turai

編集者/ライター。映像も撮ります。

過去との再会

昔の恋人から連絡が届いた。「今日飲まない?」なんて軽い言葉で。LINEの履歴が2年ぶりのメッセージであることを示していた。僕は終電に乗り込んだ。胸が踊っていた。

終電が終わったあとの駅で彼女と2年ぶりに再会する。彼女は酔っていて陽気な様子だった。2年ぶりに会う彼女は長い髪をばっさりと切っていたけど、ほとんど変わっていないように思えた。

久しぶりに会った者同士で話すことと言ったらたいていが昔話だ

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ある永遠の瞬間

ある幸福な瞬間、永遠の瞬間がもう一度、自分の前に現れるとしたら。そんなことを考えるときがある。

それは例えば、心から愛した人と過ごしたひととき。雪の降る銀座の街をふたりで歩いた夜。前日の夜に注文したピザの残りを、レンジで温めて分け合って食べた休日の朝。春のうららかな陽光の中、コーヒー片手に散歩をしたなんの予定もない平日の午後。

もし彼女がもう一度、僕の前に現れたとしても、きっとあの瞬間は戻って

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「まとも」という呪縛

30年間ずっと「まとも」であろうとしてきた。だが、僕は「まとも」であることが人よりも下手だと気づいた。このことがわかるまで、30年がかかった。僕はずっと「まとも」という呪縛に囚われてきた。

呪縛の始まりは、いつだったのだろうと考えると幼年期に辿り着く。スパルタ式の保育園に通っていたときのことだ。その保育園では、先生がカードを掲げ、その正解を瞬時に答えるというフラッシュカード式の言葉のトレーニング

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春に憂鬱

毎年、春になると、叶えられなかった理想の数々が、急に思い出したかのように現れる。東京に来て、もう12年が経つ。12年前に思い描いていた理想は、どこに行ったのか?

早稲田松竹で映画を観て駅へ向かっていると、高田馬場のロータリー前が騒がしい。新歓コンパの待ち合わせだろう。キラキラと目を輝かせる新入生らしき学生たち。酔いつぶれて道端で寝ている者もいる。誰もが高揚していた。

仕事の出先の帰り、市ヶ谷の

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7年前に好きだったあの子からの手紙

引っ越しのための片付けをしていると、7年前の手紙が出てきた。差出人は当時好きだったあの子。7年前の夏、僕は恋をしていた。あの頃の僕は進路に悩むどこにでもいる高校生で、彼女は別の高校に通う中学の頃の同級生だった。

まさか7年後、再び将来に悩むことになろうだなんて、あの頃には思いもしなかった。僕は新卒で入った会社を辞めたばかりだった。文書を書く仕事がしたくて、小さな広告制作会社にコピーライターとして

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