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「福祉実験ユニット『ヘラルボニー』の双子の兄弟が挑む新しい福祉と社会のつなぎ方」松田崇弥さん文登さん(前編)

柿次郎:
今回のゲスト、株式会社ヘラルボニーの双子の兄弟、松田崇弥さんと文登さん!宜しくお願いします!

崇弥&文登:
宜しくお願いします!

今日のゲストは双子の兄弟、松田文登(ふみと)さんと崇弥(たかや)さんです。

4歳上の兄が自閉症であることからも幼いころから福祉が身近にあった二人は、2018年、障害のあるアーティストの作品をプロダクトにして世の中に発信する会社「ヘラルボニー」を岩手県で立ち上げました。
そのミッションは「異彩を放て」

崇弥:

前編では、「ヘラルボニー」といった聞き慣れない会社名の由来から、松田さん兄弟の目指すべき福祉とアートの融合した姿などたっぷりお聞きします。


「ヘラルボニー」福祉実験ユニットとは

柿次郎:
どっちがお兄さんなのか、弟なのかということ含めて、自己紹介お願いします。

崇弥:
じゃあ、僕が。一応3分違いの弟なので、あの、一応社長をやらせてもらっている・・・

文登:
僕が、ヘラルボニーの副社長をやっていて、松田文登といいます。一応、3分しか違わないんですけど、今回一番最初にこっち(弟・崇弥)が「会社をスタートする」と言ったところからこっちが社長をやっていて。

柿次郎:
そんなことからなんだ。なるほど、なるほど。お二人兄弟で、双子でやっていて、どういう会社なんですか?「ヘラルボニー」って。

崇弥:
ヘラルボニーは「福祉実験ユニット」というふうに言わせてもらっているんですけど、今、日本全国の福祉施設でアート活動やっているところがあるんですけど、そこと、アートマネージメント契約っていうので、いろいろなところと契約を結んでいて、そこから生まれた作品を商品にしたりだとか、建設現場の仮囲いに落としたりだとか、オフィスに落としたりだとかっていう活動をしている会社です。






柿次郎:
今回商品をね、それ見ながら説明したほうが・・・

崇弥:
今度トゥモローランドとかと・・・

柿次郎:
トゥモローランド!あのかっこいいアパレルブランド・・・

崇弥&文登:
はい!ハンカチとかですね。


柿次郎:
かっこいい!

崇弥:
ありがとうございます。自社で「MUKU(ムク)」というブランドをやっていてそういった作品というものを商品にして販売したりしています。

柿次郎:
どういった方が書かれている?まさに福祉の視点で・・・

崇弥:
そうですね。自閉症とか、ダウン症といわれる先天性の知的障害がある方が描いた作品が非常に多いです。

柿次郎:
はぁーっ、めちゃくちゃかっこいい!!

崇弥:
そうなんですよ。これは「息吹き光」っていう作品でとにかく画面を埋め尽くすことが大好きなこだわりを持った方が書いた作品です。

柿次郎:
そうかそうか、やっぱり感覚すごいですね、割と思い込んで、こうあらないといけないと僕は絵を描くとそうなっちゃうんですけど、夢中になれるっていうか。自分の世界をそのまま再現できる能力がある。それをアートにして、それを作品にして、手にとりやすい形にして、「MUKU」というブランドで売っている。

松田崇弥&文登:
そうです!!

柿次郎:
僕が全部説明しちゃいましたけどね。笑・・・ハンカチ以外にもいろいろ?

崇弥:
そうです。もう自社でネクタイとかを販売していたりたとか、いろいろな商品があります。


起業した理由

柿次郎:
何かこういうものを作るっていうのも色々理由があってやっていたりすると思うんですけど、そのまぁ、そもそも、どういう経緯で会社を創ったのかとか。

崇弥:
僕らは双子なんですけど、双子の4つ上の兄が自閉症という、先天性の知的障害をもっていることもあって・・・

とか謎に言われていたりして。

柿次郎:
それはなかなか謎ですね。

崇弥:


出身は岩手県

柿次郎:
お兄さんの・・・ご出身が岩手!盛岡?

文登:
岩手の金ヶ崎町っていう。めちゃめちゃドニッチな感じ。

柿次郎:
なるほど。笑・・・花巻とかあっちよりですか?

