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「“食”を考えるために猟師になった大学生の挑戦」菅田悠介さん(前編)

柿次郎:
Dooo!!司会の徳谷柿次郎です。早速、本日のゲストを紹介します。大学4年生で現役わな猟師の菅田悠介(すがた・ゆうすけ)さんです。よろしくお願いします。

菅田:
よろしくお願いします。

大学生でわな猟師

柿次郎:
大学4年生でわな猟師って結構みんな「?」だと思うんで、なんで猟師になってるのかって。

菅田:
一番最初のきっかけは、あるブログを読んでからなんですよね。畠山千春さんっていう方がいらっしゃって。

“3.11”をきっかけに、自給自足的な生活を始めたっていう方なんですけども。

「お米作ったよ」みたいなブログだったりとか「イノシシ解体したよ」みたいなブログだったりを載せている方なんですけれども。

その人のある記事がめちゃくちゃ炎上していまして。

柿次郎:
あら。

菅田:
「動物を殺して食べるなんて最低だ、死んじまえ!ブス女!」みたいにめちゃめちゃ書かれていて・・・。

柿次郎:
そんなひどい・・・。

菅田:
それを見た時に、すごく「?」でしかなくて、疑問でしかなくて、違和感でしかなくて。

柿次郎:
それはコメントを書いている人たちが何故こういう感情になるんだろうっていう?

菅田:
そうなんですよ。この人たちも何らかの形でお肉を食べているはずだし、恩恵とか受けているはずなのに、そういうような肉を自分で作るっていうようなことをしている人に対してこんなに悪口言えちゃうのってどうしてなんだろうって。すごい疑問でしかなくて・・・。千春さん自体は発信を続けてて「どうしこんなこと言われているのに発信を続けているんだろう?」とか・・・。


“食べ物”が変化した体験

すごくその時に興味関心が湧いて、どうせなら狩猟体験を学ぶんだったらこの人の元で学びたいなって思いがあって、千春さんにダイレクトメッセージを送って、会いに行って、鴨を実際に解体して自分で首をひねって、気絶させてナイフで首を切って殺して、それを食べられる部位食べられない部位に分けて焼き鳥にして、食べるってワークショップを受けたんですよ。

その日に、

ってすごく実感して。今まで本当に食べ物はただの食べ物でしかなかったんですけど今まで見てた食べ物が変わってしまって・・・。

柿次郎:
イメージというか、裏側の情報に気づいちゃった。

菅田:
そうなってから、

みたいに見えてしまうようになって食べ残しってのが一切できなくなっちゃったんですよね。今まで僕、魚介類とかすごく苦手で。

柿次郎:
え!?そうなんですか?

菅田:
残したりとか結構してたんですけど、このエビとかもいざ、バンって出されてみると、自分のために死んでくれてる動物だったり、ものだったりするのに、それを残しちゃうってすごい罪な行為なんじゃないかなっていう風に思うようになって、食べ残しが一切できなくなってしまいまして。

「お前なんで食べ残ししてんだよ!」「日本には1年間に600万トン食べ残しがあってな」とかいろいろ言うようになったんですけど、言ったところで「はあ、何言ってんのおまえ」みたいな感じで熱意が違うわけです。

柿次郎:
「意識高い」って言われたり。

菅田:
「意識高い系が」みたいな目で見られちゃって。全然その人に響かないなみたいなことをすごく感じて、どうやったら友達とかが食についてだったり、食料廃棄について親近感を持てたりとか身近に感じてもらえるんだろうって考えた時に「あ、食べ物は動物の命だったんだ、っていうのを伝える機会っていうのをどうにか増やせればいいんじゃないかな」と思って。逆に今そういう機会って全然ないんじゃないかなって思って、そういった機会を増やすためにも「自分は狩猟体験を教えられる人になろう」って思って、まあ、猟師になってそういうような解体ワークショップとかを始めるようになったという感じですね。

食べ物について考えてもらう機会を作りたいとの思いから大学2年生のとき、鶏を解体して食べるワークショップを始めた菅田さん。

その後、実際に猟で捕った動物を解体するワークショップも行うようになり、定期的に実施しています。


狩猟免許には種類がある

柿次郎:
狩猟って猟の種類が4つぐらいあるんすよね。

菅田:
そうですね。火薬を使った銃だったりとか空気を使った銃だったりとか
罠の免許だったりとか、網を使った狩猟っていうその4つの種類があって

僕はその中でも罠の免許を持っている感じです。

柿次郎:
それが一番ハードルが低いんですか?

