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ミドリムシの力で人と地球を健康にする永田暁彦さん(前編)

健康食品などですっかり有名になったミドリムシですが実はバスや飛行機まで動かすパワーを持っているって知っていましたか?人と地球を健康にしたいというユーグレナの永田さんの熱い思いをたっぷり伺います。


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ミドリムシで世界を救う

ミイナ:Dooo堀口ミイナです。早速本日のゲストをご紹介します。株式会社ユーグレナ副社長でリアルテックファンド代表の永田暁彦(ながた あきひこ)さんです。よろしくお願いします。

永田:よろしくお願いします。

ミイナ:早速なんですが、自己紹介をお願いします。

永田:株式会社ユーグレナとリアルテックファンド、これを経営しています。永田と言います。ユーグレナっていう会社はご存じの方としてはミドリムシをやってる会社なんですけれども、元々科学者がミドリムシをたくさん作って世界を救おうとしてスタートした、東京大学から生まれたベンチャーです。

永田:このベンチャー、今では東証一部の会社になったんですけども、それをやってきたなかで、いろんな研究者やいろんな科学者がもっとお金や人やものがあれば世界を救えるのにという考えをたくさんもっていてそれを解決するためにつくったのがリアルテックファンドになります。これは今まで自分たちが科学者として経営をしてきた経験とか、それを伝えながらお金を投資することで、地球とそして人類がもっともっと健康や幸せになる、そういうテクノロジーを育成していくというファンドをやっています。

ミイナ:ユーグレナってやっぱり最初ちょっとミドリムシの変わった会社だなって。今は相当浸透してると思うんですけど。どんなきっかけで出会われて入ったんですか?

永田:元々は投資ファンドにいてですね。自分が一番最初に関わった投資先なんですよね。ミドリムシっていう微生物を研究してる人たちなんですよね。残念ながら、名前がミドリムシってだけなんですよね。例えばヤクルトっていう会社は、乳酸菌っていうちっちゃな菌を扱っていて、これは別にみんな変だと思ってないじゃないですか。ミドリムシっていう名前じゃなくて違う名前だったらみんなもっともっといいねって言ってたかもしれないんだけれども、ミドリムシって名前のせいで本質的価値じゃなくて違う風に捉われてしまってたんですよね。

ミイナ:なんかちょっと虫だと思っちゃう。

永田:そうそうそう。虫じゃないんです。

ミイナ:虫じゃないです。

ここでおさらい!最近よく聞くようになった「ミドリムシ」ですが「虫」ではありません。体長わずか0.05ミリという微生物でわかめやコンブと同じ「藻(も)」の仲間。植物と動物の両方の性質を持つ不思議な生物です。


永田:そういう本当は素晴らしいことをやってるのに実体的価値とは違う評価をされてる人を見たときに僕はこれを支援したいって思ったのが元々の投資ファンドをやめた時からの思いですね。

大学を卒業後、投資ファンドに就職した永田さん。入社2年目に投資先だったユーグレナの社外取締役に就任し2010年には事業戦略の取締役として、ユーグレナに完全移籍しました。

ミイナ:今は副社長ということで・・・

永田:今は研究もマーケティングも戦略もファイナンスもとにかく全部を自分一人が干渉してるという状況ですね。

ミイナ:どうですか、可能性感じますか。

永田:可能性感じます。今の可能性っていうのは自分にもそして会社にも可能性を感じることで、人って自分のスペシャリティというか、得意領域って定めたがるっていうところがあると思うんですけど。正しいことや正しいアクションをし続けてるとあれもこれもっていう風にどんどん領域が広がってきて、自分自身が可能性が広がってきたっていうことで今全部やるっていう風になってますし、その結果として会社が前に進むっていう力がより強まったという風に感じているのでベンチャーも若い経営者もどっちもその可能性を持って進んでるっていうのが面白いとこかなと思っています。

バイオジェット燃料の開発

ミイナ:食品が身近ではあるんですけど、実はバイオジェット燃料っていうそういうエネルギーの方もされてるんですよね。

永田:そうです。僕たちは「人と地球を健康にする」っていうことを理念に掲げていて、人は栄養で健康にする、そして地球はCO2排出量を減らすバイオ燃料で健康にするということを目指しています。

バイオジェット燃料とは微細藻類(びさいそうるい)や木くずなどのバイオマス原料から製造する燃料のことで航空分野のCO2排出量削減の切り札とされています。トウモロコシやサトウキビで作られるバイオ燃料は食料と競合することが問題となっていましたが、ユーグレナはミドリムシから燃料を作ることでその問題を克服できるのではと注目されています。


60億あったら何に使う?

