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「今注目の“電子国家”エストニアに移住して会社を設立した26歳に聞く『エストニアってこんな国』齋藤アレックス剛太さん(後編)

「電子国家」として最近日本でも注目を集めている国、エストニア在住で、
現地で起業もした、齋藤アレックス剛太(こうた)さん。前編ではエストニア発の制度「電子国民」についてたっぷり話を聞きましたが、後編は、実際住んでみたエストニアってどんな国なのか、聞いてみたいと思います。


エストニアは“北欧”の国

ミイナ:
エストニアって日本でも最近注目をされていて電子国家で日本もエストニアに学ぼう、みたいに言われているのでサイバー国家なイメージがあるんですけど・・・。実際にはどんな国なんですかっていう話を聞きたいんですが、まず場所の確認から・・・。

アレックス:
バルト三国のひとつとして教わる場所ですよね。
  
ミイナ:
ヨーロッパの中でもかなり北のほうですよね。北欧って言っていいんですかね。

アレックス:
一応、国連の定義的には北欧というカテゴライズされる。彼らは自分たちのことをバルティックじゃなくてノルディックって言ってますね。ラトビアと一緒にしないで。僕らは北欧の国なんだ、みたいなプライドを持ってたりします。

ミイナ:
並んでますけど、微妙な違いがある。

アレックス:
そもそもエストニアではエストニア語をしゃべるんですけど、そのエストニア語もフィンランド語と語源が近かったりして、そういったところも彼らがバルティックというよりノルディックのアイデンティティを持つところなのかなと。

ミイナ:
雰囲気はどんな感じですか?住み心地。

アレックス:
冬は寒いんですけど、夏はその分快適でクーラーいらずというか25度くらいが最高気温なので最高ですね。夏の間は。こういう格好で過ごせて、日も長いので夏の間は夜遅くまでバーとかでテラス席で飲んで帰ってきて、みたいな。夏至が6月の中旬なのでそれくらいになってくると午後11時まわってもまだ明るい。日は沈んじゃうんですけど、日が沈んでもまだ明るい時間、それが続いていくっていう。夏至の日。


「電子国家」を感じない暮らし

ミイナ:
エストニアが電子国家というのは住んでいて感じますか?

アレックス:
実は全然感じないんですよ。それがエストニアの面白いところだと思っていて。エストニアの電子国家ってインビジブルなもの、見えないものだと思っていて、例えば外国人が日本に来てマイナンバー制度がどう動いているとか日本の行政がどう動いているのかって見えないじゃないですか。それと同じでエストニアに実際行ったところでも何か電子国家っぽいものが見えるかというと全然そんなことなくて。むしろエストニアの旧市街は世界遺産にも登録されているんですけど、中世の街並みが広がっていて。さながらディズニーランドみたいな感じ。ここきれいだなって思いながら歩いていますね。

ミイナ:
この自然豊かなイメージっていうのがあるんですね。

アレックス:
エストニアの国土の半分以上が森林が占めている・・・エストニア人はハイキングとかピクニックとか大好きなので夏になると毎週末のように「ピクニックに行こうよ」とか「バーベキュー」に行こうみたいな感じで声がかかりますね。

ミイナ:
先ほどエストニアはエストニア語で話されているっていうことだったんですけど、会話は英語ですか・・・

アレックス:

英語ですね。エストニア人は語学が堪能でエストニア語っていうのはあるんですけど小学校の時から英語を習っていて、基本的に自分は業務の時とか日常会話とかは英語。エストニア語が全然上達しないっていう。

*****Dooo*****


3か月後に死ぬかもしれない生活

ミイナ:
これまでの人生でご苦労とか大変だったこととかありますか。

アレックス:
これ言うと怒られるかもしれないんですけど・・・

僕のモットーとして我を忘れるくらいワクワクしながら取り組めることっていうのはいやいややってる人よりもチカラはつくとかスキルはつくとかっていう風に思っていて。

ミイナ:
パワーが出ますよね。

アレックス:
そうなんですよ。そういったところになるべく自分のパワーを集中させるようにしていたというところもあるんで。あんまりないっちゃないんですけど。

アレックス:
ひとつ上げるとするならば、僕大学卒業してから半年間バックパッカーをやってたんですね。そのとき行ったインドで予期せぬ形で野犬にかまれてしまってですね。狂犬病って発症するとほぼ100%死んでしまう病気なんですよね。ぼく狂犬病だけ予防接種打ってなくて

ミイナ:
ええええ。

アレックス:
潜伏期間が3か月から2年くらいあるんですよ。

ミイナ:
めっさ長い。

アレックス:
ちゃんと幸いなことにワクチンとか血清とか打つことができたんですけど、3か月後自分が死ぬかもしれないとかもしかしたら2年後自分が死ぬかもしれないという恐怖と戦いながら日々送ったっていうのは結構しんどい

ミイナ:
一応ワクチンとか打ったものの実際3か月とか2年たってみないと発症するかどうか。

アレックス:
どうかわかんないんですよ。あくまでワクチンっていうのは発症をおさえるための薬なので。

ミイナ:
100%じゃない。

アレックス:
・・・んですよ!

