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「今話題のDNA!遺伝子解析が変える未来」高橋祥子さん(前編)

ミイナ:
Dooo!司会の堀口ミイナです。今日もDooo楽しくやってまいりましょう。早速今日のゲストご紹介します。遺伝子解析の会社であるジーンクエストの代表取締役社長、高橋祥子さんです。よろしくお願いします。

高橋:
よろしくお願いします。

Dooo!今回は世界中で今話題となっているDNAのお話です。

国内では縄文人の全ゲノムを解明。

日本人の複雑な起源を知る手がかりに。
アメリカではホオジロザメの全ゲノムが解明され彼らの強さの秘密が人間に応用される未来が来るかも。

さらにコアラやウーパールーパー、小麦のゲノム解明がもたらす影響とは。

2003年のヒトゲノム解読から16年。日進月歩で進む生命科学に挑むのは遺伝子解析会社ジーンクエストの代表取締役社長、高橋祥子さん。

高橋:

体質や疾病のリスク。さらに祖先のルーツまで分析することができる遺伝子解析。知ることから実用すること。その先に待ち受ける未来はどんな物なのか。高橋社長に根掘り葉掘り聞きました。

テーマはDNA

ミイナ:今日はですね、Dooo史上、最もアカデミックな日になっています。こちらは何でしょうか?

高橋:
これちょっと持ってきてしまったんですけれども・・・

ミイナ:
色がカラフルなのにも理由があるんですか?

高橋:
そうですね。塩基が一つ一つ違っていて、私たちの体の構造をつくっているものですね。

ミイナ:
これは何ですか?

高橋:
これは、ひとつひとつの塩基を拡大するとですね、これになります。こういう構造がDNAの二重らせんを作っていると。

ミイナ:
最近、ゲノムという言葉をよく聞くんですけど、ゲノムは遺伝子のことでいいんでしょうか?

高橋:
ゲノムというのを分解すると、ジーン+オウムという二つの単語から来ているんですけども、そのジーンというのが遺伝子という意味ですね。で、オームというのが全体という意味なんですけれども、なので遺伝子全体をゲノムといいますね。

ミイナ:
あの、ジーンクエストはどんな会社なんでしょうか?

高橋:
そうですね。個人向けの遺伝子解析サービスというのを提供しているのと、あとはゲノムのビッグデータを使って、新しい研究をですね、製薬会企業や食品企業とか、大学研究機関と一緒に行っている会社です。

ミイナ:
個人としてもサービスを利用することが出来るということですよね?

高橋:
そうですね。実際に今日持ってきたんですけれども、このようなキットでして・・・

唾液をとっていただくと、唾液の中の細胞を抽出して、細胞の中からDNAを取り出して、DNAの配列を解析して、どういう遺伝子情報を持っているかというのを、お知らせするサービスですね。

ミイナ:
これに・・・

高橋:
そうですね。こういう感じで唾液を入れていただいて、送っていただくだけで、大体1か月くらいでマイページで自分の遺伝子情報が確認できるというものですね。

ミイナ:
どんなことが分かる?

高橋:
今、ご提供しているのが、疾患のリスク。どういう病気に遺伝的になりやすいかと、あとは体質、お酒が飲めるかどうか。あとは祖先の情報もお返ししていて、自分の祖先がどの大陸から来たのかっていう。で、全部の情報を集めて、300項目以上の情報を遺伝子情報からお返ししている。

ミイナ:
じゃあ病気関連の情報だけでなく、なんとルーツまで分かるんですね。

高橋:
そうですね。

ミイナ:
ちなみに高橋社長はどちらのルーツですか?

高橋:

ミイナ:
3万年前!?

高橋:
はい。

ミイナ:
言われてもなかなか・・・

高橋:

ミイナ:
面白い、DNA旅行。


ジーンクエスト設立のきっかけ

ミイナ:
ジーンクエストはまだ高橋社長はお若いと思うんですけど、どんなキッカケで創業されたんですか?

高橋:
そうですね。私がもともとも大学院でゲノム研究をしていて、で、その研究室のメンバーで6年前にたちあげた会社なんですけど。

私はもともと、大学に残って研究者として、将来教授になりたいと思っていたんですけど、やっぱり、

そうすると、やっぱり、社会を巻き込まないといけない。


学生起業は「大変だった」

ミイナ:
へえ。確か、学生起業だったと思うんですけど?

