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サタデージャーナルが見てきた2年3か月の日本の政治(2019年6月29日放送)


上田晋也:
おはようございます。2年と3か月にわたってお送りしてきました『サタデージャーナル』。今日が最終回ということになりました。こちらにはですね、先週までの110回、スタジオのセットを飾ってきた写真がずらりと並べられているんですけれども・・・

第1回目がね、森友学園問題でございました。全体を見渡すと、やっぱり圧倒的に安倍晋三総理大臣の顔が多いですね。いろんなテーマを取り上げてきたんですけれども、やはり政治を扱うことが非常に多かったということで、今日、最終回もですね、この番組がずっと追い続けてきた、この国の政治、そして政治化の姿勢を改めて見つめ直してみたいと思います。

*****VTRへ*****

サタデージャーナルが放送を始めた2年前(2017年4月1日)、社会に広がっていたのはこの言葉だった。

「忖度をして動いてきたのではなかろうか」(籠池泰典氏)【2017年3月】

「近畿財務局も、財務省も忖度するでしょう」
(立憲民主党・福山哲郎幹事長)【2017年3月】

国会の中でも外でも飛び交っていた「忖度」という言葉。

なぜ「忖度」は止まらないのだろうか?

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2年前、あっと言う間に広がった「忖度」という言葉。

きっかけは、破格の値段で国有地が売却されたいわゆる森友学園問題だ。

安倍昭恵夫人が、建設予定の小学校の名誉校長に就いていたことなどから総理の関与が浮上。当時、安倍総理は国会で次のように述べ、きっぱりと関与を否定した。

「私や妻が関係していたら、総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい」(安倍総理)【2017年2月】

しかし、この答弁をきっかけに、財務省はあってはならない行為へと手を染めていく。決済文書を改ざんし、交渉記録の意図的な廃棄を行ったのだ。

改ざんの片棒を担がされた近畿財務局の職員は自ら命を絶っている。

当時番組では、職員をよく知る近畿財務局のOBに話を聞いた。

「もう、耐えられなかったと思います。絶対そんなの(不正は)あかんというような、抵抗しているような男でしたから。慮って文書を改ざんするなんて絶対にありえない」(元近畿財務局職員・喜多徹信さん)

「その公務員を動かす大きな力が働いていると思う」
(元近畿財務局職員・伊藤邦夫さん)

“大きな力”とは何だったのか・・・。

なぜ改ざんにまで手を染めなければならなかったのか・・・。
財務省のトップ・麻生太郎大臣は、こう答えている。【2018年6月】

「なぜ答弁を訂正でなく、文書を改ざんする必要があったのか?」(記者)

「それが分かれば苦労しないですよ。それが分からないからみんな苦労している」(麻生財務相)

官僚による“政権への忖度”が疑われたのはこれだけにとどまらなかった。
さらに浮き彫りになったのが、加計学園問題だ。

「加計学園ありきで国家戦略特区、諮問会議の決定が行われた動かぬ証拠じゃないですか」(共産党 小池晃書記局長)【2017年5月】

総理の腹心の友が理事長を務める大学に、52年ぶりに獣医学部の認可が下りたことで何らかの便宜が図られたのではないかと国会は紛糾。

なかでも問題とされたのが、“総理のご意向”と記された文書の存在だ。この文書が発覚すると、官邸は全力で火消しに走った。

「全く、怪文書みたいな文書ではないでしょうか。出どころも明確になっていない」(菅義偉官房長官)【2017年5月】

菅官房長官は珍しく感情をあらわにし「怪文書のようなもの」と切り捨てたのだ。しかし、文書の存在を公言する人物が現れ、大きな波紋を呼んだ。それが当時の文部科学省の事務方トップ、前川喜平元事務次官だ。

「これらの文書については、私が在職中に共有していた文書でございますから、これは確実に存在していたわけであります。公正公平であるべき行政のあり方が歪められたと私は認識している」(前川氏)【2017年5月】