ミイナ:
今もう2年?

アレックス:
2年経ちました。

ミイナ:
もう安心ですか?

アレックス:
安心です。生きてます。

ミイナ:
ほんと良かったですね!

アレックス:
最後にワクチンを打ったときにお医者さんから「これでできることは全部しました」と。

って言ってもらって。さすがにそのときは一回日本に帰ってきました。世界一周を続けることこそが正義だっていう風に思ってたですけど、それって他人の考えた幻想なのかなって思って。自分の状態は冷静に考えたときに、家に帰りたいなって思って。日本でちゃんと治療受けて、日本に帰ってもう一回仕切り直したいなと思ったんですよ。周りのひとから押しつけられてるプレッシャーとか幻想とかあるなと思って、そのときに「自分が生きたいように生きよう」って思ったのが結構ありますね。

ミイナ:
むしろそれに気づかされたっていうことですよね。

アレックス:
心身共に健康っていうのがとても大事なことだっていうのもわかりましたし、

気づくことができた経験でしたね。


デジタルファースト法案成立

ミイナ:
最近気になったニュースとかってありますか。

アレックス:
エストニアのバイアスかかっちゃってるんですけど、日本であってもデジタル政府、電子政府に向けた取り組みっていうのが進んでいるなって思っていてですね。

ミイナ:
遅まきながら。

アレックス:
デジタルファースト法案がいよいよ通過してというところで

5月に成立した「デジタルファースト法」。例えば、引っ越しをする際、ネットで住民票の移転手続きの準備をするとその情報をもとに電気やガスなどの契約変更もできるようになります。また相続や死亡の申請もネットで完結させるなど、行政手続きのオンライン実施を原則とすることで効率化をはかります。

アレックス:
日本が電子政府化するにあたっての準備というのがちゃくちゃくと整っているなっていうのは思うんですよ。エストニアの電子政府というのが理想型ではないと思うんです。

人口規模でいっても1億3000万人と130万なので、差はありますしエストニアの方法論をそのまま日本に適用するのは難しいというのはわかっていますし、僕は行政のプロフェッショナルではなくて、あくまでエストニアっていう電子国家に住んでいる一市民、一国民というところではあるんですけど、やっぱり向こうに住んでいて、電子政府のサービスを享受する中で実際に市役所に何度も足を運ばなくていいとか便利で、自分のやりたいことに集中できるっていう環境っていうのはありがたいなと思っていて、実際に恩恵を享受することができているので、日本がそういう風な形で国民一人一人がやりたいことに集中できるっていう方向に向かっているのはポジティブなことだなっていう風に思っていて。

ミイナ:
いつかデジタルファースト法案の先にエストニアみたいに日本もなっていけると思います?

アレックス:
そうですね。まあ、エストニアが理想型かと言われるとそこは議論を呼ぶところなので言及は避けますけども、そのやっぱり少なくともぼくは今エストニアに住んでいる一人の人間としてすごい生きやすさを感じているのでそういったところに向かっていってくれたらいいのかなというのは思ってますけどね。

*****Dooo*****


若者に伝えたいこと

ミイナ:
若者に伝えたいことありますか?

アレックス:
僕も20代の若者・・・自分で若者って言うのもなんですけど、20代なので本当に偉そうなことは言えないんですけど・・・僕は犬にかまれて自分が追求したい幸せを追求していこう、というところに気づけたと思っていて、日本って色々な人がいて、色んな人からいい影響も受けるし、色んな人からの価値観っていうのをおしつけられる機会も増えちゃうと思っていて。その中で自分の幸せ、自分の価値観を追求していったら、より楽しくてポジティブな人生が送れるんじゃないかなと思っていて。僕はバックパッカーをやったときに自分がどういうときに幸せでどういうときにアンハッピーでっていうのをすごいまじまじと理解することができたんですね。自己分析なのかもしれないですけど、そこの経験から自分がハッピーになることを再現していけばハッピーになるじゃないですか自分がアンハッピーになることを避けていけば、ハッピーになれるじゃないですかっていうようなところで僕は自分の価値観ていうのをちゃんと言語化して定期的にチェックしていますね。

ミイナ:
言語化することも大事?

