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秋田「いちじくいち」をプロデュース 編集者・藤本智士さん ~後編~

秋田県のにかほ市。鳥海山の麓にある、この長閑な場所で10月6日、7日の2日間にわたって開催されたのが「いちじくいち」です。地元生産者による名産、「北限のいちじく」の販売や全国の飲食店、物販店が出店して大いににぎわったこのマルシェイベント。企画した編集者の藤本智士さんをゲストに、前編では「いちじくいち」への熱い思いや、クラウドファンディングによる運営などについて聞きました。後編も色んな話を聞いちゃいますが、驚くような発言も・・・? (前編はこちらをクリック)

※後編を動画でご覧になりたい方はこちらをクリック↑


藤本:初年度、地元のいちじく生産者の皆さんに協力してもらうといっても、1年目って意味分からないでしょ。なんで(まず)やらないといけないかって、やらないとわからないから。

徳谷:一緒にやってみようと?

藤本:そう。とりあえずやってみて形にするから、それで判断して・・・っていうのが結構、僕のスタンスで・・・そうしないと僕のイメージを共有なんてできるわけがない、と大前提で思っていて、それは偉そうな意味じゃなくて、人の頭の中のイメージなんてやっぱりバッチリなかなか合わないから、特に初めてのローカルな人で。

だからまずはやってみてほしい、協力してみてほしいということでやり、で、その年の反省会みたいなのをやったときに「実はこれくらいお金かけてこんなふうにしてやりました。ぶっちゃけ僕ら赤字ですけど、でも僕は『皆さんのためにやろうとは思ってません』」と。「僕は僕で自分はこういうことをやりたいし、こういうことがあわよくばビジネスにちゃんとなればいいなと思ってやるって。で、それを来年もやろうと思います」と。「ついては皆さんも協力したいと思うなら是非協力してください」と話した。

そしたらこんなに、あんなに自分たちのいちじくを求めて来てくれるとは思わなかったとか、こんなふうにお金かけてやってくれてるんだとか、っていうふうに皆さん言ってくれて。で、最終的になんか今年はこうだったけど、来年は売り上げの何%を君らに渡そう!みたいなことを言ってくれたりとか、なんかやっぱり、そういうやってみて、評価してもらって・・・っていうことの繰り返しで、ちゃんと信頼関係ができていくことだと思うので、「僕たちこういうこと出来るんすよ、信じてください」みたいなやつではなかなか信頼関係ってできないんじゃないかなって。

徳谷:そこ、結構肝ですね。

藤本:うん、やってみて、見てもらって、あかんもんはあかん、いいもんはいいっていう・・・。何かそうしないと、こっちも気持ち悪いから。ほんとに「皆さんのいちじくをねーとか、生産者を助けたいんですー」みたいなのは嫌だなって。うん。

徳谷:そこに今・・・一緒に「Dooo」してくれた仲間、地元のゲストにちょっと入って頂きましょうかね・・・

徳谷:はい、話の流れでね、ゲストに来ていただきました。

佐藤:秋田のいちじく屋の「佐藤勘六商店」といいまして。「いちじくいち」の実行委員のなかで、まあ事務局の・・・

徳谷:偉い人ですね?この「いちじくいち」の偉い人でもあり、この藤本さんと一緒にやろうやっていうのに巻き込まれた・・・

藤本:そうだね、どっちが巻き込まれたのか分かんないけどね・・・若干、俺も巻き込まれた感はあるけどね。

佐藤:はい、それはあります。

藤本:佐藤玲君は代々、いちじくの甘露煮を作ってるんだよね?

佐藤:そうですね。秋田の郷土食であるいちじくを甘露煮にするっていうのが、うちの家業のひとつなんで。

徳谷:四代目なんですよね?

佐藤:はい、四代目・・・

藤本:そう、だからその甘露煮って文化に驚き、甘ぁぁ!とかも含めて。だけどそれを生業にして代々やっているので、彼の作った、彼の佐藤勘六商店が作った甘露煮っていうのは大体「道の駅」とかに並んでたりする。

徳谷:もう3年目じゃないですか。最初藤本さんに(いちじくいちの話)言われてどう思ったんですか?