文登:
そうですね。10キロくらいですかね。

柿次郎:
割とローカルというか、どっちかというと、東京よりも田舎の方が、思い込みというか強かったりするわけですよね。そこでの体験から「そんなわけねえだろ」と。お兄ちゃんのやってることすごく面白いしと。そこがまぁ結構最初の体験にあって、それをじゃあ事業にしようと思ったのはいつぐらいなんですか?


障害のある人のアートをパブリックな場に

崇弥:
えっと・・・3、4年前に、自分たち会社に勤めていたんですけど、その時に母親が結構こういう活動に積極的で。「自閉症協会」に入っていたり。それで何か東京から岩手に帰省したときに・・・

と言われて、行ってみたときに、非常に衝撃を受けたというか。

これはもう、イメージを変えられるんじゃないかってすごく思って、文登にすぐ電話をかけて「やろうよ!」と


文登:
そこから色々リサーチかけたら、調べてみると、実はこれって、福祉業界内でしか、盛り上がってないらしいっていうのが何となくわかって。だとしたらこんなに素敵なアート作品があるのに、福祉業界だけで展示をやるだとか、カフェでやるだとか、そういうのももちろん良いんですけど、もうちょっと、パブリックな場に、彼らのアートを持っていくことで、もっと高い位置、視点を変えることが出来るんじゃないかと思っています。

柿次郎:
普通にかっこいいから・・・可能性もあるし、福祉とかそういうくくりの中でやるだけじゃなくて、外に持ち込んで。ある種これもトゥモローランドで販売するっていうのは・・・あんまり今までなかった?

崇弥:
そうです。トゥモローランドさん、「初めてだ」って仰っていたので。ただ全然障害っていうのは関係なく、普通にデザインとして、販売されているので。いい形だなと。

柿次郎:
そっか、そういう文字とか使ってないんですね。

崇弥:
そうです。あえてキャプションとかが入るわけではなく。

柿次郎:
あくまで一つの作品として、どうだ、と。それが売れている、とのうわさを聞いているんですけど?

崇弥&文登:
そうなんですよ!有難いことに。もっと皆さん買っていただけたら、再販も決まると思いますので。笑


キャッチコピーは「異彩を放て」


柿次郎:
今回これ、ヘラルボニーのかっこいい会社案内があって。

これを拝見すると、すごくやっていることが多岐にわたるわけですよね。そもそもねこのコピーが。ミッションが。「異彩を放て!アソブ、フクシ」。


崇弥:
そうなんですよ。


柿次郎:
異彩っていうのはどういう・・・

崇弥:

っていうので「異彩を放て」というコピーを。

柿次郎:
なるほど。僕、ちょっと前まで東京の山谷っていうところに住んでいたんですけど、住んでいた家の3軒隣りくらいから、何か同じような福祉の施設で、そこの人たちと、とあるカフェがコラボしてアウトサイドアートっていうのはいろいろな解釈があると思うんですけど、初めて触れたんですよ。それがやばくて。何か赤文字って呼ばれる雑誌あるじゃないですか。女性ファッション誌とか。それがすごくその女の子が好きで、赤文字の好きなページを切り抜いて多分。1000枚くらいをケーキみたいに貼り付けて、貼り付けて・・・

固まりにして・・・

その上に、小さな鶴を置いていたんですよ!やばっ!と思って。

文登:
おもしろいですね!

柿次郎:
その一枚一枚も、その子には意味があって、今まで溜めてきたものを固まりにするっていう発想とかって。それはその、主催した人の説明も聞きながら、赤文字のその、僕らにしたら、ジャンプの好きなシーンをずっと集めてて、それを全部貼り付けちゃうノリで。できる集中力とか。その時めちゃくちゃ面白いなと思ったのが、結構衝動としてあったので「これはめちゃくちゃ普通に良いな」と。

文登:
そうなんですよ、本当に。何か彼らにしか描けない視点があるんじゃないかと思っていて。例えば僕の兄とかだったら、カメラで撮影するのが好きなんですけど。例えばこれを僕が撮るっていったら普通に撮ると思うんですけど

兄とかだったら、こう近づけて何が何だからわからないように撮ったりするんですけど・・・

これは兄にとったらすごく面白い視点で。


柿次郎:
そっか、そっか。何かそういういろいろな価値観とか、見方っていうものを、作品にしたり、周りが理解というか受け止めて、それをもう、放つ!笑

崇弥&文登:
そうです!もう、ありがとうございます。喋っていただいて。


「ヘラルボニー」の由来は兄の・・・


柿次郎:
かつ、「ヘラルボニー」っていう会社名自体もお兄さんが・・・

文登:
そうなんですよ、4つ上の兄貴が自由帳に記した言葉でして・・・

柿次郎:
カタカナでね、ヘラルボニーの名前の由来っていうか。字面も超かっこいいんですよね。

崇弥:
これとかが、兄貴が7歳の頃に、自由帳に・・・

柿次郎:
あ!これですね!