高橋:
そうですね。博士課程の大学院生でしたね。

ミイナ:
学生起業というのはどうですか?おすすめですか?

高橋:
いや、う~ん、おすすめしないんですけど、すごく大変な。

私もおすすめしないって言われましたね。周りの人に。学部生ならいいんですけど、大学院生だと研究がすごく本格的にあるので、大変ということと、

ミイナ:
当時はそんなに遺伝子解析サービスって日本ではまだなかったですよね。

高橋:
いくつかはあったんですけど一つとか二つの遺伝子の場所って言うのを調べるって言うのはあったんですけど、このゲノム全体のゲノムワイドって言われるビッグデータを本格的に解析するっていう所はなくて、私たちが日本で初めて開始したっていう所ですね。


DNA解析でわかる!日本人の体質

ミイナ:
たくさんの方のDNAデータをお持ちだと思うんですが、DNAからわかる日本人特有の体質とかってあるんですか?

高橋:
ありますね。というのも、もともと今ある世界中のゲノム研究というのが、結構欧米系の集団での研究が多いんですね。研究費、特にアメリカが多かったりするので、

アメリカみたいに多様性がそこまでない。

例えばお酒の感受性と遺伝子の関係でいうと、アルコールの代謝酵素の遺伝子の違いがあるんですけど、

欧米系の集団にはないような違いが日本人の中であるんですよね。なので、

そこの多様性はないと。そういうところは日本人に特徴的ではありますよね。



縄文人ゲノムから・・・日本人の起源解明へ・・・

ミイナ:
ほう、お酒飲めない人がいるってこと自体が、世界から見ると珍しい?

高橋:
そうですね。そう、そうすると・・・

あとは、体格も全然違いますよね。

で、最近ですね。縄文時代の縄文人の全ゲノムが解読されたという研究あったんですけど、昔の日本のルーツがわかってきたと。

昔の縄文系といわれる人たちはお酒が強かったといわれていて、あとは、特に動物性の脂肪、高脂肪食を分解できる遺伝子を持っていたんですね。その時に農耕が始まっていたんですけど、農耕せずに狩猟で食事を賄っていたんじゃないかということが分かってきて。

ミイナ:
そうすると当時の縄文が狩猟採取、弥生が農耕っていうイメージなんですけど、当時の生活習慣とか食習慣によってその遺伝子の特徴も変わってくるということなんですか?

高橋:
そうですねぇ

ミイナ:
じゃあお酒が飲めない人っていうのは、弥生系強い可能性がある?

高橋:
まぁ可能性があるということですね。

ミイナ:
私はすごく飲めちゃうんですけど、飲みすぎないようにしないといけないんですけどね。

高橋:
飲める人の中でも、アルコール依存症になりやすい人と、なりにくい人もいるので、調べてみるといいと思います。


ホオジロザメの遺伝子解析も・・・

ミイナ:
ホオジロザメの遺伝子が最近、解析された?

高橋:
そうですね。ホオジロザメっていうサメの一種ですね。そもそもサメのゲノムの解析ってすごく難しいんですよね、危ないので、サンプルをとるのも。
なかなか取れないというのと、ゲノムの大きさというのが動物によって全然違うんですけど、すごく(ホオジロザメは)大きいんですね、

ミイナ:
じゃあつまりこれの長さが全然動物によって違うと?

高橋:
そうですね。で、これが含まれている染色体が人間は23本あるんですけど、それがホオジロザメだと41本あって、すごく大きい。だから読むのが結構大変だったんですね。で、ホオジロザメが特徴があって、体に傷がついたときに、それを治癒する能力がすごく高いといわれています。あとは、体がすごく大きくて寿命が大体75年くらいなんですけど

ミイナ:
長生きですね?!

高橋:
そう、すごく長生きなんですよ。で、体が大きくて寿命が長い動物ってがんになりやすいんですけど、でも、ホオジロザメはがんになりにくと。だから抗がん作用があるのではないかということで、傷の治癒能力だったり、抗がん性というのをゲノムが解読されたことで、解明できるかもしれないということですね。

ミイナ:
いろいろな生物のゲノムを解読することで、いろいろな生物の特徴を何らかの方法で使えるかもしれない?