永田:今年は60億円以上使ってバイオジェット燃料の工場をもう完成させたんですけど、普通に考えて60億持ってないですよね。あーでも持ってるかもしれないな。

永田:あったらいいですよね。でも60億持ってた時に何に使うかってすごく試されるとこだと思うんですけど、学生でスタートしたベンチャーが10数年経って60億円の投資ができるようになるって結構すごいことじゃないですか。もともと、そのバイオジェット燃料の世界を作りたいっていう夢があったんですよね。だけどどれだけ夢を語ってもいろんな人がお金を出してくれる訳ではないので、その中で平行して1個1個ミドリムシの食品を作って売っていくっていう実績を作って、経営としての信頼感とか、その将来性ってのを買ってもらってお金を集めて今回投資ができるっていうことになってるので、すべては、最終的にはこのようなバイオジェット燃料で世界を変えるってことを最初から目指したんだけども、食品で一生懸命売りながら研究費を貯めてきたということがあります。

ミイナ:じゃあもうこの60億はこつこつと信頼を得てお金を勝ち取ってきて、それが投入されてるってことなんですね。

夢+実績で得られるもの

永田:その会社って面白いのは今ある姿だけじゃなくて未来の姿を想像して、じゃあお金を出そうっていう人たちがいてくれる。それはすべて夢だけではなくてやってきた実績も問われるところなので、それを10年間やってきて「こいつらなら60億円渡してもやりきるかもしれない」って思ってくれたからお金が集められたっていう風に思いますね。


日本は環境先進国か

ミイナ:ちょっと海外に行ったときがあるんですけど、石油燃料だけじゃなくて例えばこのトウモロコシを燃料にしたりとか、そういうやっぱりバイオ燃料ってもうちょっと身近だったんですけど、なんで日本ではこんなにぶっ飛んだ話みたいになっちゃうんですかね。

永田:すべての国が地球温暖化対策でCO2減らそうとしてるんですけど、日本は一滴もまだ入ったことないんですよね。

ミイナ:やっぱり日本だとね、使われてないですよね。

永田:でも、日本って環境先進国ってイメージあるじゃないですか。

ミイナ:あります。はずです。

永田:はずなんですよね。これが実現できてないんですね。何故かというと・・・これ一番まあやっぱ大人の話が多いですね。なので、エネルギーっていうのはある意味寡占産業なので寡占してる人たちが変えようと思わない限りお客さんが何を言ったって変わらないっていうのはあると思います。例えばソフトバンクという会社が今携帯電話、いろいろなサービス提供してますけど孫さんがその携帯業界に参入しなかったらもしかしたら携帯代って未だに5倍の値段かもしれないんですよね。そのように交通とか通信とかエネルギーっていうのは既にある既得を持った人たちがすごく強い業界なので、それを変えてくためにものすごいパワーがいるなってのは常に思っています。

ミイナ:この鶴見の施設で生産されるバイオジェット燃料っていうのは今後日本でも使われるようになるんですか?

永田:使われます。まず今年からバイオディーゼル燃料でてきます。そして来年からバイオジェット燃料が出てくるので日本のそれこそオリンピックの時にはなるべくエコなエネルギーで海外のお客様を案内したり、選手の方が選手村に移動するときに使えないかっていうことを今まさに話しています。


エネルギー問題解決後のビジョン

ミイナ:こういうエネルギーとか食料の問題が解決されていったら、人類はどうなっていくみたいなビジョンは会社としてあるんですか?あるいは永田さんとして。

永田:日本人ってすごく礼儀正しくて、礼節のある日本人だって言われるんですけども、歴史上振り返ると結構残酷なことたくさんやってる歴史があって。室町時代の戦場の戦士たちがどういうことをやってたとか、学ぶと面白いなと思っているのは、結局今の僕たちっていうのは、安定した生活と・・・言葉に「衣食住足りて礼節を知る」という言葉がありますけど、そのようになっていくと人間っていうのは自分たちが思ってるより自分たちらしい人間に発展していくんだなって思ってるんですよね。

永田:だから世界中の中で今でも戦争やいろんなことが起こってますけど、エネルギーや食っていう物が満たされると、もっともっと何か、隣の人に対する愛情や優しさとか新しい物を知りたいっていう好奇心とか、芸術やサイエンス、そういう物に力や興味が向いていくんじゃないなかという風に思っています。

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ベンチャー企業のメンター的役割

ミイナ:ユーグレナ社の副社長とリアルテックファンドの代表という二つのお顔をお持ちだと思うんですけど、具体的なお仕事の内容は何かどういう感じでされてるんですか?

