見出し画像

「ひとり親家庭で生まれ 今はひとり親家庭を支援」NPO法人『あっとすくーる』理事長 渡剛さん(前編)

今回は大阪箕面市で収録

柿次郎:
Dooo!司会の徳谷柿次郎です、本日もよろしくお願いします。ではさっそく本日Doooのゲストを紹介します。NPO法人「あっとすくーる」理事長の渡剛さんです。宜しくお願いします。

渡:
よろしくお願いします。

柿次郎:
まずここはどこなんでしょうかね。

渡:
私たち「あっとすくーる」の事務所で、塾もやっている場所になります。

柿次郎:
ここは、大阪の箕面市ですよね。

渡:
そうです。

柿次郎:
渡さんは何をやられている方なのか、自己紹介というか。

渡:
一人親家庭の子供たちでも通いやすい学習塾を運営していますNPO法人「あっとすくーる」というところで代表をしていると申します。よろしくお願いします。

柿次郎:
なるほど。じゃあここが学習塾という。

渡:
そうです。

柿次郎:
じゃあ後ろ・・・

渡:
まだいないですけど(笑)

柿次郎:
いつもここにやってきて、学校とは別で。終わったあとやってきて勉強追いつけなかったところをやったりとか話聞いたりとか相談に乗ったりとかある意味、逃げ場所じゃないですけど・・・

渡:
居場所みたいな。


ひとり親家庭の抱える課題

柿次郎:
どういう形で活動を・・・塾で一人親って、そもそもどんな課題があるか教えてもらっていいですか?

渡:
今、子供の貧困っていわれる問題が結構ニュースとかでも取り上げられるようになったんですけど、経済的に厳しい状態で暮らしている子供が7人に1人いるって言われていて。かつそれが、一人親家庭に絞ると2人に1人って言われてるんですよ。

柿次郎:
え!半分?

渡:
半分なんですよ。

柿次郎:
なるほど、僕もインタビューとかさせてもらうと一人親で、母子家庭で平均年収が200万円くらいだったりとか結構カツカツですよね。

渡:
けっこうカツカツですね。

柿次郎:
それもパートだったりとか掛け持ちしながらメチャメチャ働いて、頑張って200万円でそこから一般的な学習塾の費用を捻出するっていうのはかなりしんどいと。

渡:
かなりしんどいですね。それが出せなくて、行かせたいけど行かせて上げられないし行きたいけど我慢しないといけないという。


どんな形で支援を?

柿次郎:
渡塾としてどういう仕組みで成り立っているのかとか一般の人ってNPOの仕組みとかもわからなかったりするじゃないですか。こういう環境をどうやってやっていてどういう成果が出ているのかとかその辺のことを教えてください。

渡:
この渡塾っていう塾なんですけど、どんな子でも来ていいんですよ。一人親じゃなくてももちろんどんな子でも。ただ、一人親家庭の方だと、授業料が半額になったりだとか。

これはその塾に通ってたりしたらよくあることだと思うんですけど今まさに夏休みなので「季節講習で授業を増やしたい」とか受験前で「もう少しで志望校に届きそうだ、授業増やしたい」って思ってもお金に余裕がないと親にそれを言うのは気まずい申し訳ないって我慢しちゃうんですけど。

この塾に通う子供に向けた奨学金制度っていうものを用意してて審査はあるんですけど、通れば自己負担ゼロで勉強したいって思った分だけ、お金のことを気にせず勉強してもらえるような制度を仕組みとしては設けています。

それで授業料を半額にしたり奨学金をっていうのは全て寄付で。寄付をいただいてそれを元に活用している。

柿次郎:
それは全国というか・・・

渡:
色んなところから。大阪の方ももちろんいらっしゃいますし全然、色んなところから。

柿次郎:
基本それで成り立っている。

渡:
そうですね。授業料は授業料として、経済的にそこまで苦しくない方からは
普通の塾と同じくらいいただき一人親家庭の方からは半分はいただき。その差額であったり、プラスアルファ、もっと頑張りたいって部分を寄付でささえてもらっているという形です。


まずは「子どもが来やすい居場所」を

渡:
うちの授業で関わっているのって大学生のボランティアの方なんですけど。

その大学生のボランティアは一人親家庭の子供が置かれている状況みたいなものに理解や共感がある。

そういう人が講師を務めてくれている。とりあえずまず、勉強が嫌いな子供が塾に来るっていうのがそもそも難しいことで、来たら勉強しないとって思っちゃうので、塾って。「勉強をしないといけない場所」って思わせないように、とにかくまさに今、ここでおしゃべりさせてもらってますけどここは普段トランプしたりだとかUNOしてたりするんですけど。

なんかそういうことも出来るような空間を用意してて。

逆に言うと、子どもたちの「ちっちゃなできた」を作れるように授業をどうするかっていうのを考えながらやってます。

柿次郎:
例えば、30人とかのクラスで勉強についていけなくて、そうすると褒められるっていう数自体がすごく減るわけですよね。そもそもじゃあ勉強が出来なくなると学校に行きたくない・・・

渡:
行きたくないって子が多いです。

柿次郎:
居場所がなくなる。すると家にこもっちゃう。そういう子供もここに来ると
勉強が出来ても出来なくてもいいけどまずここに顔を出してもらうような居場所作りっていうのがまず大事なんですね。

渡:
大事にしてます。

柿次郎:
いやーでもその気持ちめっちゃわかりますね。勉強付いていけなくてメンター的に?20代の人たちに日々の雑談でも好きなことを話すだけでも全然違ってくるわけですよね。

渡:
そうですね子供たちを見てると。すごく居場所になってたり、講師と生徒、大学生と中高生との関係もいい意味で距離感が近い。

柿次郎:
渡さん自身も教えたりするんですか?