佐藤:「えーっ!」はすごい思いました。最初、藤本さんが「巻き込まれた」とおっしゃりましたけど、最初、ちょっと面識があったんで、お時間を頂いて、にかほにこういう、「いちじく」っていうものがあって、僕が扱っていて、「のんびり」(過去に秋田県が季刊発行していたフリーマガジン・藤本さんが編集長を務めた)の紙面でちょっと特集してくれないですか?みたいな、お願いのランチをして・・・

徳谷:あー、そうなんですね。

藤本:そんな事あったっけ?

佐藤:笑・・・あったじゃないですか。最初、「うーん・・・」って何か、イエスでもノーでもないような感じで言ってて。そしたら突然、次会った時に「やる。マルシェやんない?」みたいな感じになって。

藤本:あ、そう・・・全然覚えてない。いや、その最初の「のんびり」がどうどうっていうのとか、全然ホンマに、ホンマにごめん・・・何も聞いてなかったかも(笑)

一同:大笑

藤本:マルシェは、本当に突然「やろう」と思ったから。でもそれは本当に玲君に出会ったからで。若い人が・・・もう玲君もそんな若くないけど、でも何か若い人がいるんだ、同世代の人がいるんだ・・・っていうのは、何かすごい自分の中で気持ちが上がった。

徳谷:反響とかはどんな感じですか。その1年目2年目3年目やってみて。

佐藤:やはり、すごいいちじくに対して光が浴びだしてるな・・・っていうのは、すごいビンビン感じるんですよ。

徳谷:ビンビン感じますか!

佐藤:ビンビン感じますね。やっぱり「いちじくいちで使われたやつですよね」とかっていう感じになっていくと、とっても僕らもやる気出るし、うちの元々の商品は割と年配の方向けのパッケージだったんですよ。でもそうやって若い人たちがいちじくに対してちょっと見方変えてくれると、パッケージも若い人向けにしたくなるし。文化として廃れようとしてたのが、もう一回ちょっと・・・また力が入りだしているなっていう、そういうのは感じますね。

徳谷:それをまあ、こういうキャラクターがいたりとか。まあけど、藤本さんやっぱり「ゆるキャラ」とか「ぬいぐるみ」は作らない人なんですよね。

藤本:いやー、別に全然作ったろうかな・・・と思ってますけど。でも何かやっぱりその・・・そもそもこの「いちじくいちを」っていうね、キャラクターなんだけど、やっぱり他の土地のイベントを見てて、何か秋田でもそうなんだけど、秋田市とかでよくやってるイベントとかも、何か妙に「タレントさん呼んできました」とか、その祭り自体の「軸」っていうのはそれではないのにも関わらず、結局、人を寄せたいがために、そういう風な事を・・・まさにタレントさんを人寄せパンダ的に扱ってらっしゃる所とか多いから、そういうのはすごい何て言うかな、「失礼やな」と思っていて、今回のメインはあくまでも「いちじく」なんだから、「いちじくが中心になるようなイベントにしなきゃいけないよな」って思った時に、それなら「いちじくいちを」ってキャラクターを、スターを呼ぶんじゃなくて、「こいつをスターにしていこう!」みたいな。だからこの「いちじくいちを」っていうキャラクターをスターに仕上げていく方が、よそからスターを呼んでくるより良いじゃんと。

徳谷:あ、広島カープみたいな。

藤本:いや、本当にだからこそ、その「いちを」を、今後着ぐるみになってね、何か東京の番組にこう出て行ってくれても・・・なんやったら手足生やしたろかなっていうくらい。

徳谷:なるほど。

佐藤:この辺りが藤本さんが手がけていただいた、僕ら(地元の人)に対してのすごい説得力になる。1回目も正直ね、半信半疑的なところで動いてたけれども、1回目からこういうことやりました。これは行政がやるようなイベントではないよね、「いちじくいちを」のキャラクターを出して、これを前面に軸にするんだみたいな、そういうことって・・・。今までは行政的なものとしか付き合ってないですから。僕ら田舎の人間はね。そういうやり方に対して、段々説得力が出てきて、やっぱり藤本さんの一言一言が、段々分かってくるようになるし。だから僕も(地元の人に)翻訳しやすくなるんですよね。「藤本さんが言ってたことはこういうことなんだよ」って。