菅田:
ハードルとしてはそうですね。罠と網はどちらかといえば簡単という感じで銃とかただの免許、狩猟免許だけじゃなくて警察の許可とかも取らないといけないんで色々と銃の方がハードルが高かったりとか。銃のお金とかも結構かかったりするんでちょっとそっちの方がハードルが高いって感じですね。


どんなわなをつかって捕る?

柿次郎:
なるほど。罠っていうのはいわゆる漫画とかアニメで見る、ガシャンみたいなトラバサミ的なもの?

菅田:
でも、トラバサミっていうのは実は今狩猟の道具として使っちゃいけない、禁止猟具みたないに言われているので、トラバサミはダメなんですけれども
僕がメインで使っているのはくくりわなって言われるやつで。

ワイヤーとバネを使ったもので、

埋めてあげてそこに足とか重みを感じた瞬間にバネとかがビヨンって伸びてワイヤーがキュッと締まりつつ上に上がるっていう仕組みになってて、

足のここら辺をギュッとつかんだりするっていう仕組みのくくり罠だったりとか、牢屋みたいな形感じの「はこわな」って言われているやつで、

踏み板って呼ばれる板を踏んだりとか糸みたいなところにバチって触れた瞬間にガシャンって閉まるような罠だったりとかっていうような感じですね。


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映像で知った気になることの危険性

柿次郎:
僕も最近漁業の取材を始めたんですけど人間と海がすごく遠くなっている・・・。

人間って山も遠くなっているんだと思うんですけどそれこそネタみたいに今の子供たちは魚の切り身のまま泳いでいるって思い込んでいるみたいな。行程みたいなものがすごくどんどんどんどん距離が遠くなっててそれは自分が取材して記事にしてもどうやったら海の問題伝えられるんだろうとか結構悩みますよね。

菅田:
そうですよね。しかも、なんかメディアで伝えようと思った時にメディアだけで知った気になっちゃうっていうのが怖い問題なのかなってのもあって。
映像だけで知った気になるって結構多い気がしてて。肌感なんですけど
映像だけ見て「こんなグロいことやっているなんて無理」みたいな感じで、ベジタリアンになってしまった人だったり、結構僕の友達でもいるんですよね。

柿次郎:
ある意味衝撃的なものを見ちゃったが故に。

菅田:
逆に動物の解体を実際に見たとか実際に体験してベジタリアンになった人
ってやっぱほとんどいないし、僕のやってきた体験事業みたいな中でそういうような人はいないので。僕も初めて体験した時に感じたんですけど、

伝え方ってすごく難しいし結構迷うなって色々あります。

柿次郎:
現場でしか感じないられない情報量がめちゃくちゃあって、そこの上澄みの血とか赤いみたいな物だけで嫌だって思うのはもったいないなってことですよね。

菅田:
そうなんですよね。そんな3分とかで終えられる物でもないですし数時間とかかかったりするのでそこを全部まるっとまとめて体験することって映像だと難しいとこはやっぱりあって。ちょっと映像とは違うなって感じますね。

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ワークショップの反響

柿次郎:
体験してどんな反響とか声があったとか・・・

菅田:
体験してから食べ物に対しての見方だったりとか、やっぱり変わってくれる人は多くて。例えば、鶏の解体とかの現場を見てからスーパーの鶏肉が全然見え方が変わったんだみたいな感じで言ってくれる人だったりいて