渡:
僕もまだ少し授業持ってたり。

柿次郎:
その中でね、関係性を築いていっていう・・・・

渡:
(生徒が)ちょっとずつ来ましたね。

柿次郎:
時間的に・・・夏休みなんですね。

渡:
そうですね。夏休みなので昼間の夏期講習の授業がパラパラとある感じです。


自身も母子家庭に生まれる

柿次郎:
こういう活動をしている人って実体験から紐づいて、そのまま社会的に会社とかNPOとか立ち上げる人が多いと思うんですけど。そこらへん教えてもらっていいですか?

渡:

結婚してない男女の間に生まれて・・・

でも父親は亡くなってしまったので。当時生まれたときは、僕と母とおばあちゃんと、お兄ちゃんが二人いたんですよ。10歳以上も年の離れた。

柿次郎:
そんなに離れた。

渡:
父親も違う兄なんですけど、という5人で暮らしてて。最初は、母親がすごく頑張って働いてくれてて。とある保険会社の営業でバリバリ働いてて、キャリアウーマンじゃないですけど。当時お金に困るってことはそんなになかったんです実は。小学校卒業して中学校はいってすぐぐらいまでは、ある意味そんなになにか、一人親家庭だからしんどい思いしたっていうのはないんですよ。ただ、中学校に入って、2年生のときに2つ大きな事件があって。



兄の借金と祖母の介護

ひとつが、年の離れた兄がもう家も出てたんですけど・・・

柿次郎:
それで取り立て的に家族のところに・・・

渡:
毎日電話が掛かって来たりとか。

柿次郎:
怖い人たちから。

渡:
結構今もトラウマで知らない電話番号からの電話が未だにちょっと怖くて出にくいっていう、中2から続くトラウマがずっとあるっていう。二つ目は一緒に暮らしていたおばあちゃんが介護が必要な状態になっちゃって母親が仕事をセーブしておばあちゃんの面倒をみないといけないっていう。だからお兄ちゃんの借金の問題はあるし、母親仕事減らしたから収入減っちゃったしっていうのが一気に来たんですよ、中2のときにほぼ時期を同じくして。それで変わったんですよね急激に。ほんとに毎日借金取りからの電話が鳴り続けるような日々と毎晩毎晩母と兄は喧嘩するような日々で・・・


柿次郎:
じゃあお兄ちゃんは家に?

渡:
一旦帰ってきたんですよ、そういう状況なんで。毎晩喧嘩して、最後に母親が・・・

って兄に言うんですけどばっちり聞こえるところで言われてるので。

柿次郎:
別にご自身の意思はそういうわけじゃないですもんね。

渡:
そうです。

柿次郎:
え?俺?って・・・

渡:
明日死ぬの?って・・・布団の中でずっと。

柿次郎:
すごいシリアスな空気の中、それも多感な時期で。

渡:
そうです、そうです。

柿次郎:
それはめちゃくちゃ残りますね。

渡:
だから結構怖かったですね。「明日生きてられるのか」みたいな日々で。幸い母親がパワフルだったので、なんとか借金の問題もうまく弁護士の先生に相談しながらなんとか片を付けてくれて。

柿次郎:
なかなか低空飛行になるとあがれないんですよね、社会の仕組みって。それはすごいわかります。


柿次郎も父子家庭で育つ

柿次郎:
渡さん・・・

渡:
えっ!

柿次郎:
作ったような感じですけど。笑・・・僕も大阪出身で、小学校2年生のときに両親が離婚して父親のほうについていったんですけど。いわゆる父子家庭、男3兄弟で。

途中までは大丈夫だったんですけど・・・

カップラーメンや菓子パンとかが増え。最終的には98円のサンマ、スーパーで売っている、それ一匹だけみたいな。

20年以上前ですかね。それで僕子供のときに「勉強がしたい」と。全然勉強できなかったんですけど親父に「塾に行かせてくれ」と。

それでそういうことを途中から言わなくなりましたね。

渡:
そうですよね。


大坂はこういう話が多い!?

柿次郎:
僕も結構そういう話をすると「大変だったね」って言われるんですけど
結構、大阪ってそういう話多いですよね?

渡:
多いですね。大阪は多いですね。

柿次郎:
転がっているって言うとあれですけど同級生とかもちろんそういう所から這い上がれなかった友達とかいっぱい見てきているわけじゃないですか。結構大阪って言う土地の特性とかもやってて感じますか?