崇弥:
そうなんです。これ、いろんな自由帳に「ヘラルボニー」「ヘラルボニー」って登場してくるんですよ。で、大学時代にこれを発見して・・・

でも、いろんな自由帳に登場してくるので、兄貴にとったらきっと何かしら意味のある言葉だったんだろうな、っていうのはすごく思っていて。

でも、そういう自閉症とか、ダウン症の人たちの心根がめっちゃ面白いというか、ワクワクするんですけど、言語化できていないものを「ちゃんと企画して編集して世に出していけたらいいな」って思っていて「ヘラルボニー」という会社名で。

柿次郎:
それはある種、お兄ちゃんの気持ちとかも、代わりにというか、背負って・・・

文登:
そうですね、兄からスタートしているところもあったりしますし、例えば兄がいなかったら、障害のある人に、例えば差別とか偏見のある人もいるとは思うんですけど・・・


障害へのイメージを破壊する

柿次郎:
それをある種、カルチャー的にというか、かっこいいものを・・・


崇弥:
そうですね。いけてるじゃん!みたいな。

柿次郎:
確かに、こうやっても実際にアパレルに使われていたりとか。しかもまぁ、その才能を持っている人が日本にはめちゃくちゃいるわけですよね?


崇弥:
そうなんですよ。今、結構国としても推していて、最近は「障がい者芸術活動推進法」っていう法律が可決して国が推していて。

これは、障害のある人たちの芸術活動に対して、お金をつけていく仕組みになっていて、それこそまぁ、障害のある人たちのアート活動もそうなんですけど、それ以外にもダンスとか、表現活動そのものを世界にも輸出していこうという動きがあって、予算とかもついてかなり・・・。


柿次郎:
それって結構海外とかの方が、そういう分野は早く育っていたりもあるんですか?

崇弥:
はい、それは間違いなくあると思います。

文登:
例えば、ヨーロッパとかだったら、日本はまず障害のある方のアートっていうのが、復興支援に近い形というか、彼らを支援するとか、枠組みの立ち位置が下がっているっていうのがあって、あっちでは、アートとしての文脈でスタートが出来るんですけど、日本とかだと、どちらかというと「彼らが描いているから応援しましょう」みたいな。まず、そこの目線から違うというか。

崇弥:
法律っていうのも、正にその文脈で出来ちゃっているんですけど。アートというよりは「新しい参加機会を促進していこうぜ」という。

柿次郎:
そっか、確かにそもそものスタートラインがアートっていうものが当たり前になっていれば、親御さんとかも最初からもっと「やれやれ!表現したらいいじゃん!」みたいな。

崇弥:
傘とかも、これうちの商品なんですけど・・・

これこの前、福祉の活動自体の成功事例を首相官邸に・・・

あ、ごめん!笑・・・首相官邸に呼んで、安倍首相とかに見ていただくっていう機会もあったんですよ。

で、その時にうちのブランドも呼んでいただいて、実際にこの傘の柄を書いた、工藤みどりさんという作家さんもいらっしゃって、その時に凄く面白かったのが、工藤みどりさんが・・・


柿次郎:
安倍首相に向かって?

崇弥:
安倍首相に向かって・・・(笑)安倍首相も「お兄さん」って言われることなかっただろうな、と思って。

柿次郎:
居酒屋の勧誘みたいなノリで・・・(笑)

文登:
僕ら二人はガチガチに緊張しているんですけど。

柿次郎:
なるほど、何かそういうのを取っ払ってくれるっていう。

崇弥:
はい、すごく思いますね。

柿次郎:
じゃあ結構アパレル的なそういう、しかも、日本の職人的な文化とか、歴史のある企業と一緒に組んだりとかっていうところも大事にしつつ?

崇弥&文登
そうです、吉本さんとも最近一緒にコラボイベントをやって、「アートオークショー笑」っていう「ショー」の部分が「笑い」っていう。

柿次郎
オークション、の?