高橋:
そうです、そうです

ミイナ:
何かサメクリームとかって傷があっという間に治ったりしたら楽しいですよね?

高橋:
そういうこともできるようになるかもしれないですね。


続々と進む・・・ゲノム解析

ミイナ:
ほかには何か例はありますか?

高橋:
最近だと、ここ1年で全ゲノムが解読されたのが、コアラとか、ウーパールーパーとか、小麦ですよね。小麦も本当に最近解読されたんですけど、例えば、ウーパールーパーだと細胞がこう、再生される能力があるんですけど、それももしかしたら解明できるかもしれないとか。

あとはコアラだと、ユーカリの毒を食べても大丈夫なんですけど。その、解毒能力が解明されるかもしれないとか。

小麦だと今世界中の食べ物の基盤になっていますけど、食糧問題を解決できるかもしれないとか、いろんな生物のゲノムを解析することで、人類の知識が増えて、それがいろいろな課題解決力につながるかもしれないというところなんですね。



ゲノム解読から進む新薬開発

ミイナ:
ゲノムを解析すると何か変な話ATGCの塩基がぶわーって出てくるって言うことだと思うんですけど、あれからどうやって新薬を治療したりとかって言うことに繋がってくんですか?

高橋:
例えば糖尿病になったことのある人と、なったことのない人のATGCのゲノム配列を調べて、統計的にどこの遺伝子の場所がかかわっているのか、というのを検出するんですね。その遺伝子の特定の塩基を持っている人はなる確率が高いし、そうじゃないということが分かると、その遺伝子をターゲットにした薬を作ればよいということになるんですよね。

それをコントロールしたりとか、そこに介入する方法、薬を作って疾患の治療に役立っていけるということですね。

ミイナ:
遺伝子を治療する薬というものもあるんですね?

高橋:
最近、アメリカで承認されたのが、遺伝子治療薬でキムリアというもので、一つの薬の名前なんですけど、それが話題になっていたのが、すごく高くって、一人当たり、一回の投与で3300万円、というので、問題視はされていましたね。


ゲノム編集と倫理問題

ミイナ:
あの、今の新薬が高いという話もそうなんですけど、いろいろと倫理が絡む?

高橋:
そうですね。

ミイナ:
例えば、最近、中国での双子の研究で・・・ああいう問題はどうお考えになりますか?

高橋:
そうですね、やっぱりテクノロジーで出来ることが最初にあって、それを使っていいかというのはみんなが、私たちがどう思うかっていうので、倫理的な基盤が次に出てくるんですよね。で、ゲノム編集を人の受精卵に応用していいかというのは、テクノロジー的には出来てしまうと。それを本当にやっていいのかというのは、コンセンサスが取れてない中でやってしまったっていう事例なんですよね。まああの件を事例に世界中でゲノム編集を人に応用することについて、議論がなされている途中なんですけど、まだ今でいうと、


ゲノム編集をヒトの受精卵に使うこと

ミイナ:
要はデザイナーズベイビーみたいな感じで髪の色、目の色とかも全部いじれちゃうわけですよね?生まれる前の受精卵の段階?

高橋:
そうです。受精卵の段階ですね。

ミイナ:
受精卵も何かね、あまりにもえりすぐりとかすると、昔の・・・

高橋:

みんな、同じような、鼻が高い方がいいとか、この子は絶対に太らないような子にしようとかは、

多様性を減らす方向に行くというのは、基本的に危ないですね。


遺伝子研究の面白さ

ミイナ:
高橋さんが考える、遺伝子研究の面白さってなんですか?

高橋:
そうですね。あの、実は人のゲノムが解読された2003年に、ゲノムの配列が分かると、全部わかるんじゃないかってみんな世界中の人が思っていたんですよ。

でも、ふたを開けてみたら、

ミイナ:
生命って誰かが書いたものではなく、ある意味、神が作りしものというか。物理法則のようにすでにそこにある、という感じがしますよね。

高橋:
そうですね。