事実、当初、文書の存在を認めていなかった文科省はのちにその存在を認めている

“歪められた行政”とは何だったのか。サタデージャーナルは、前川氏本人を直撃した。

「官僚には官僚の役割があって、客観的公平に物事を見て、これがベストだと考えられるような政策を積み上げていく、これは官僚でなきゃできない仕事と思う。今の状況は政治主導というより、官邸一強主導みたいになっている」(前川氏)

官邸に権力が集中する理由。前川氏は、次のような言葉で表現する。

「安倍官邸は官邸官僚と言われる知恵の回る官僚上がりの、あるいは現役官僚がガチッと周りを固めている。その官邸官僚と言われる人たちが各省の色んな幹部職員を常日頃、見ているわけですよね」(前川氏)
 
政権に異を唱えた前川氏は、在職中に出会い系バーに通っていたなどプライベートな行動を報じられた。さらに、菅長官は、強い言葉で前川氏を非難した。

「地位に恋々としがみついていましたけれど、その頃の天下り問題に対して世論からの極めて厳しい批判等にさらされて、最終的に辞任をされた方であった」(菅官房長官)【2017年5月】

38年間、官僚として様々な政権を見てきた前川氏。現在の官僚の在り方は、過去に比べて大きく変化したと話す。

「小泉政権のときには、最後の決定権は小泉さんという人が持っているんだけど、各省の間でかなり激しい議論が出来たんですよ。だけど、今の安倍官邸の官邸主導っていうのは自由な議論を許さない」(前川氏)

上田晋也:
モリカケ問題。テーマだったモリカケ問題、日本の政治の大きな分岐点だったのかもしれないなと思うんですが、今日はね、初回のゲストでも来ていただきました、片山さんにもお越しいただいております。幾度となくお世話になりました。

片山善博:
こちらこそ、どうも。

上田晋也:
片山さん、森友問題では公文書の改ざんという、ちょっと信じがたいことも起こりましたけど、改めていかが思われますか?

片山善博:

私も、かつて官僚をやってましてね、公文書の改ざんなんかを聞きますとね、とっても信じられないことだったんですね。なんで、そんなことするんだろうかと。で、指示はなかったと、だけど、あんな改ざんがあったっていうことになってましてね。これ2年経っても、結局、今も同じ状況でなんにも解明されてないですよね。今後のことを考えますとね、どうしてこういうことが起きたのかっていうことは、ぜひ解明しなきゃいけないんですよね。

上田晋也:
そうですね。そしてね、ミッツさんにも何度もこの番組にお越しいただきましたけれども。この公文書改ざんの経緯にはね、自殺者まで出てしまいました。でも、今、片山さんもおっしゃいましたけど、解明もされていない、そして政治家も誰一人、責任を取っていない。これについては、いかが思われますか?


ミッツ・マングローブ:

2年ですか。2年ぐらい経つと、ある種、のど元過ぎればなんとかみたいな感じで。やっぱり、あの時さえ耐えれば、まあ、いずれなんとなく風化していくんじゃないかみたいな一つの前例を作った・・・作ってしまったことでもあったのかなっていう。

上田晋也:
はい。ということでね、VTRに官邸官僚なんていうね、言葉も出てきました。これね、なんでこういう状態に、龍崎さん、なってしまったんでしょうね。

龍崎孝:

まさに官邸官僚、安倍総理のために政策を実現しようとする官僚。これはね、ある意味、そこに人生をかけてる人たちなので。私は、ある意味、いてもいいのかもなと思いますね。ただ問題は、官邸官僚であるならば、官邸に何かあれば堂々と責任を取って辞めるべきであろうし、もっと言えば、安倍官邸が変われば役所の世界から去ってほしいし。それが、ずっと常態化したままい続ける。こういうことが常態化してるということは、やはり官僚の正常なですね、機能を失わせる大きな原因だと思いますよね。まさに、官邸そのものに問題があるというふうに私も思いますよね。

上田晋也:
なるほどね。片山さんはね、元官僚で、そして大臣も務められましたけれども、この官僚のあるべき姿、そして政と官の距離っていうのは、どうあるべきだと思われますか?