永田:まず、主軸はユーグレナの副社長です。毎日どうやってバイオ燃料を作っていくのかとか、この栄養たっぷりの食品をどうやって売っていくのかとか。当然働いてる人が働きやすくするためにはみたいな、経営者としての仕事を毎日しています。でその上でリアルテックファンドというファンドにおいては、こんなに新しい面白くて世界を変えるかもしれないって技術がもう毎日くるんですね。「助けて下さい」「お金出して下さい」と。でそれに対してまあ毎月何社か出資を決めるんですね。この研究所に一億円渡したらこんな世界になるかもしれないっていうことを決めますと。そこに加えて僕がやってる仕事っていうのが、今、日本で研究とか科学を中心に成功した会社って結構少ないんですよ。日本には。遙か昔、遙か昔は言い過ぎですね。数十年前はたくさん生まれたんですよね。だってトヨタもソニーもパナソニックもみんな技術からスタートした会社ですけど、今ってどちらかって言うとITとかWebの世界が多くて。なので教えてもらえる人がいないんですよね。科学を中心として、会社を作った人が参考にする会社っていうのはすごく少ない。

ミイナ:あー、なんかちょっとメンター的に、参考にできる会社が現状少ないということなんですね。

永田:そうなんですよ。なので、そこの役割をすごくやっています。「いや、よく分かるよ」と研究をしていて大きな会社と例えば特許とか知財で戦う時ってこういうことが問題になるよねとか。正直やっぱり科学者の人って普通の人と違う働き方をしたりするので、そういう会社ってこういう組織にするとよりよくなるよとか、まあそういうことを伝えてあげるってことも大きな仕事としてあります。

ミイナ:じゃあそのファンドとして単にお金の融資だけではなくって、相談に乗ってあげるっていうことなんですね。

永田:僕たちはファンドだって思ってないんですよね。一緒に世界を変えるために自分たちはお金と知恵を、彼らは技術と時間を使って一緒にやってこうっていうのが大きな観点かなと思っています。


テック企業の見極め方

ミイナ:なるほど。選定の時って元々その理系のバックグラウンドだったんでしょうか。

永田:僕は違います。

ミイナ:そのテック企業の見極めってどういう風にされてるんですか?

永田:あの、技術を評価するとか、どの技術に投資するかっていうことを考える時にみんなすごく難しく考えすぎてるなと思うんですね。で、例えばそうですね、メルカリってあるじゃないですか。メルカリって便利だなってみんな思うのでじゃあ投資しようってわかりやすいんですけど、メルカリの裏側、サーバーで何が起こってるとかってみんな知らないじゃないですか。でも、そこって技術の話なんですよね。なので、みんな技術の投資の話になると技術をみるってことになるんですけど、大切なのはその技術を通じて何が
生まれるかって考えるのが一番大切
だと思うんですよね。なので、ある学者さんが「私はね、超ひも理論(超弦理論)を研究しています」と「これに投資してください」って言われるとみんな「ああもう、あの分からないんで大丈夫です」ってなるんですけど、「私がやってる研究を5年間続けるとどこでもドアができるかもしれません」って言ったらやってみようって思うかもしれないじゃないですか。そういう、今ある物見えてる物を変換して将来どうなるかってことを理解できれば判断したり投資したりすることができるかなという風に思っています。

ミイナ:なるほど。じゃあやっぱり技術それ自体というよりもそれで可能になるサービスだったり、世の中がこういう風に変わるっていうそこの可能性を見ていくという。

永田:まあそれとやってる人ですね。

ミイナ:あ、人も重要ですね。

永田:人がめちゃくちゃ重要です。日本は技術が溢れているので、技術以上に誰がどれだけできるかのほうが大切だったりしますね。

“リアルテック”って何?

ミイナ:リアルテックってどういう意味なんですか?

永田:世の中色々テクノロジーはあるんですけど、やっぱり技術は常に人類の進化のために使われるべきだと思っていて人の生活や地球環境が良くなるそういうことに使われる技術、これを僕たちはリアルテックと呼んでいます。こういう物ってすごくお金や時間がかかるのであんまり応援されてこなかったんですよね。だけど、こういう所にお金が集まると病気が治りやすいとか頑張らなくてもキチンと食べ物が食べられるとかそういう世界がやってくる、まあそのために研究をしようって人たちを応援するそれがリアルテックとリアルテックファンドというものですね。


なくなることが目標

ミイナ:日本にこういうファンド他にあるんですか?

