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ニュース×デザインの舞台裏①

「news23」がリニューアルして、3か月。きょうは斬新なセットデザインの舞台裏について、担当者の声をお届けします。

「news23」 新セットコンセプト

「23時を形に」「シンプル」「良い違和感」「トーン」「光」…

などキーワードをもとにデザインをスタートしました。金のパイプが流線型を描いてスタジオ全体を包み込むデザインは、人間の多様性、物事を創る無数の要素をモチーフにしています。スタッフ内では壮大に「宇宙」と呼ばれています。何度も演出と打ち合わせをした中で、一つの出来事にも様々な背景や因子があって、物事を多角的な視点で捉え、時には断面を切り取って伝える、一人一人と向き合うような番組を、というような言葉が強く自分の中に残っていて、セットの形状をそこにリンクさせて、美しく表現したいと思いながら空間を構成していきました。なので、多方向から様々な表情をカメラで切り撮ることができるよう、ぐるっと囲ったセットの形になっています。

今回のセットには全面的に和の金色を使っていて、日本人の遺伝子レベルで落ち着いたり、心が豊かになったり、23時にふさわしい色ではないかと考えたのと、小川キャスターに実際会って直感で金(の光)が浮かんだので金色というチョイスになりました。

また照明や電飾で表情が変化して、カメラで毎日違う画面構成を作ることができる、そんな報道セットは新しいし、観てくださる方々にも楽しんでいただけるのではと思います。実は画面で見るよりもずいぶん狭い場所に建っているのですが、カメラで撮ると倍くらい広く感じるような設計を心がけました。映画で用いられるような深いぼけ味のあるカメラも使っていて相乗効果が生まれています。

news23 新セットができるまで

準備期間の前半の約一ヶ月間は、演出が指し示してくれたボンヤリと光を感じる方に向かって、暗闇を手探りで一歩ずつ進むような感覚でした。初回の打ち合わせ時に、いわゆる報道のセットを目指すよりも、確固たる覚悟や意思を形にしたデザインを打ち出さねばならない、というただならぬプレッシャーとワクワク感を覚えました。

産みの苦しみはどの仕事も同じですが、今回一番難しかったのは、演出の「飛んでくれ」という言葉に対して「とはいえ報道、冒険しすぎていいものか…?」という葛藤が大きかったことです。実際に一回目に攻めきれていないプランを作ってしまい、途中でプランをやり直すことになったのですが、そこでさらに納得いくまで演出と想いを交換して、やっとボンヤリしていた光がはっきり見えてきて、やり直せることにホッとしたのが正直な気持ちでした。

普通ならば心が折れる場面だったと思いますが、演出の覚悟を受け取って「やってやるのだ!」と私も腹をくくることができたのです。そこからはここまで積み上げてきたものが一気に形になり、三日後には新しいプランの大枠が出来ていました。ただし、「大胆にして緻密」が信念なので、勢いに任せて踏み外さぬよう他のデザイナーにも意見を聞きながら仕上げの作業を丁寧に進め、カメラさんや照明さんにもアイデアをもらいました。そして彼らの力によってスタジオでセットの魅力を何倍にもしてもらったときの感動、そしてそれが全国にオンエアされる、改めてこの仕事の喜びを感じましたし、「光」のごとくここまで導いてくださったチームのみなさんに感謝が尽きません。

(アックス 宇野宏美)