解体と共に色々鶏ってこういう生物で今食べられている鶏ってブロイラーとかって言われて結構ひどい生活をさせられて育っているんだよみたいな話とかを交えつつ体験してもらっているので、そういうようなブロイラーのお肉とかはちょっと食べづらくなって地鶏とか食べるようになったみたいな話とか、なんかスーパーの肉の見え方が変わったって話だったりとか。鶏について親近感をもってもらえたってそういう解体を通してあったかなって。

柿次郎:
現場の面白さ、情報量の多さで人の心はどんどん変わっていくというか。

菅田:
俺は鶏についてめちゃくちゃ情報知っているぞってその優位感というかそこがまた他の人と違うから教えられる立場の人になるわけですからそこでまた勉強が進んだりとか人に教えたりみたいなものが進んでいくんでそういうった意味では体験の情報量ってすごいなって思います。


“なんでだろう”が大切

柿次郎:
自分の実体験から「なんでこうなったんだろう」っていう疑問が増える状態ってすごく大事じゃないですか。地方の取材を通して「山ってなんでこうなっているの?」みたいな。僕は最初猟師さんの話で興味持ったのが鹿が増えすぎている、鹿が増えるのが害獣被害で野菜とか果物食べられるってのがなんとなく想像はつくんですけど。むしろそれも大変だけど鹿が木の皮をはいで食ったり根を食ったりすると山の保水力が落ちる、と。で、その保水力が落ちると「台風が来たときに大雨で土砂くずれがおきて、土砂災害が起きやすい」みたいなことを聞いた時に、「あぁ」って。自然のバランスってすごい際どいところで成り立ってて。それが1つなにか欠けちゃうと一気に狂うんだなみたいなものが、すごい「うわぁああ」ってなって、ずっとそういう「なんでだろう」の連続の中でもちろんスマートフォンで調べた気にならないで実際体験することはめっちゃ大事だなってのは本当にここ数年の活動で思っているので。

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「わなオーナー制度」とは

シカやイノシシなどが増え 、農作物を荒らしたり、自動車との衝突などの被害をもたらしていることの一因として考えられているのが、猟師の数の減少と高齢化です。

猟師は40年前の3分の1ほどに減っている上、60歳以上の人が6割を占めています。こういった問題に取り組むために、菅田さんは去年の冬から新しいを活動を始めました。

柿次郎:
取組みとしてわなオーナーシップ制度みたいな?

菅田:
「わなオーナー制度」ですね。狩猟ってお金がかかったりとか罠の場合だったら手間ががすごくかかるんですよね。

毎日見回りしないといけないっていうような話だったりとか、猟師ごとの縄張り争いとかもあったりとか、狩猟税っていう税金を払わないといけないとか。その狩猟にオーナーさんは同行することができて実際に狩猟だったりとかを見たり体験することができることになっていて色々手間があったりして。農家さんと猟師と狩猟に興味がある都会の人がほとんどなんですけども

そういうような狩猟のハードルが高い現状を、どうやったら狩猟をやりやすくなるんだろうって色々考えたりしてた時に、

みたいなものをすることによって狩猟がやりやすくなるんじゃないかみたいな話を僕の師匠みたいな人が言ったりとかしてたのを交えつつ・・・自分で何かできないかなって思ってやり始めたのが「わなオーナー制度」ってものになっていて。
小田原でやっているものなんですけど狩猟に興味があるっていう人にお金をシェアして出してもらって、そのお金をつかって罠のお金を買ったりとかエサのお金を買ったりとか。

猟師の人はお金を使って罠を設置してその設置する場所っていうのも農家さんが獣害の被害に困っているような畑とかに罠を置いてあげてそうすることで農家さんはありがとうみたいな感じで農作物だったりを猟師にくれたりとか。お金を出してくれた、僕はオーナーさんって呼んでいるんですけどそのオーナーさんに農作物をくれたりだったりとか。

それで猟師の人はバイトみたいな感じでお金をもらいつつ狩猟ができて、その狩猟にオーナーさんは同行することができて、実際に狩猟だったりとかを見たり体験することができることになっていて。

農家さんと猟師と狩猟に興味がある都会の人がほとんどなんですけども、そういうような都会の人っていうのを、この3つをつなげるような仕組みってものが「わなオーナー制度」ってものになっています。