片山善博:
最終的にはね、やっぱり国民の代表である政治家の人たちが決めることですよね。これは、国の方針もそうだし、各省の方針もそうですよね。だけど、最終的に決める前に、やっぱり徹底した議論がなきゃいけないですよね。そのときに、政治や行政に、官僚の人たち長く専門的に携わってますから、貴重な意見とかデータあるわけですよね。それを政治家の皆さんもちゃんと汲み取って、そのうえで判断過たないようにしなきゃいけないですよね。

上田晋也:
片山さん、ちなみに民主党時代の政と官の距離っていうのは、思い出して、どんな感じだったと思われますか?

片山善博:
これもね、問題がいっぱいありましたね。

上田晋也:
あっ、そうですか?

片山善博:
最初、鳩山政権でしたよね。このときはね、もう記憶に新しいと思いますけど、官僚を排除したんですよね。政務三役という大臣、副大臣、政務官で物事を決めて、幹部の官僚も排除したんですよね。で、官僚は大臣室で何やってるのかなっていうのを聞き耳を立てるような。これ、とってもね私、官僚の人たちのプライドを傷つけたと思うし、それから国家にとっても損失だったと思いますね。

上田晋也:
なるほど。片山さん、これまでの政治主導と安倍政権の政治主導。決定的な違いっていうのは、どの辺なんですかね。

片山善博:
ずっと前から、官邸主導っていいますかね、政治主導に持っていこうっていう動きがあって。それが完成したころに安倍政権なんですよね。確かに、官邸に権限が集中するようになったんですけど、あまりにもそれが強すぎて。反面、各省がものが言えなくなった、自由な考え方を述べることができなくなった。で、官邸のほうを顔色ばっかり見て。官邸が好むような政策は持っていくけれども、そうではないものは、じっと黙っとく。官邸からなんか出てくると、吟味もしないで、そのまま「これ、いいんじゃないか」と言って、やってしまうと。「なんでも官邸団」とかっていう、ことを言ってる人もいるぐらい。これですとね、私ね、霞が関の官僚集団っていうのは、とっても優秀な人たちが一種のシンタクタンクのような存在・役割があったんですけど、そういうものが、最近なくなってしまったなっていうことで、とても残念ですし、日本の国にとっても、官僚のいいところを使わないっていうのは大きな損失だと思いますよね。

上田晋也:
ですからね、龍崎さん、今も厚労省の統計の不正ですとか、防衛省のずさんな調査とか、いろいろと出てきますけど、やはり、ちょっと官僚がやる気をなくしちゃってるみたいなところが大きいんですかね。

龍崎孝:

それは当然あると思うんですよね。すでに政策が決まってることが多いわけでしょ?官邸のほうから、こういう方向だと。結果が先にあって、調査なんかどうでもいいんです。どうでもいい調査をやらされてれば、それは正確性に欠けても仕方ないといいますかね、そういうことが起きてくると思いますよね。

古谷有美:

物申せない空気は霞が関だけでなく自民党内にも広がっているようです。自民党が政権を奪還してから6年半。数々のドラマを生んだ権力闘争は、なぜ今起こらなくなってしまったのでしょうか。

*****VTRへ*****

「世界の真ん中で輝く日本をともに力を合わせて作り上げていこうではありませんか」(安倍総理)【自民党大会(2019年2月10日)】

「安倍総裁を先頭に我々の手で新たな時代を切り開いてまいりましょう」(自民党 小野田紀美参議院議員)【自民党大会(2月10日)】

安倍氏が総裁に返り咲いて6年。安倍一強といわれる自民党でいま何が起きているのか?