崇弥:
そうです。オークションをパロディー的に。「オークショー」っていうのを一緒にやって、今度、京都とかでもやるんですけど。結構、障害のある作家さんが集まって、自分で値札を決めて、最低落札価格が「これくらいです!」ってバーンって出して。色々な人が金額を決めてやっていくってやつなんですけど、面白かったのが一発目、浅海さんという人が出ていて、「この金額です!」ってボーンって出した時に「2980円万円からスタートです!」みたいな・・・笑

柿次郎:
高いし、円万円って…(笑)

崇弥:
そうなんですよ。謎なんですけど。でも、それで次長課長の河本さんとかが「それ誰が買うねん!」とか言ってました。

工藤みどりさんのさっきの傘の話もそうですけど、そもそもとして、彼らが全然空気を読まずにバンバン切り込んでいったりするのがすごく面白いな、と思ってて、そういうのをやるイベントです。

柿次郎:
じゃあ吉本は・・・いい会社・・・?


崇弥&文登:
いい会社ですよ!!笑

柿次郎:
まぁ、それはやっぱり福祉というものを言葉としてはいろいろな捉え方は、ね?みんなの常識でちがうじゃないですか、福祉言葉自体が。それはもう、お笑いにも当てはめられるし、いろんなところに・・・。だからもう、可能性がその・・・仮囲いでとか、建築現場の・・・あれですよね?あの「でっかいビル建ちます!」っていう、白い無機質な壁に障がい者の方のアート作品を描くっていう。

文登:
描く!描くというよりはシート張りで高解像度のデータを印刷会社に入れてもらって、そこから張っていくみたいな形で「ソーシャルアートミュージアムを建設現場の仮囲いに作ってってしまいましょう!」という。

柿次郎:
それはこれから?

文登:
今、もうスタートはしていて。

崇弥:
今は渋谷区さんと組んで一緒にやらせていただいていて。

柿次郎:
結構確かに、東京って工事やばいですもんね。今色んな所で目にする機会増えてますもんね。その一環で声をかけられる?

崇弥:
そうです。声をかけていただいて・・・ありがたい話で!

柿次郎:
そっか、そっか、めちゃくちゃいいですね~。


HIPHOPで実現!手話ラップ

柿次郎:
僕もそうなんですけど、ヒップホップがお二人、お好きだということで、晋平太さんという方と手話ラップをやられたと。あれはどういった経緯で?


崇弥:
手話ラップっていうのは、アメリカのエミネムのライブの時に、手話でものすごい勢いで手話を翻訳する、っていうのをいきなりステージに立った女性がやり始めるっていうのが、めちゃめちゃバズってっていうのがあって、晋平太さんから、それ日本でやれないの?みたいな話があって。それをNHKさんに持ち込んで、一緒にじゃあ番組としてもやろうというので、実際にろうの方の女子高生たちに体現してもらった。晋平太さんのラップをその場で手話で表現する。

柿次郎:
それ、すごく高度な技ですよね?

文登:
そうなんですよ。めっちゃ高度で。あらかじめ、すごい打ち合わせを念入りにしておいて・・・

柿次郎:
僕もまぁヒップホップが好きっていうのをある意味、自分が生まれ変わった環境でちょっときついこと、しんどいことっていうのを、乗り越えるための音楽、もともとがその、アメリカで生まれた歴史もあるので。二人もこうやって今日ね・・・。これを見て、一部の人たちが懐かしい!って。これまぁ「リトルマイクロアンダーグラウンド」っていう、すごく有名なバンドのスイケンっていうラッパーのソロアルバム。

崇弥:
車とかでも、高校時代聞きすぎて、母親も「私、SEEDA好きなんだよなぁ」とか言ったりしてましたけどね、二人で聴きすぎてしまって。

柿次郎:
けど、ある種、こういうストリートカルチャーっていうものは定義としては「フレッシュ!新鮮で新しくあり、そしてオリジナルである」。そうでありながら過去にそういう作品というものはリスペクトを込めてサンプリングするっていう。結構ヘラルボニーの活動はそこのエッセンスは凄く・・・

文登:
凄くありますね、確かに。例えばあの、ヒップホップとかでいうと、俺は中学校の頃、母子家庭育ちだとか、不良だったとか、何回服役したとか、そういったのが自分の言葉、パワーになると思うんですけど・・・

柿次郎
いやぁ、すごい。僕はね、めちゃくちゃこちらで上がっちゃったんですけど。笑

柿次郎:
まだまだお二人のお話聞きたいんですけど続きは後編に行きます。引き続き松田崇弥さんと文登さんにお話しをお伺いします。