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仏教界の起業家・松本紹圭僧侶が説く!(前編)日本のお寺から仏教を身近に…

柿次郎:では、早速「Dooo」本日のゲストを紹介します。光明寺僧侶の松本紹圭さんです!よろしくお願いします!

松本:よろしくお願いします。(合掌)

柿次郎:いやぁ~いいですね、この入り。(合掌)

「Dooo」今回のゲストは浄土真宗本願寺派僧侶 松本紹圭氏東京大学文学部を卒業後、新卒で東京神谷町にある光明寺に就職。仏門をたたきました。そんな松本氏は、お坊さんとしては異色の経歴の持ち主でもあります。
2010年お寺の経営を学ぶためインドへ留学しMBAを取得。帰国後は、お寺の改革ともいえる斬新なアイディアを次々と打ち出していきます。仏教をもっと身近なものにするためインターネットを使って仏教を伝える「higan.net」の開設や、光明寺のテラスを開放したお寺カフェ「神谷町オープンテラス」も発案。帰国後は、お寺の改革ともいえる斬新なアイディアを次々と打ち出していきます。について住職に指南する「未来の住職塾」を開講。今では、250名を超える意識の高い僧侶が松本氏の下で学んでします。こうした経歴が評価され2013年には、世界経済フォーラムで「ヤング・グローバル・リーダー」にも選出されました。

まさに今、仏教界の起業家として日々アクションを起こし続けている松本紹圭僧侶。今回は、そんな松本氏お寺との向き合い方や日常生活に是非取り入れたい仏教のお話などたっぷりお聞きします。


*****Dooo*****


○○○系僧侶

柿次郎:今日、本当に聞きたいことがいっぱいあるんですけども。自己紹介といいますか、やられていることは多岐にわたると思うので、ちょっと掻い摘んで教えていただいてもいいですか?

松本:はい、もちろんです。お坊さんですということなんですが、光明寺という東京の神谷町にあるお寺の僧侶です。住職ですか?って言われるんですけど、住職じゃないんです。

柿次郎:あー、そうなんですね!

松本:お坊さんっていくつか・・・形が、働き方があると思っていて、一つは社長系僧侶

柿次郎:社長系僧侶?

松本:それが住職ですね。一つのお寺に必ず一人住職がいる。社長的な。社長って言っても個人商店くらいのお寺から。でも大きなお寺になると、何人も職員さんいたりして。

柿次郎:組織としてってことですよね。

松本:あとはサラリーマン系僧侶。要はそういうお寺に雇われて、住職がボス、社長であると。その下でいろいろなことをやるっていう働き方。
3つ目がアルバイト系僧侶ですよね。

柿次郎:アルバイト系僧侶のいるんですね。

松本:はい。重なっていたりもするんですけど、どこかのお寺の住職をやりながら、どこかでちょっと手が足りないときに手伝いにいったりとか。自分の場合は今は4つ目。4つ目のフリーランス系僧侶ですよね(笑)


フリーランス系僧侶です

柿次郎:フリーランス系僧侶(笑)

松本: 今もう、お坊さん歴17年目に入りましたけど、お坊さんになったばかりの時は光明寺で住み込みで、大学卒業して新卒で。

柿次郎:新卒で!?

松本:募集とか採用とかそういうのはなかったですけど、お坊さんになりたいですと、訪ねて行っておいてもらったという感じですね。その時はサラリーマン系僧侶だったわけですよ。ずっとやってきて、もう6,7年ですかね。そのあとにちょっと留学をして、MBAという、ビジネススクールですよね。といってもお寺って宗教法人なんで、公益法人の1つですけど。まぁどんな組織でも運営って必要ですよね。柿次郎さんもそういう立場で。

柿次郎:そうですね。一応まぁ一人の会社ですけど、フリーランスの方と一緒に仲間を作って仕事をしている。

松本:みんなで何かをやるということはそういうスキルも必要だし、お寺の世界にあんまりそういうことを勉強する場所がなかったんですね。だから自分が勉強しに行って、そういう学びの場所を創りたいなと思って、始めたのが「未来の住職塾」という塾なんですね。

松本:だからその時点で、サラリーマン系僧侶だったのを辞めて、新しい法人をつくってある意味、起業したというか、社会起業的な感じですかね。それ以来、そっちの法人でお坊さんたちの学びの場を創りながら、自分はいろいろなところに呼んでいただいたり、今日もそうですけど、お話をしたり、相談に乗ったりという、フリーランス系というのが一つの自己紹介ですね。