「ファイト・オン・シンゾウ! ファイト・オン・シンゾウ~!」
【総裁選決起集会での音頭(2018年9月)】

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いまや「安倍一強」となった自民党。“あったものをなかったことに”それは自民党内でも起きている。

”公文書の改ざん”が発覚した森友学園問題。当初、筆頭副幹事長をつとめていた柴山昌彦氏は党の会合で・・・

「国会における総理の答弁が少なくともきっかけになったことは紛れもない事実であろう」(柴山氏)【2018年6月8日】

官僚が”公文書を改ざんしたきっかけは総理の答弁だった”との認識を示していた。ところが、そのわずか2時間後・・・。

「誤解を与えるような発言で報道のみなさまにもご迷惑をかけたのかなと」
(柴山氏)

他にも総理の発言をめぐってこんな不思議なことも起きた。当時の衆議院予算委員長、河村建夫氏は総理との会食後・・・

「『(総理は)予算委員会お手柔らかに』ということでした。もう集中審議は勘弁してくれと言うから、なかなかそうもいかないでしょと言っときましたけど」(河村氏)

笑顔で安倍総理の発言を披露したが批判の矛先が総理に向くと、その翌日には・・・

「予算委よろしくねという感じの挨拶があったことは事実ですが『勘弁してほしい』という言い方は一切、総理からはありませんでした」(河村氏)とすぐさま撤回したのだ。

”安倍総理に都合の悪いことはなかったことにする”。それは、2018年に行われた自民党総裁選でも・・・。

「別に人を(安倍総理を)批判するなんて全くないのでそういうふうにとらえられるとすればそれは変えることもあるでしょう」
(自民党・石破茂元幹事長)【2018年8月25日】

安倍総理の対抗馬として出馬した石破氏だったが、掲げたキャッチフレーズの「正直、公正」について「安倍総理への個人攻撃」だと指摘され「撤回検討」まで追い込まれた

本来、権力闘争の極みである自民党総裁選でさえ、この有様だったのだ。

総裁の任期は2期から3期に延長された。この6年半で、2度行われた総裁選だが、1度目(2015年)は無投票。

2度目(2018年)は、“ポスト安倍”の有力候補と目された岸田文雄政調会長が選挙の直前、安倍総理と直接会談した後、出馬を取りやめた。

唯一立った石破氏は地方票を稼ぎ善戦と言われたが、フタを開けてみれば議員票では完敗だった。

そして「4選」という言葉まで、まことしやかに囁かれたのだ。

こうした状況について、かつて小泉元総理と共に古い派閥政治に立ち向かったこの人、山崎拓元副総裁に話を聞いた。【2019年6月】

「権力志向の塊が政治家の特徴ですからね。小泉元首相もね、3度目の正直だった。権力闘争やる以上は命がけでやらないとね」(山崎氏)

「先生など、OBからの喝が必要なのでは?」

「そう言われると責任を感じますけどね・・・」(山崎氏)

山崎氏は、権力闘争があったかつての自民党と現在の違いについてこう指摘した。

「今ドラマがないです。だから面白くないんですよ。ロマンティックと言ったら不謹慎ですけど、たった一回きりの人生の中でそれを喜びとし、楽しみとし、失望しですね。また立ち上がってくる(政治家に)対しては拍手を送るというドラマ性があった方が民主主義的だと思う」(山崎氏)

上田晋也:
ということでね、龍崎さん、命がけで権力闘争をする政治家が自民党にいなくなったと。これ、なぜなんでしょうか?

龍崎孝:
私から見ると、彼らはもう情けないの一言では、もちろんあるわけですけれども。ただ、やはり、彼ら自身に怖さがあるというのは権力闘争をやることによって、つまり自民党そのものが世論の批判を浴びて、政権を失うきっかけになっていっては怖いと。ある意味、国民の目を異常に気にしている。そのことが、やっぱり一向にポスト安倍が育たないっていうことにもつながってるかなと思いますよね。

上田晋也:
片山さん、いかがでしょう?このね、俺が総理になるんだ、トップになるんだという気概を持った政治家が今、自民党から出てこないっていうのは非常に残念なことだなと思うんですが。

片山善博:
残念ですね。サラリーマン的って言いますかね、保身が非常に重要である。保身に走る人が増えた。私は政治っていうのは、やっぱり権力闘争っていうのは景気は強いと思うんですよね。もちろん、それは国民のためにいい政策をするためには自分が権力の座に就かなきゃいけない。そういう意味で、権力闘争をやるわけですよね。これ政治の本質ですよ。

上田晋也:

別にこれは政治に限りませんよ、文化だってそうですしね、文明・・・例えば、じゃあ、お店に並んでる商品だってなんだってそうだと思いますけど。なんでも、まずは1人の熱狂から始まるんですよ。その多分、熱狂が僕、ないんだろうな。だから、周りもそんなに付いていかない。いや、俺が、この国変えるんだ!トップになるんだ!っていう熱狂があれば、分かった、じゃあお前の力になろうじゃないかっていう人も、僕は出てくるんじゃないかな。だから、逆に言うと、僕は、やっぱ安倍総理の熱狂っていうのはすごいんだろうなと思うんですよ。やっぱりね、第一次安倍政権は志半ばでね、退陣っていうことになって、いや、もう1回、憲法改正するんだでも、なんでもいいんですけど、その熱狂にみんながワーッとついてっての今のこの状況なんだろうなとは思うんですけどね。

古谷有美:

さあ、番組をお伝えしてきたこの2年間で一瞬だけ権力闘争の風が吹いたことを、皆さんは覚えているでしょうか?それが、こちら。小池旋風でした。あの熱の正体は一体なんだったのかを読み解きます。

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2017年、永田町を揺るがす風が東京で吹き荒れた。都議選での“小池旋風”だ。

「古い議会を変えてまいりましょう!」「古い議会から新しい議会へ変えていこうではありませんか!」(小池百合子氏)【2017年6月】

都議会自民党を「古い議会」と糾弾。「新しくする」と改革を訴えた小池氏の姿に多くの都民が熱狂した。

これに危機感を募らせていたのは安倍総理だ。“モリカケ問題”や閣僚や議員の失言、暴言などで支持率が低下する中、街頭演説に立つと・・・

「安倍辞めろ!安倍辞めろ!」

「こんな人たちに皆さん、私たちは負けるわけにはいかない!」(安倍総理)【2017年7月】

抗議の声をあげる人を「こんな人たち」という言葉で批判。

この発言もあってか自民党は都議選で歴史的大敗を喫したのだ。

「安倍政権に“ゆるみ”があるのではないかという厳しいご批判があったんだろうと思います」(安倍総理)

一方、小池氏率いる都民ファーストは公認候補50人中49人が当選する大躍進。多くの“小池チルドレン”が誕生した。

強い自民党に立ち向かう小池氏は“一強政治”に対する不満の受け皿となったのだ。これは、あの時の現象と重なる。

「この自民党の派閥論理こそ、ぶっ壊さなければならない」
「私は自民党を変えたい!自民党を変えれば必ず日本は変わります!」
【2001年】

“自民党をぶっ壊す”と訴え、国民を熱狂させた小泉純一郎元総理だ。

「私の内閣の方針に反対する勢力、これはすべて抵抗勢力だ」(小泉元総理)【2001年】

明確な敵を作って立ち向かう「劇場型選挙」で自民党を圧勝へと導いたのだ。

小泉氏譲りの手法で旋風を巻き起こした小池氏。都議選からわずか2か月後、衆院解散の直前に新党(希望の党)を結成。国政でも躍進するかと思われたが突如、失速する。原因は小池氏自身のこの発言だった。

「排除されないということはございませんで排除いたします」(小池氏)【2017年9月】

理念の異なる人物を排除するという発言で追い風が一転、逆風へ・・・。
小池新党は惨敗。今も“安倍一強”の政治が続いている。

上田晋也:

ということでね、小池さんが都知事になる直前ぐらいからですかね、一時期は本当に、もう一番メディアが取り上げる政治家だったと思いますし、国民の期待も大きかったと思うんですけど。あれだけの現象を見ると国民の安倍政権支持っていうのも、決して強い支持ではないのかな。だから、1人出てくれば、そっちにウーッといっちゃう感じもあるんだなとは思いますけどもね。

ミッツ・マングローブ:
やっぱりその真新しさだったりとか、コントラストみたいなもので人の感情っていうのは動くから。だからこそ旋風っていうわけで。

上田晋也:
ただ、あの一時期の・・・瞬間風速と言うんでしょうか。あれは、やっぱり国民が、そのね、小池さんが強い自民党に立ち向かう、その姿に引きつけられたっていうことなんですかね。

