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「今注目の“電子国家”エストニアに移住して会社を設立した26歳に聞く『エストニアってこんな国』齋藤アレックス剛太さん(前編)

今回のゲストはエストニア在住・26歳の齋藤アレックス剛太(こうた)さん。

ミイナ:
まず、場所の確認から。

アレックス:
バルト三国の一つとして教わる場所ですよね。

アレックス:
エストニアっていうのはSkypeを生んだ国なんですよね。

ミイナ:
そうなんですか!?

首都タリンは中世の町並みが続き、国土の半分が森林だということですが、今、エストニアが注目されている理由は・・・「電子国家」。行政サービスの99%が電子化されているというこの国ではSNSのアカウントを開くぐらい簡単に会社が設立できるんだとか。縁もゆかりもなかったエストニアでどうして起業までできちゃったのか。じっくりうかがいます。


エストニア在住の26歳

ミイナ:

Dooo!!堀口ミイナです。早速今日のゲストご紹介しましょう。エストニアのスタートアップ企業SetGoの共同創業者である齋藤アレックス剛太さんです。よろしくお願いします。アレックスさんと呼ばれることが多い?

アレックス:
そうですね。アレックスと呼んでいただければ。

ミイナ:
名前の由来みたいなのあるんですか?

アレックス:
僕自身は東京生まれ東京育ちなんですけど、母親の家系が昔日本からハワイに移り住んでその末裔みたいなところなので血は日本人なんですけど、家のカルチャーが半分アメリカですね。

2018年5月からエストニアにいて、今はローカルのスタートアップのSetGoエストニアというのを設立し、共同創業者としてビジネスをやってます。


エストニアとの偶然の出会い

ミイナ:
衝撃なのはなんとまだ26歳という若さでエストニアに移住し、なんと起業までされ、エストニアとの出会いは?

アレックス:
実は偶然でもともと海外に行きたいとずっと思っていたところでちょっと前の会社を転職しようかなと思っていた時期があって。

ミイナ:
最初に働き始めたのは日本?

アレックス:
日本だったんです。日本のコンサルの会社に2年間働いていて、そのあと転職先も決まっていて、日本の別のコンサルの会社に転職するのが決まっていたんですね。ただ、「ただ単に転職するんじゃつまんないな」と思って3カ月くらい間を空けようと思って海外の国をいろいろさがしてて、そんなときにたまたま友達と話していて今でも覚えてる、銀座線のこのへんの近くです。赤坂見附の近くで・・・

っていうのを聞いて、あ、ちょっとおもしろいかもと思って調べてカフェで2時間くらい調べたときにはもう「これ行くな」と思って決めてましたね。

ミイナ:
ピンとくるものが?

アレックス:
ピンとくるものがあって。「じゃあ行くか」とおもって、決めたのが去年2018年。3カ月の予定がいつのまにか1年以上住んでますね。

ミイナ:
起業もされて。

アレックス:
起業もするつもりは全然なかったんですけど。

ミイナ:
最初は現地の会社で働き始めたんですか?

アレックス:
最初はベリフっていう ローカルのITスタートアップの「Veriff」っていうところに1年間勤めていて、

そこから向こうの「blockhive」っていう会社に入る形でその子会社というかプロジェクトの一つとして「SetGo」を立ち上げたというところです。

エストニアでは国民向けの行政サービスが電子化され結婚・離婚・不動産売買以外のすべての手続きがオンラインでできるようになっています。

さらに、2014年に開始された「e-Residency(イーレジデンシー)」というシステムでは外国人でもエストニアの「電子国民」になることができるというのですが、「電子国民」とはいったいなんなのでしょうか。


“電子国民”プログラムとは

アレックス:
e-Residencyというプログラムがあってですね。それによってエストニアの行政サービスを外国人であっても一部利用することができる。今現時点ではそのe-Residencyカード、実は今日持ってきてるんですけど、こういうものですね。こういうカードがあるんですが・・・

ミイナ:
これ個人情報満載で。

アレックス:
個人情報満載と思いきやですね、11ケタのIDナンバーが書かれてるんですけど、これ自体は日本のマイナンバーと違って公開なんです。なのでこれ見せちゃっても問題ない。

ミイナ:
見せちゃっても問題ないように最初から。

アレックス:
最初から設計されている。で、これを持つとエストニアで法人を設立することができるのでそういった意味では6万人くらいの外国人の方がエストニアのe-Residencyカードを持取得していて約6000社が設立されてます。

ミイナ:
いつからスタートでしたっけ?