柿次郎:なるほど、その一つのお寺で来た人を相手にするという従来のやり方ではなくて、日本あちこち、世界も飛んで仏教というものを伝えていく、そのためにフリーランスという選択肢をとったということですかね。

松本:住職って住む職って書くくらい、一つのお寺にすごく根付いて、ローカル、地域をすみずみまで知り尽くすような存在ですよね。多くのお坊さんは実家が寺だったっていう人が多いんですよね。今時は世襲なので。だから最終的には住む職、生まれた寺の後を継いで住む職という形になるんですけど。自分は全然寺生まれではないところから来たので、逆にそういうフットワークの軽い立場のお坊さんが、昔、遊行僧

柿次郎:遊行僧?

松本:遊ぶに行くで遊行するっていう、一遍さんとか、空也上人とか、全国を回って、布教したり、人を助けたり、時には勧進をして人を助けたりとか、そういう人たちがいたんですね。まぁそんなイメージでやってます。

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「死ぬ」のが怖くて仏教を

柿次郎:なぜ、お坊さんになったのか。

松本:じいちゃんの家が寺だったっていう感じですよね。祖父が住職をしていたので、お寺の文化には、ある程度近かったですよね。おじいちゃんの家に遊びに行けばお寺なので。一つは、お寺って葬式をしていますよね。人が亡くなるところに立ち会っていて、死ぬのが怖かったんですよね。人は必ず死ぬんだと。死亡率100%ですよね。絶対に避けられない

そういう人生をどうやって生きていったらいいんだろうっていう。最後全部なくなっちゃうんだよねっていう怖さがすごく子供の頃から強くあって、でも周りの人を見ているとあまり心配してるようには見えなくて。これは何なんだろうなと。そんなことを多少思い悩んでいた時に、住職をしてた祖父が仏教の本を貸してくれたりして、このあたりからだんだん「あ!こっちの方に何か大事な事がありそうだな」っていう予感を持ちましたよね。


オウム真理教の事件から

あとは高校に入る時に、オウム真理教の地下鉄サリン事件というのもニュースで見て「大変な事件が起こったな」と。それ以来宗教というものに対するネガティブな見方も広がったと思いますし、自分もそうでしたね。なんで人の心を豊かにするはずの宗教がこんな事件を起こしちゃうんだろうなと。興味もあるんだけれども、それはポジティブな興味もあればネガティブな興味も含めてそっちの方に興味を持って、大学ではずっとその延長で哲学科にいったんですけど。だから、ずっと人の生き死に、どう生きるかといったテーマにずっと興味があったんですよね。最終的に就職をするという段階になって、最初は普通に就職を考えていたんですけど、やっぱり自分の仕事にすることは本当に興味のあることにしたいなと最終的に思って、それを何だろうと探っていったら「あ・・・お寺か。」ってなってですね。


東大卒業後仏教の道へ

柿次郎:新卒で行くしかないと?

松本:まぁ「行ってみよう」と、行ってみないと分からないし、ちょっとワクワクした気持ちもありましたね。開けたことない扉って開けてみたくないですか?

柿次郎:好奇心的にはそうですよね。

松本:そういう気持ちは強かったですね。


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仏教をもっと身近なものに

柿次郎:23歳で入ってから30歳ぐらいまで、ある意味自分で企業するわけじゃないですけども。その7年間の時間を使って仏教に触れながら自分の不安とか好奇心と社会不安というものの変化って結構早かったですか?

松本:まずは、せっかくお寺に入って普通に修行というか一人前のお坊さんになるっていうステップを踏んで行くんですけど、それと平行してその・・・オウムの事件もありましたが、もっと仏教のこんなお寺がたくさんあるんだからもっとその可能性を開いていって、もっとみんなに身近なものになっていれば、それこそ「あーいう事件も起きなかったかもしれないよねって」と。そういう思いもあって。だから、お坊さんとしての一人前になっていくための日々の事と平行して色々やってみようというチャレンジをしましたよね。例えば、お寺でみんなでライブをやってみたら・・

柿次郎:ライブ!?