龍崎孝:
有権者の人たちは、やはり権力を持ってる人をたたくという、挑戦していくという、そのなんていうか、非力な人が立ち向かっていく姿に共感を覚えたっていいますか、胸を躍らせたんだと思うんですね。でも、希望の党で起きたことは自分が権力をほしい、取って代わりたいっていうことだけなんじゃないかっていうふうに映った。

上田晋也:
それで風やんでしまったと・・・。

龍崎孝:
同じ権力者になりたいだけじゃないかと。こういうふうに見えたということだと思いますよね。

上田晋也:
ただ皮肉なのがね、自民党に立ち向かうというね、ことで立ち上げた、あの党も、そのね、非自民のホープだった細野さん(細野豪志衆院議員)も自民党の二階派入り、そしてまたね、長島さん(長島昭久衆院議員)も自民党入りというような。なんかそうなってくるとね、なんかもう、どんどん国民の選択肢が狭まっているような感じもするんですけどもね。

ミッツ・マングローブ:
だから、なんか権力を上っていくための何かメソットというかね、方法論として1回、対立の構造の向こう側にいくとか。カラクリがばれちゃったみたいなとこがありますよね。

上田晋也:
ただね、そうなっていくと、どんどん・・・。さっきね、山崎拓さんも危惧なさっていましたけども、国民のね、政治に対する関心が薄れていってしまうっていう部分もあると思うんですが、それではやはりね、いけませんしね、龍崎さん。

龍崎孝:
そうなんですね。だから、この安倍政権もそうだと思いますし、それから小池さんもそうだと思いますけど、排除・・・小池さんであれば排除。それから安倍政権でみれば、かつてはお友達と言いましたけども、えこひいきみたいなこと。これ本質は一緒だと思うんですよね。こういう政治が続くと、これを否定する人も、また同じことをせざるを得ないわけですよね。その繰り返しの不毛の政権交代みたいなことがですね、これから起きてくる心配があるっていうことだと思うんですよね。その繰り返しの不毛の政権交代みたいなことがですね、これから起きてくる心配があるっていうことだと思うんですよね。

古谷有美:

さあ、ウィークリーのマガジン型報道番組としてお伝えしてきました、この『サタデージャーナル』。最終号は今週1週間の政治をまとめました。

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【2019年6月23日 平和記念公園 沖縄・糸満市】

「73年の月日、守ってくれてありがとう」(女性)

沖縄戦終結から74年 「慰霊の日」。

「復帰から47年の間、県民は絶え間なく続いている米軍基地に起因する事件・事故・騒音等の環境問題など過重な基地負担による生命の不安を強いられています」(沖縄県 玉城デニー知事)

「沖縄の方々には、永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいております。引き続き『できることはすべて行う』『目に見える形で実現する』との方針の下沖縄の基地負担軽減に全力を尽くして参ります」(安倍総理)

「うそをつけー!」「やめれ~!」

週明け、国会では・・・。

「あなたはなぜ、予算員会に出て来ないのでしょうか」
(立憲民主党 福山哲郎幹事長)

国会では安倍総理への問責決議案、内閣不信任案が提出された。

「安倍総理、そんなに予算委員会に出席したくないのなら総理をおやめになればいい」(福山氏)

「この安倍政権において起きた様々な問題点はまさに、長期政権のおごりや緩みから露呈したものと言わざるを得ません。そこに本質的な問題があるのではないでしょうか!」(立憲民主党 白 眞勲議員)

一方与党からは・・・。

「政権交代から6年余り。民主党政権の負の遺産の尻ぬぐいをしてきた安倍総理に感謝こそすれ、問責決議案を提出するなど全くの常識外れ、愚か者の所業とのそしりは免れません。野党の皆さん、もう一度改めて申し上げます。恥を知りなさい!」(自民党 三原じゅん子議員)

「安倍総理の外交手腕は例を挙げれば枚挙に暇がございません。これだけ世界を動かした総理大臣が、かつていたでしょうか皆さん。あの悪夢のような時代と今の時代を冷静に比べ、安倍内閣の良いところは素直に受け入れ、仮に足らざることがあるとすれば、建設的な議論で、政府与党をリードするぐらいのやる気や知恵をみせていただけないでしょうか」
(自民党 萩生田光一議員)