アレックス:
2014年ですね。なので約5年間の間で6万人電子国民が生まれていて、実は日本からもすでに3000人くらいがe-Residencyカードを取得していて、約200社がもう設立されているということで日本からの注目度も高いなというところがエストニアの電子政府。実際に来ている外国人ていうのも徐々にではありますが増えています。というのもエストニアってIT企業が多いんですけど、エンジニアっていうのが慢性的に不足していてITエンジニアを呼び込もうと政府を中心に展開しているんですね。そういったところから、ウクライナとかそれこそトルコとかからエンジニアさんがいらっしゃってるってところはあります。


広がる電子国民プログラム

ミイナ:
電子国民っていうこれはまったく新しい概念。

アレックス:
一応エストニアが世界で初めて提唱したというか実際にプログラムとして起こしたのがエストニアの電子国民といいますかe-Residencyというところで こないだもリトアニアが同じようなプログラムを展開するとか。

ミイナ:
同じバルト三国の・・・

アレックス:
バルト三国のリトアニアがやるとか、実はアゼルバイジャンも同じような取り組みをもうすでにやっていたりして、こういった取り組みっていうのはこれから世界にどんどん広がっていくのかな、って思っています。

ミイナ:
海外にいる人たちに自国の行政サービスが使えるみたいな国民の・・・一部になるみたいなことなんですかね。

アレックス:


*****Dooo*****

e-Residencyでできること

ミイナ:
e-Residencyを取ったことでどんなことが楽になりました?

アレックス:
一番大きいのが法人を設立できるというところなので。

僕も法人をこのe-Residencyを通して設立してますし、オンラインで本当に1日かからないうちに設立できるというのがやっぱり面白い、そのことによってエストニアでビジネスに挑戦できる機会をもらえたっていうのがすごい大きいなっていう風に思ってます。

ミイナ:
日本だと会社設立するのって自分でやろうとすると本当に大変ですよね。あとは司法書士さんにお願いしてお金も時間もかかるっていうところで大変。一大事だと思うんですけど・・・

アレックス:
エストニアで会社を開けるのはさながらSNSのアカウントを開けるようなものなので開けてから勝負というのもありますし、開けること自体に複雑なプロセスはなくて。

このカードをピッてパソコンにさしてやるとすぐにできて場所は選ばないので日本からでもできますし、僕の友達はエストニアってサウナが有名なんですけど、エストニアのサウナからサウナ関連の会社を立ち上げたって言ってました。そんなこともできるのがエストニアの面白いところですね。このe-Residencyカードでいうと電子署名というのを国が提供しているんですね。なのでこのカードを挿して5桁の暗証番号を入れると自分でありますよってところで電子署名をすることができるんですよ。

なので現地に移住するときにまだビザが出てないときにこのカードで雇用契約とか不動産の賃貸契約っていうのもこのカード使って署名することができたのでそれはすごく楽でしたね。

ミイナ:
つまり生身の人間が行かなくてもサインしたりとか印鑑押すってことと同じことができるっていう。

アレックス:
できるっていうところですね。なのでサインとか印鑑っていうのももちろんないですし、たとえば日本にいて、普段、エストニアの会社のビジネスやってる人とかがエストニアの会社と契約する人とかは国際郵便で高い金額かけて送らなくてもオンラインでこれ一つでできるっていうのがそれは利便性は高いですし、それによって本来の本質的な業務に集中できるっていうのがありがたいことですよね。

*****Dooo*****

SetGoのサービスとは

ミイナ:
事業についてもうかがっていきたいんですが、実はこのe-Residencyをより活用していくためのサービスっていうことなんですよね。

アレックス:

e-Residency今、日本人3000人取得しているとはいえ、まだまだ活用のケースが多くなくってですね、やっぱり税務であるとか会計とか法律とかまだまだナレッジとして蓄積されていないというところで、僕らの方で法人設立を支援しながらそういった情報をまとめていって、日本からであってもエストニアの法人を使ってグローバルなビジネスを展開するのを支援していきたいなってところをやってますし、特に大企業に対してはエストニアに事業所を建てたりとか進出するにあたっての現地からの支援であるとか実際に事業を運営していく中でこういう支援が必要です、とかこういう戦略的なアドバイスが必要ですってときに実際に支援していくっていうのがこのSetGoって言う会社でやってることです。

ミイナ:
いくらシステム整っているっていっても慣れてないこといきなり初めてやるのは戸惑うっていうこともありますし。

アレックス:
僕は1年ですし、blockhiveの共同創業者の日下さんは向こうに2年いるんで。

その中でやっぱり便利な社会とはいえさまざまな課題に直面してきたということはあるのでそういったところを事前に取り除いてあげてスムーズにエストニアで事業をできるというところを支援したいと思ってます。


EUの玄関口としてのエストニア

ミイナ:
例えば日本でお店を開きたい、とかっていう場合にエストニアで会社を作っちゃうと現場と会社の場所が離れてて不向きかなとか。向いてるビジネスとかってあるんでしょうか。

アレックス:
やっぱり場所を選ばないビジネス

ミイナ:
・・・がおすすめ、IT系が?