藤本:いまや、玲君の仲間たちが本当にちゃんと翻訳してくれるし、本当にこう分かってくれるので、僕自身はそういう意味では年々楽になっている

佐藤:本当ですか。うれしいな・・・

藤本:それが、すごい理想じゃないですか。段々、こう自分でできるようになるわけだから。何かそうしないと「よそ者」の意味はないな・・・って思っているので、それがいちじくいちで1個やれたらいいなっていうのは夢。

*****Dooo!*****

徳谷:藤本さん、気になったニュースを。最近これ面白かったなとか。

藤本:秋田の仕事が多いのでね、今年はやっぱり、あの(準優勝した)金足農業の・・・吉田君のニュースがいろいろ出て、まあ僕この間、金農にも取材に行ったんすよ。

徳谷:あー、そうなんですか。

藤本:結構やっぱり皆さん、自分たちの町とかに誇りを持ちづらいというか、「いやー、もうウチなんて何もなくて」っていうタイプの人が多いじゃないですか。だからこそ柿次郎であり僕でありが、「いやこれメッチャ良いじゃないですか!」とかっていう役割感ってすごい大事だと思うんだけど、でも何か僕のもっと理想って、それを僕らが言わなくても、(地元の人が)自分で気付くって事じゃないですか。

んで、僕がなんで秋田にこんなに来るようになったか・・・っていう一番最初のきっかけって、偶然とある祭りを見たからで。秋田の冬にやっている祭りを偶然、青森からの帰りに通りがかりに見ただけみたいな。で、その時にめちゃめちゃ感動して、「花嫁道中」っていうイベントなんだけど、その年に選ばれた花嫁花婿が馬ぞりでこう峠を上がってくるの。で、すごい立派な家のところの前で降りて、みんなの前で結婚の披露みたいなのやって、最後餅投げしてみたいなもうメチャメチャすごいアットホームな祭りで、見ず知らずの花嫁花婿にメッチャ感動して帰ってきたっていうのがあってね・・・

でこれすごいイベントやなって思って。で、その事を偶然出会ったけど記事にしようと思って、家帰ってからネットで調べたら、ホントそんな傘、蓑、馬ぞりで来るって、そんな昔話みたいな光景やから、「よくこんなものが延々と続いてるな秋田は」と思ったけど、調べたら、割と近年(羽後町の花嫁道中は1986年に初開催)誰かがやり始めたやつだってことに気付いて・・・

徳谷:えー、歴史すごい感じるのに。

藤本:そう、すごい感じるのに。そこにね、要はさ、羽後町って所でやってるんだけど、メッチャ雪深くて、もうホンマに寄せても寄せても降ってくるから、みんなもう完全に雪が嫌いなの。雪がもう「悪」みたいになってるんだけど、もうそれはアカンやろってなって、それで地元の若者たちが「何とかこの気持ちをチェンジしなければ」と思って、それを始めた途端、馬ぞりやから、雪が降らないとそりが滑らないから峠上がれないんだよ・・・なので、あの急にそれが始まってから「うわ、今年雪少ないけど大丈夫か」とか。で、雪降りだして「良かったー今年も馬ぞり上がれるね」って、その嫌いだったはずの雪を自分たちで転換したっていうんですよ。で、ここには「よそ者」が介入してない・・・っていうのにすごく感動したわけ。

徳谷:すごいっすね、それは。

藤本:うん、それがきっかけで秋田に来るようになって、いろんな事やってたけど、僕はやっぱり理想として、自分たちでそういう事に気付く秋田の人が出てくればいいのに・・・ってずーっと思い続けて、で、この夏の金農フィーバーで「出てきたー!」って思ったわけ。