渡:
なんか僕、すごく感じたことエピソードがひとつあって。

バレちゃうと「あ、ごめん」みたいな気まずい感じになっちゃうので極力隠してたんですけど。ここで会う子供たちって自分が一人親家庭であることをフラットに話せる子たちが結構いて「なんでなんだろう」って。「嫌じゃないん?そういうの。人に知られたくないとかさ、俺はそうだったけど」って話をしたら、「小学校の頃はそうだった」って言ってたんですよ。

周りに全然いなかったってそういう子が。でも・・・

「一人親なん?私もやねん!いえーい」みたいな感じになるってそれも大阪やなってそのノリは。熊本では絶対にならないと。

柿次郎:
そうか。相対的に割合が多いんですね。

渡:
多いでしょうね。そうやって会う確率。やっぱ大阪っていう土地の気質なのか、それで「いえーい」って笑いに変えられるじゃないですか。っていうのは、強いなぁというか。みんながみんなそういう子じゃないんですけど、それが1つ象徴的なエピソードだなと思って。

柿次郎:
渡さんもそこから大学の進学とか経済的な環境の中からどうやって今のところまで?


大学進学に危機が・・・

渡:

というのも、母親が僕が頑張っていることだけを生きがいにしてくれていたので。頑張らないとお母さん死んじゃうって思っていたので。冗談抜きで・・・。

柿次郎:
ああそっか。

渡:
勉強頑張って・・・。

柿次郎:
中2とかでそういうことがあっても。

渡:
そうやって頑張らないと母親が死ぬと思って。高校も熊本県内の進学校と言われるところに進学をして。ずっと僕、先生になりたかったので大学に行こうと思って。自分も大学に行くもんだと思って頑張っていたんですけど。僕、学費のことを高3の夏になるまで調べて事も考えたこともなかったんですよ。大学の学費って。

高校と同じぐらいだろうって勝手に思っちゃってて、友達と何気なく話している時に「国公立に行っても最初の1年で100万ぐらいかかるよなぁ」って話を友達がぽろっとしたんですよ。その時に「やばっ」って思って。「そんなにかかるの大学って」ってなったんですよ。もう家に帰ってすぐ母親に相談して「大学って安くても100万かかるらしいよ」って「俺行けんの?」って。

柿次郎:
めちゃめちゃ勉強できる子なのにそれは知らなかったんですね。

渡:
まぁそうなんです。本当に世間知らずというか。そこで初めて知って母親に聞いたら「お金のことはあなた心配しなくていい」って言われたんですよ。それで半分「どうにかなんのかな」って気持ちがありつつも、でも、そうお母さん言ってくれているので勉強頑張ろうと思って頑張ってたんですよ。

そしたら、勉強頑張って少しずつ成績も伸びてきてたんですけど何が起きたかって・・・もう1回お兄ちゃん闇金からお金借りてきて借金背負って帰ってきたんですよ。

柿次郎:
リバイバル。

渡:
リバイバル・・・。笑

柿次郎:
また来ちゃう、第二次。

渡:
そこで、今だから笑ってしゃべれますけど、その時「終わった」って思ったんですよ。「借金までどうにかして自分の大学費用なんて絶対出せない」っていう中で、母親に「死にたい」って手紙を書くぐらい追い詰められたんですよ。

柿次郎:
それはある種自分の人生の目標であり生きる原動力が教師になることですもんね。そのためには大学に行かないと自分は。「勉強しないとお母さんが死んでしまう」という強迫観念もあり。

渡:
頑張ったけど夢諦めないといけない。言い方悪いですけど自由気ままに人に迷惑をかけながらでも生きているお兄ちゃんはいる。

っていうので、それこそ、結果として失いかけて本当に死んだ方がマシかもしれない、死にたいって状況になったんですけど。なんで大学に進学できたかって、自分のお父さんにあたる人がその時期に亡くなったんですよ。

柿次郎:
その会ったことのない?

渡:
会ったことも話したこともない。で、遺産が少しだけ入ってくるってことになって、その遺産のおかげで進学費用と工面できて、僕はそこで奇跡的に大学にも合格して大阪に出てきたっていう。

柿次郎:
それがなかったらどうなっていたか。

渡:
どうなっていたか・・・

柿次郎:
素直に喜べない・・・

渡:
そうですねもう本当に・・・

柿次郎:
今も残っているわけですよね。このモヤモヤというか。

渡:
残ってます残ってます。

でも、それが叶わず18の時に亡くなられてしまったので。結構いろんなモヤモヤが残りますよね。「会いたかったなぁ」とか「話してみたかったなぁ」とか。

柿次郎:
教師になってこういう学習塾というか子供たちに対して、もし同じような環境で諦めてしまいそうな子がいたらちゃんと支えて・・・

渡:
支えになりたい。

柿次郎:
渡さんにまだまだお話お聞きしたいんですけれどもここで一旦後編につなぎます。つづいてDoooするぞ!Dooo!!!!