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“ネット授業”でネパールを救え 日本のベンチャーも全面支援

国会では、外国人労働者を巡る論戦が繰り広げられていますが、日本で今、急激に増えているのがネパール人です。その数、10年前の7倍以上、8万5000人余り。一方で、1年に1000人ものネパール人が出稼ぎ先の中東などで劣悪な環境の中、亡くなっていると言われています。

ネパールの未来を救うため、日本のユニークな教育法を取り入れようという動きが始まっています。

東京大学のお膝元、文京区の本郷。現役の東大生がテレビ画面に向かって授業をしています。インターネットの生中継で国語を教わっているのは沖縄・与那国島の子どもたちです。

日本の最も西にある与那国島。かつては進学塾も無く、学力調査では全国最下位クラスでした。

ところが、7年前に町が授業料を負担し、この塾を始めると、3年後には、いくつかの科目でトップクラスになったのです。

このオンライン授業を各地で展開する会社の代表・松川さん。

「生まれたところが学力を決めるのではなく、そういう(学べる)ところさえ作れば、ちゃんとできるようになって、子どもたちの未来の選択肢が増える」(東大NETアカデミー 松川來仁社長)

この日、松川さんを訪ねてきた男性がいました。ネパール人のライ・シャラドさん(31)。あるプロジェクトを進めています。

「わくわくしてきていますね。どうしたら成功できるか、少しイメージが湧いてきていますので」(ライ・シャラドさん)

ライさんは千葉県のアパートで日本人の妻と2歳の子どもと暮らしています。大学で日本に留学し、東大の大学院を出て、通信大手・ソフトバンクで社員として働いています。

ネパールの首都カトマンズから車で8時間かけて山を登り、さらに歩いて1時間。ライさんのふるさと、エベレスト山麓の村には電気もガスも通っていません。

ライさんによると、学校まで歩いて1時間半かかる上、教育の質は良いとは言えず、公立学校のほとんどの子が中学を卒業できなかったそうです。

そんな中、10歳のころ、ライさんに転機が。優秀な人材を育てるための特別な学校に学費なしで入れる33人のうちの1人に奇跡的に選ばれたのです。

「運が良かった。すごく幸せだったんですね」(ライ・シャラドさん)

 ところがそのころ、故郷の友人たちは絶望的な日々を送っていました。

中学も卒業できず、中東などへ出稼ぎに。過酷な労働環境に友人が2人も命を落としました。それがネパールの現実なのです。

「亡くなったというニュースをFacebookで聞いて」(ライ・シャラドさん)

 そして、ライさんは動き出します。

「僕は彼らを救うことができなかったんです。僕は彼らの子どもたちの未来をつくることができるんじゃないかなということを、そのとき初めて気付きました」(ライ・シャラドさん)

寄付を集め、学校を2つ作りました。今や3時間半歩いて通う子もいる人気校です。授業料が安く、みんなが平等。出稼ぎで与えられた仕事をこなす大人ではなく、自分で考える力を持ち、将来の夢を叶える人物を育てようと考えました。

しかし、たった2校ではネパールの子どものほんの一部しか救えません。そこでライさんは、ネパールで、あのオンライン授業を行おうというのです。ネットで寄付を集め、与那国島にも授業を提供している会社の松川社長が、ノウハウを全面的に提供します。

「学習環境の差を埋めたい。本当に根底は全く一緒だったので」(東大NETアカデミー 松川來仁社長)

ライさんは会社の同僚らとともに寄付を呼びかけていました。首都カトマンズで優秀な先生を雇い、ネットを介した生中継で地方の子に教える・・・。

もっと多くの子どもが良質な教育を受けられます。ネパールの田舎で通信環境を整えること、親や教師、政治家たちの意識を変えること、やることは山ほどあります。

「子どもたちの将来、同じようにならないようにするには、自分が動くしかないという責任感を持っていますね。他の選択肢はないと思いますね。目をつぶって真っすぐいけると思いますね。迷わずに」(ライ・シャラドさん)

 ネパールでは計画に賛同する市長も現れ、インターネットをつなぐための4G通信タワーが完成。来月以降、通信速度のテストなども始まるといいます。準備は、着々と進んでいます。


ニュースが少しだけスキになるノート

(ニュース23 10月30日放送より)