問責決議と内閣不信任は反対多数で否決される。

「安倍内閣不信任決議案は否決されました」(大島理森衆院議長)

しかし“老後2000万円問題”など多くの課題は残ったまま国会は閉会。

「週末の世論調査で、例の2000万円の報告書を麻生大臣が受け取らなかったとこに納得できない人が7割に上っていますが」(記者)

「そういったご意見があることは理解していますけど。少なくとも朝日新聞の世論調査で、内閣支持率どこまで下がりました?」(麻生氏)

「数パーセント」(記者)

「ほとんど下がんなかったろ。その年金が影響しているのと内閣支持率が変わっていないというのはどれくらい考えるんですかね。どう考えるんですかね?どう考えるのか聞いているんだよ、俺が」(麻生氏)

「分析しきれていないです」(記者)

「ふふふふふ」(麻生太郎氏)

国会閉会後、安倍総理は・・・

「12年前、夏の参院選で自民党は歴史的な惨敗を喫した。国会ではねじれが生じ、混乱が続く中、あの民主党政権が誕生しました。悔やんでも悔やみきれない。12年前の深い反省が今の私の政権運営の基盤になっています。きたるべき参議院選挙、最大の争点は安定した政治のもとで新しい時代への改革を前に進めるのか、それとも再びあの混迷の時代へと逆戻りするのか、であります(安倍総理)

G20開催、そして参院選へ・・・

上田晋也:
そうですね。片山さん、国会は粛々と終わりまして、安倍総理はね、外国の首相をもてなし、そしていよいよ選挙戦へと突入しようとしていますけれども。どのように今、この現状を受け止めてらっしゃいますか?

片山善博:
さっき麻生副総理が、とても興味深いこと言われてたんですね。年金のあの報告書を受け取らなかった。国民の間で7割も、あれに対して否定的ですよと。そしたら、だけど内閣支持率下がってないでしょと。このカラクリはどうだ?って逆に質問されてましたよね。そこが今、1つの政治のポイントだと思うんですね。やっぱりね、じゃあ、あと誰がやるんですかと。政権が変わったときに自民党の中がさっきの話のように、なんかみんなすくんじゃって出てこない。野党はバラバラで国民の支持も低い。ここがやっぱり、今の政治の閉塞感のある原因だと思うんですね。ですから、自民党の中が活性化する、野党がもっとちゃんと国民の信頼を得るような、そういう政党になる。そういうことが、これからの政治の課題だと思いますよね。

上田晋也:
ただね、その麻生さんの発言ですけど、例えばね、支持率が高いとか、選挙で勝ったからいいだろ。それでね、全て受け入れられるっていう考え方もどうなのかなとは思うんですがね。

ミッツ・マングローブ:
まあ、結果よければってところなんでしょうけども。やっぱりその盤石な中でちゃんと議論されて新しいものが出てこないと、本当の新しい価値観っていうものは、その後、根付いていかないだろうと思うから中身っていうものを、もうちょっとね、ちゃんと見えるようにしていただきたい。

上田晋也:
龍崎さん、この番組ではね、沖縄の問題もたびたび取り上げさせていただきました。先ほどVTRにもありましたけど、慰霊の日のね、式典の最中に怒号が飛び交う異例の事態になりましたけど。ああいうのを見ても、やはり行き場のない声が向けられているのかなと感じますね。

龍崎孝:

これは本当に最大限の努力をして安倍政権、解決していかなきゃ問題だと私は思うんですよね。その一方で、岩屋大臣(岩屋毅防衛相)のご発言でしたけれども、沖縄には沖縄の民主主義がある、国には国の民主主義がある。つまり自分と意見の合わないものは異質なものとして排除をしていくような、そんなような発言。これはですね、やはりとんでもない間違いだと思いますよ。そして何より、なぜ・・・もし異質であると、仮に彼らが思うとするならば、なぜそういうものを生んでしまったのかっていうものを真剣に考えて、それを、また中に取り戻していく。中に受け入れていくっていうのが国会議員の仕事であり、国の政治の仕事であるのに、それを切り捨てるかのごとく閣僚が平然と言う。これもですね、国会議員としての、やはり、広い知見や、優しさや、思いやりや、そういったものが全く欠けているなと、これもまたガッカリした発言ですね。