徳谷:あー、なるほど。

藤本:自分達が、秋田県民が、自らあれだけの活躍をして、それにみんなが感動して、で、みんな勇気もらって誇りが出て「ありがとう」っていうのは、やっぱり僕にとっては結構長年の、積年の何かみたいな。「おぉー!」みたいな感じがあるので、だからそういう意味ではもうメチャメチャずっと気になってるニュース。

*****Dooo!*****

徳谷:来年以降も「いちじくいち」多分やる前提だと思うんですけど、もっとこうしていきたいとか、展望とかありますか。

藤本:えっとね、いきなりちゃぶ台ひっくり返すけど、「もう止めたろかな」ってちょっと思ったりもして、いちじくいちを。っていうのを逆にちょっと思ってて。それは、結構3年間こうやってきたじゃないですか。次のフェーズにいくためには、今、結構僕「よそ者」が優位な感じでこれを進めていっていると思うんだけど、やっぱり地元の人たちが本質的にこのイベントをどう思ってるかっていうのをちゃんと聞こうっていうか、ちゃんと知らないといけないなって思ってて、このイベントを本当に地元の人たちが喜んでくれていて、自分たちも「もっと関わっていこう」って思ってくれるなら多分続くと思うんですよ。で、そうじゃなくてもう僕らがそれこそどうしようかなって言ったら自然消滅するんだったら、もう止めてもいいかなみたいな、結構そのいま岐路に立ってるかなって。

藤本:人数は増えてたりするだろうし、盛り上がりもそれなりにあるんだけど、もっとこう本質のところで、本当にこのイベントがちゃんと続いていくものになるかどうかっていうのを見極めたいなぐらいの。うん。

徳谷:じゃあも来年一回止めてみたりとかして、「やってよー」みたいな。

藤本:・・・っていうのもあるかもしれないです。

徳谷:自主的に「来年もやりたいんです」みたいな。

藤本:そういう感じが何か普通に起こってくるかもしれないし、それは分かんないけど、でもそれを投げかけるっていうことはしたいなって思ってる。だから「必ず開催します」っていうのは何か別に、あんまり言う気はないかなっていう感じはある。

もっと言うと(佐藤勘六商店・四代目)佐藤玲君とかは割ともう分かってくれてるから、もっとその外側のいわゆるお客さん達だよね。お客さんってやっぱり享受するじゃないですか皆さん。もうその何かを享受する癖が付きまくってるから、何かに対して不満を述べる・・・っていうことばっかりになってるけど、何かそこをもうちょっとやり取りできる関係性とか、何かやっぱり、そろそろそういう玲君とかの更に外側にいるこの街の周辺の人たちとかと一緒にやれる何かみたいなことに、次ステップアップできると多分いいんだろうなっていう。それができないとあんまやる意味はないかなって。

*****収録終了*****

徳谷:はい、藤本さん、今日はありがとうございました。

藤本:ありがとうございました。

徳谷:ね、「いちじくいちを」・・・(参加したこどもたちの寄せ書きがステージ上に貼られている)

藤本:そうなんです、「いちを」ね。でみんなに今ちょっとメッセージを書いてもらったりと。

徳谷:これは子どもに書いてもらってるんですよね。

藤本:そうそう、何かやっぱりお子さん結構多いでしょう。皆さん家族連れで来てくれるので、何かちょっとこうこの辺で集中してたらお母さんも楽やから。単純にこう何か空気感が良くありません?

徳谷:いや、いいっす。

藤本:演出的にもね。だからすごい好きなんですこういうの。

徳谷:じゃあじゃあ、来年やるかどうか分からないですけど、「いちじくいち」、やれば、楽しみにしててください。ありがとうございました。Dooo!

藤本:俺も。

徳谷:Dooo! Dooo!


※動いて動いて動こう!「Dooo」(ドゥー)は、毎週火曜~金曜の22:30から放送・配信中です。(TBS・動画・Doooで検索してみて下さい)リアルタイムで見られない方はフェイスブックやユーチューブの「TBS NEWS」公式アカウントをフォロー(チャンネル登録)して頂けると、動画で視聴可能です。