柿次郎:
めっちゃ面白いですね。

菅田:
結構面白くて、そこで農家さんと都会に住んでいる人とかが関係を持って、小田原に遊びに行ったときに泊まらせてもらったり、一緒に祭りやろうぜみたいな感じで祭りに参加したりとか、僕がいないところでも起きたりしてるんで。

そういうような関係人口みたいなのを増やせたのかなって感じがあって。

「狩猟興味ある、でもちょっと面倒くさいどうしよう」とか「農業やりたいけどどうしよう」みたいな人をまずこっち側に引き込むことが大事なんで、そこの受け皿みたいなものを作るって大事だと思うんで、今そういう取り組みって必要だなってすごく思います。

柿次郎:
小田原以外でもあるんですか?それに近い制度って。

菅田:
僕の先輩の猟師がやっている狩猟の体験事業みたいなものは東京のあきる野市っていうところでやっている事業だったりとかあって。それには僕は何年前だろう、2年か3年前ぐらいからそれに関わり始めて色々お手伝いとかしている中で、いろいろこういう狩猟をみんなでシェアするみたいな取り組み面白いなっていう風に思って自分なりに改良したバージョンみたいなのが「わなオーナー制度」なんで。結構そういうような人だったりとかはチョコチョコ最近は出ている感じですね。ネックになるのが狩猟ってやっぱ田舎でしかできないみたいなところがあるので、結構狩猟の取り組みとか盛んなとことか北海道とか岐阜だったりとか九州の方だったりとかはあるんですけど。やっぱちょっと遠いみたいなところがあって気軽にやろうって関東の人が思った時に結構難しい状況にはなってて。そういった意味で東京のあきる野市って所も一応東京ですし一本で東京駅から行けるみたいな場所ですし、小田原も一本で行けるような場所なのでそこの都会と田舎の中間地点みたいなところから攻めていくのはまずは重要なんじゃないかなって。

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猟師の高齢化問題

菅田:いろいろ教えてくれる人がいないみたいな問題もあるんで。

柿次郎:
やばくないですか。

菅田:
やばいですよ。教えてくれる人っていっても80歳とかになっちゃうと言い方あれですけど、何いってるか聞き取れない、とかもちょっとあったりして。

柿次郎:
山のおじいちゃんってやっぱこうね。

菅田:
なまりがあったりするんでそこを聞き取るとかも難しいですし、ってなると教えてくれる人とかそのツテみたいなものを探すのもまず難しいですし、

みたいなのは運でもありますけど、大変なところではあるんで難しい。

柿次郎:
あと10年したら70、80代の方、どんどん亡くなりになるかもしれない。

菅田:
そこはちょっと危ないところではあるんで、今頑張らないと、ということで環境省とか国とかが動いたりしてるけれども・・・正直そんな単発のイベントとか何回かやったところで、っていうのはあったりするんで。
そこを持続的に、

菅田:
問題が多すぎて、複雑すぎて、いろんな、結構・・・絡んできますよね。ベジタリアンの話もあるし、過疎の話、農業の話とか教育の話、とか全部ぐちゃぐちゃになってくるとどこに手をつけたらいいのかってまあ、フードロスのこととかもそうですけど。

柿次郎:
逆に考えると、なんでもいいので一個そのきっかけで興味もって入ったら、日本の社会全体の課題とか全部見えてくるじゃないですか。

菅田:
ぜんぶに通用する問題にはなりうると思うんで、僕も狩猟体験みたいなものをとおして、食とかについて身近に感じてもらって食とかって裏側があったりストーリーがあるんだっていうことについて知ってもらうってことをやってるんですけど、そこって当たり前を疑うみたいなところが根本的にあるところだからそういう食の体験を通じて、貧困問題とか政治の問題だったりとかいろんな問題に通用すると思ってるから、そういったところに興味関心を持ってくれる人もいますし、それ一つどうにか極められればもっといろんな問題に波及させていくことってできるんじゃないかなと思ってます。