上田晋也:
片山さん、今後の日本の政治は、どうあるべきなんでしょうね。

片山善博:

やっぱり自由に物が言える。それは、どういうことかっていうと、権力に対して、政府とかに対してですね、ちゃんと説明してくださいよと文句を言う権利ですよね。それに対して、権力は、ちゃんときちっと説明しなきゃいけないんですよね、自分たちがやったこと。任されてるんだから、任されたことを、ちゃんと国民のためにやりましたよっていうことでレスポンスしなきゃいけないんですよね。それが最近ないですよね。予算委員会開かないとか、それから、なんかもう議論は終わったとかで済ませてしまう。そうじゃなくて、本当に大方の人が納得できるように、ちゃんと説明しなきゃいけない、説明責任を果たさなきゃいけない。今度の参議院の選挙なんかもですね、本当はこんなことが争点の一つにならなきゃいけないんだろうと思うんですよね。

上田晋也:
なるほどね。龍崎さんは、いかが思われますか?

龍崎孝:
やはり野党の意見をどうやって受け入れて、それが国民全体の大きな意見にまとまっていくという、そういうですね、度量を自民党はもう一度、取り戻さなくちゃいけない。やっぱり自民党は多数であるがゆえに謙虚に受け止めて、野党の意見を受け入れていくという、そういう国会運営をしていかないと殺伐とした政治が、このままでは続いていくと思いますよね。

上田晋也:
なるほど。さあ、そしてね最後になりましたけれども、古谷さんね、111回もいろいろと細かいね、きれいな字で書いていただいて・・・

本当にお疲れ様でございました。

古谷有美:

書くのが大好きなので、しゃべるより、ちょっと向いているかなと思いました。

上田晋也:
なんか、特に書いてて印象深かった思い出深いこととかってある?

上田晋也:
そうですね、一番書いた言葉は実は2つあるなと思っていて。「安倍総理」というワードと「国民」というワードだった気がしますね。

上田晋也:
なるほど。

古谷有美:
はい。やはり、それだけ皆さんの議論の中で、その言葉が出てきたということもありますし、書いていて、やっぱり不思議に思ったのは、安倍総理は国民の上でもなければ下でもない国民の1人なわけですよね。ただ、議論の中で、どうしても国民と安倍総理という存在の間に、すごく遠い距離を感じることがありましたので、なんだか不思議な気持ちで、いつも板写はしました。

上田晋也:
うんまあ本当に、そことの関係性というか問題っていうのをね、しょっちゅう取り上げてきたといってもね、過言ではない番組かもしれません。それでは、議論をまとめましょう。

上田晋也:

この番組、今日が最終回ということになりました。世の中のさまざまなことについて視聴者の皆様に、ほんの少しでも問題提起ができればいいなという思いで毎週お送りしてきました。あくまで、私個人の考えになりますけれども、今世界がいい方向に向かっているとは残念ながら私には思えません。より良い世の中にするために、今まで以上に一人ひとりが問題意識を持ち、考え、そして行動に移す。これが非常に重要な時代ではないかなと思います。そして、今後生まれてくる子どもたちに、いい時代に生まれてきたねと言える世の中を作る使命があると思っています。
私は、この番組において、いつもごくごく当たり前のことを言ってきたつもりです。しかしながら一方では、その当たり前のこと言いづらい世の中になりつつあるのではないかなと危惧する部分もあります。もし、そうであるとするならば、それは健全な世の中とは言えないのではないでしょうか。最後に、また当たり前のことを言わせていただこうと思いますが、私は政治、そして世の中を変えるのは政治家だとは思っていません。政治、世の中を変えるのは我々一人ひとりの意識だと思っています。皆さん、どうもありがとうございました。