アレックス:
大事だと思います。価値観って常にアップデートされていくものだと思うので例えば今と5年後の自分で価値観同じかといわれると全然違うと思いますし。その時点での自分の価値観がわかっていると、例えば「なんか最近うまくいってないんだよな」って思ったときにそのなんかっていうのがわからないじゃないですか。でもその価値観に合わせてみると実は「最近自分はスキルの成長が止まっていてアンハッピーだったんだ」とか価値観は人それぞれだと思うのでその自分を振り返ることができる。これから将来何かしらの決断をしていくときに2つの選択肢をその価値観の中で当てはめていって、こっちのAっていう選択をすればこの価値観が満たされる、Bを選択すればこっちの価値観が満たされる。その中で比べていって、僕は実はエストニアに残るか日本に帰るかっていうところも自分の価値観に照らし合わせてじっくり考えたんですよ。独特な取り組みができるとか自分のスキルを伸ばしていきたいというところの価値観にフィットしていたのがやっぱりエストニアだったので、自分で納得感を持って決断することができたのがよかったのかなとは思います。

*****Dooo*****


気になる若手「木村新さん」

ミイナ:
おすすめの若手というか、気になる若手。

アレックス:
一人しいてあげるとすれば木村新という人間がいて、プロのウクレレ奏者なんです。

もともとサイパン出身で僕もウクレレをやるんでその関係であったりもしてた。ウクレレのプロ奏者として音楽だけじゃなくて起業という道を選んで、ウクレレ関連の事業であるとかIT関連の事業であるとかっていうところもやっていて、経営者としてやっていくところとかプロのアーティストとしてやっていくところとかをみていて、尊敬できるなと思いますし。

ミイナ:
アーティストと事業化の共存というか両立?

アレックス:
両立っていうのをやっていて、ウクレレとヒューマンビートボックスのユニットの忍者ビートっていうのを作って世界大会で優勝してたり。

ミイナ:
聞いてみたい。ウクレレとビートボックスの競演。

アレックス:
そういう新しいところに挑戦していく彼の姿をみていて、刺激をうけますし、実は僕にエストニア行きを進めたのもその彼なんですよ。

ミイナ:
木村新さん

アレックス:
彼にエストニアって面白いらしいよ、って言われていくことになったんで、エストニア行きを決めた張本人です。

*****Dooo*****

精神的に豊かになること

ミイナ:
お好きな本とかありますか?

アレックス:
「LESS IS MORE」という本田さんが書いた本がすごく好きでバックパッカーをやっていたときによく読んでいたんですね。

ミイナ:
「LESS IS MORE」のタイトルがすごく素敵ですよね。

アレックス:
物質的に豊かになるんじゃなくて精神的に豊かになっていこうということが書かれてるんですけど、全然僕がエストニアを知らなかったときに読み始めて今読み返してみると今エストニアの生活がフィットしているのかなと思いますし、僕が自分の価値観とか幸せの在り方を考えるようになったのもこの本がきっかけで「自分にとっての幸せってなんなんだろう」とか、「自分にとってアンハッピーな状態ってなんなんだろう」っていうのもこの本をきっかけに考えることになったのでそういう意味で「LESS IS MORE」という本はお気に入りです。

ミイナ:
“more is always better”じゃなくて、「LESS IS MORE」こういう時代だからこそ大事ですよね。

アレックス:


収録を終えて

ミイナ:
エストニアから一時帰国中ということで、Dooo、どうでした?

アレックス:
楽しいですね。あっという間に収録終わっちゃって。

ミイナ:
あっという間で時間足りなくなってくるんですよ。・・・この写真は?

アレックス:
実は僕がエストニアに行く直前にクラウドファンディングに挑戦して「エストニアに行って向こうの情報をリサーチしてきて、みなさんにお届けします」ということで一時帰国したときの報告会みたいなところなんです。やっぱり海外に挑戦するところでお金ってどうしてもネックになってくるところなんですが、全然知名度も実績もなんもない若者がこうやって海外行くときにクラウドファンディングしてお金あつめて、実際70数名支援してくださったんですよ。それでやっぱり向こうに行って有意義な取り組みをすることができたのでそのときの思い出深い一枚ですね。いろんな人にこのクラウドファンディング含めてですね、ご縁でつながることができたエストニア挑戦だったのかなと思ってます。

ミイナ:
齋藤さん今日はありがとうございました。

アレックス:
ありがとうございました。


【前編はこちら】