永田:最近出てきました。

ミイナ:ああ、そうなんですね。

永田:最近増えてきました。それは素晴らしいことだと思っていて、僕はどこまで行ってもユーグレナの経営者だと思ってるので、自分が一番最初にそういう機能というか組織を作ったことでいろんな人が真似をしてくれれば究極的にはリアルテックファンドがなくなるのが僕の目標ですね。

永田:当たり前に助ける人が増えてるというか。そういう社会に変わってくと、僕たちみたいな存在がなくなる。当たり前になるって言うことが、いろんなことの目標ですね。

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考え方の形成に影響したもの

ミイナ:社会課題の解決だったり、そういう人類全体の幸福度とかの改善をすごく気にされてるような気がするんですけど、そういう風に思うようになったのは何かきっかけがあるんですか。それとも子供のころからそういう方だったんですか?

永田:いや、僕は子どもの頃からそうだったかって言うとそうではないですね。両親は社会福祉を二人ともずっとやっていて、社会のためにって働いてる人たちだったなと思ってますけど、僕自身はその姿を見ながらも結局あまり裕福じゃない両親を見ていて社会に対する貢献度とその努力と報われ方のギャップっていうのは目の前でやっぱり見てきたっていうのがあるかなと思っています。僕はそういう意味では昔から社会に対する貢献度がその人たちの幸せだったり、努力が報われる社会になってほしいなっていう根底はあったかなと思っています。その中で、社会人で働きはじめて一つ気付いたことが、結構多くの人がですね、何のために仕事してるかっていうと、やっぱり生きるために仕事をしてるって人がすごく多くて。そのためにだったら、もしかしたら本当はその健康に良くないものでも人に売ってお金を稼ぐってことをやる選択をする人もいるんだなっていう風に思ったんですよね。僕が目指してる仕事とか世界っていうのは、働けば働くほど、会社が大きくなればなるほど、売り上げが上がれば上がるほど世の中が良くなるって確信的に思える仕事で溢れるともっと人類って幸せになるんじゃないかなと思っていて、そういう努力がきちんと報われる社会、みんながやってる方向が社会に還元される社会に向いてほしいって働き始めて改めて思ったっていうのは大きいと思いますね。

永田:それに一生懸命な人たちに出会ったっていうのは大きいかもしれないですね。それは研究者たちだったり、まあユーグレナっていう会社であれば社長の出雲(出雲 充 代表取締役社長)っていう、そのバングラデシュの貧困問題を解決したいってとにかく思ってる人。そういう人たちをどうにかしたいと思ってるうちに自分もそんな感じになってきたっていうのは強いかもしれないですね。

ミイナ:やっぱり周りからの影響っていうのは受けますよね。誰しも。

永田:受けるのでありたい自分があるのであれば、すでにそうなってる人の近くに自分の身を置くってすごい大切なことだなと思ってますね。


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苦しいと思わないことが強み

ミイナ:これまで、こうこんな苦労があったよとか、こんな風に壁を乗り越えたよっていうエピソードってなんかありますか?

永田:結構ないんですよね。例えば会社で言うと、ものすごいお金がない時代があって、みんなで給料3割カット全員でして、ああ本当に貧しいみたいな時代もあって多分全員が苦労したっていうことだと思うんですけど。僕はまず根底としてみんな苦労してるし、みんな苦しい思いって常に生活してればあると思ってるので、目の前にあるものを自分が特別に苦しいっていう風に思わないように、あんまり思わないっていう所が強いかもしれないですね。これは社会には色んな人がいるとか、それに出会ってきたっていうことも多いと思うんですけど、今他よりも苦しいって思えば思うほどどんどん苦しくなってくのでまあそれを何というか、それが起こることが当たり前という風な思考をしようって結構心掛けてるっていうのは結構大きいかもしれないですね。

ミイナ:苦しいを苦しいと思わない。

永田:だからユーグレナには一つみんなの共通言語で「あたま」って言葉があるんですよ。

ミイナ:はい、あたま。

永田:あたま。あたまは「明るく」「楽しく」「前向きに」なんですよね。


永田:悲しんでも明るくしてても物事って変わらないんだけど、明るく楽しく前向きにっていうことを何かもう自分で何回もリフレインしてるとやっぱりそういう風になってくというか。そういうことを大切にします。だから起こってる事実よりも感じ方を変えていくというか。そうして乗り越えてきたかなと思いますね。

ミイナ:いや、強いですね。

永田:いや、弱いからよけてるかなって思ってます。何か真正面から受け止めるよりは、横に流してしまおうって思ってるのかもしれないですね。つらいって思い自体をですね。

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