに三茶のnicolas(ニコラ)へ行く。24:00までの営業で、ご飯もデザートもとびきり美味しい。目にも。飲みたければワインもある。何より曽根さんご夫婦の作り出す空気が好きだ。店内全体を使った展示やイベントも積極的に行なっていて、それが刺激になることもある。このあいだは周年イベントとして、ニコラのレシピを山フーズがアレンジして、それをニコラが作るということがあった。素材だけに頼らないエッセンスの入れ方がアートだな、といつも思う大好きな店だ。

「呼吸するため」の食事

もう一つは「呼吸するため」。

疲労が溜まってくると美味しいものが分からなくなる。特に味覚と嗅覚が鈍ってくる。そういうときって大体、身体がガチガチになって息が詰まっているのだ。

だから、深く長い呼吸をキープするためには美味しい料理を食べる。逆に味と香りを楽しむような丁寧な呼吸できていれば、疲労を溜めない身体でいられるというわけ。これは私がレッスンを受けている「アレキサンダーテクニーク」の考えにも基づいている。レッスンでは、胸ではなく腹やつま先まで降りるような呼吸をすることで本来の身体の使い方を学び、今ある自分のパフォーマンスを最大限に引き出す練習をしている。テクニークによると呼吸と姿勢は深く関係しているので、正しい呼吸と姿勢が身につけば、身体を動かすことでもデスクワークでも高いパフォーマンスが発揮できるとのこと。まだかじっている程度だけどすでに効果覿面。

そんなわけもあり、カレーやスパイスがハマったのだと思う。最近では月イチのレッスン後には必ずダバ☆クニタチに寄って帰る。インドやカレーに対する尊敬が詰まったカレーは香りも味わいも豊かでとても美味しい。食べて呼吸を整えた後は、図々しくもノートを引っ張り出して考えごともさせてもらう。そして、ここもカルチャーを持っている店。前に、BGMでインディアン音楽に混じってくるりか細野晴臣か忘れちゃったけど……日本の音楽もうまく混ざっていて感動したのを覚えている。内装も含め、日本にあるインドの食堂みたいなスタンスのバランスが素晴らしいと何度来ても心が躍る。

というわけで今後も食べる理由と場所にはこだわっていく所存。他にも書ききれないほど好きな店がたくさんあるので折に触れて紹介していけたらと思います。

本を買って、いろんな方に貸出もできればと思っています。