松本:いいんじゃないかとか、あとは仲間と一緒に「お寺カフェ」っていうのも始まりましたし

松本:他にもインターネットでやっぱりこれからは仏教を伝えていく時代じゃないかって「higan.net(彼岸寺)」っていうサイトも当初から関わっていますよね。最終的に行き着いたのは、自分がどんなにあれこれやっても限界があるなと。だから、全国に7万もお寺があって。

柿次郎:そんなにあるんですね。

松本:で、お坊さんもそれ以上の数いるわけですから、その人たちがそれぞれうちのお寺でじゃあどんなことが出来るんだろうかということを考えて、どんどんアクションを起こしていったら、もっと同時多発的に変わっていくんじゃないかと思って。ちょっと周り道のようだけど学びの場を作ろうと思ったのが「未来の住職塾」ですね。


日本のお寺は2階建て?

柿次郎:そこにどんどん繋がっていく、活動を経て。結構多岐にわたる活動をして、例えばなんかGoogleであったりとか、スティーブジョブズにハマっていたとか。最近だとわびさびっていう価値観とかが世界中で興味を持たれていってどんどん仏教というものが求められている肌感というか実感って強くなってきていますか?

松本:ただ仏教っていう言葉でくくっているものがちょっと大きすぎるのかなって思っていて。そこを整理する必要があるよねって思っているんですね。最近よく言っているのが「日本のお寺2階建て論」っていうのを(笑)

柿次郎:どういうことですか!?

松本:2階建てっていうのは比喩的な構造として2階建てなんじゃないかと。何かと言うと、全体としては仏教っていう大きな看板を掲げてるんだけど、よくよく見ると中身は1階部分は私の言葉で言うと「先祖教」

柿次郎:「先祖教」??

松本:お墓参りとかお葬式とかあとは法事とか。そういった葬式仏教って言われているような部分ですかね。実際問題として、お坊さんかなりの部分そのことに時間を掛けているわけですね。お釈迦様とか色んな宗派ありますけど。親鸞さん、空海さん、色んな先輩方が墓参りを一生懸命しましょうねって説いたかって、別にそういうわけでもないよねって。ただ、亡くなった方とどう向き合うかってことに関しては一番力を入れてきたのが仏教なのかなって。その部分を1階「先祖教」と言っていますと。でも、それだけじゃなくて2階もあるよねって。2階を何と言っているかというと「仏道」と。

柿次郎:「仏道」?仏の道ですか?

松本:はい、仏の道と言っています「仏道」。日本でもそうですけど、世界の人と会ったときにみんな言うのが、「私は全然宗教熱心ではないんです」と。だけど、「精神性とか心を耕すそういうことを大事にしています」っていうことをみんな言うんですね。それで今すごく仏教に興味があるから教えてくれって言うんですよ。そういう意味では仏教が宗教としてみられていないんですね。この前ロンドンに行ったときに、仏教センターっていうのがあって。

柿次郎:そんなのがあるんですね。

松本:市民がやっているところで来ている人と話していたんですよ。そうしたら、その人は「心を耕したい」と。「それで瞑想したりヨガをしたりそれでここに来ているんです」と言っていて。「じゃあ仏教徒になりたいんですか?」って聞いたら、「全然なりませんよ!そんなこと思ってないです」と。

柿次郎:そこは別なんですね。

人々が求めるのは宗教ではなく仏道

松本:「私は哲学として、実践として、生き方としてこれ(仏教)を学びに来ているんです。」と言っていて、なるほどなと。その2階の部分「仏道」ですねあえて。だから、強く求められているのそっちの2階の部分なのかなと、世界的には。日本では1階の部分、亡くなった方を中心にする世界もかわらず重要であるんですけど、世界的には2階の部分の方が注目されていますよね。

柿次郎:そうなんですね、でも言われてみると納得感がありますよね。1階の部分はある意味、日本人であれば日々当たり前にあるものでみんな触れているとは思うんですけど、2階の哲学的な所を実践するための要素をみんな抜き出して日々の生活にどう役立てようか、心を耕そうかっていう風潮が強くなっていると。

松本:それこそ、その人が何の宗教であってもいいんですよ。別に何か改宗するとかそういうことは関係ないので。

柿次郎:そうかそうか。

*****Dooo*****

柿次郎:まだまだ、紹圭さんのお話をお聞きしたいのですけども。ここで一旦後編に移ります。引き続き「Dooo!」するぞ!Dooo!!!

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