アレックス:
IT系多いですね。でもIT系にしぼるという制約はなくて、これからヨーロッパに進出していきたいって方はヨーロッパの中で会社を作ることができるので日本とヨーロッパっていうところを2つ調べなくてもヨーロッパの枠組みのルールの中でビジネスを展開することができるのでヨーロッパに進出されるって言う方がエストニアで法人を設立するっていうケースもあったりします。

ミイナ:
日本の会社で今やってることをヨーロッパに広げていきたいなっていう場合にとってもいい玄関口になるっていう。

アレックス:
玄関口、まさにゲートウェイになるっていう。

ミイナ:
ゲートウェイなんですね。

アレックス:
箱であるとはいえ、自分の会社ができるっていうのはうれしいことじゃないですかそれをわずか1日、半日でできるっていうのはやっぱり夢がありますし、そこからどういう風に展開していくかっていうのを考えていく、e-Residencyのコミュニティの中で考えていくっていうのは面白いものがある。

アレックス:
ちょうど去年ですね、日本とエストニアで租税条約っていうのが結ばれていてますますビジネスしやすい環境になってはきているのでそういった背景も手伝ってますますこれから活性化していくのかな、っていう風に思ってます。


スタートアップビザとは

ミイナ:
これきいてエストニアに会社作ってみたいとか行ってみたいとか住んでみたいっていうのも出てくるのかなって思うんですけど、住むにはまたビザとか必要なんですか。

アレックス:
e-Residencyカードっていうのは住むとは関係のないもので、住むためにはビザっていうものを取得しないといけないんですけど、エストニアってまた別のところでスタートアップビザっていう制度があって、IT系に限られてきてしまうんですけど、スケーラブルなビジネス、これからFacebookとかエアビー&ビーのように小国から実際に世界にリーチできるようなサービスのアイディアを持ってる人であれば実際にビザを発効してエストニアの中でビジネスを育ててくださいっていう制度があるんですよ。というのも、もともとエストニアっていうのはスカイプを生んだ国なんですよね。

ミイナ:
そうなんですか?? 知らなかった。

アレックス:
人口130万人しかいないんですけど、130万人の小国から世界に刺さるようなサービスっていうのを実際に出すことができたので第二第三のスカイプを輩出するっていうのもあって、スタートアップエストニアっていう機関がスタートアップビザっていうのをやっていて実際に結構いろんなところから日本からもスタートアップさん来てますし、インドとかモロッコとかからエストニアに移住してきて自分のスタートアップのプロダクトを育てているという人も結構いたりしますね。

ミイナ:
それは最初に自分のアイデアをプレゼンしてOKってなるとビザがもらえる

アレックス:
本当にそんな感じでオンラインなんで自分のアイディアをばーって書いていって、そうするとエストニアのスタートアップコミッティーっていって、実際にスタートアップで活躍する人たちがそのレビューをするんですよ。このアイデアだったら面白いからぜひエストニアに呼びたいっていう人をエストニアに呼んできて、実際にビザを発効するっていう感じですね。

*****Dooo*****


エストニアにとってのメリット

ミイナ:
エストニアにとってのメリットは?

アレックス:
エストニアにとってのメリットはそもそも法人を設立してもらえると法人税というのがエストニアに入ってくる形になりますしお給料払うということになると給料の中からも低くはない北欧の福祉国家なんで低くはない社会保険料みたいなところを徴収するのでそういうところで税収が増えるということもありますし、まさに僕らがやろうとしてることでもありますが、法人を設立するというところを支援したり、電子国民に対してサービスを提供するというサービスプロバイダーというところにもお金が入ってきますし、なによりも一番大きいのがエストニアのファンが増えるということだと思っていて。

電子国民カード持ってたら気になるじゃないですか、エストニアのこと。なので、そういったところで世界中にエストニアのファンがどんどんどんどん増えていって、エストニアのビジネスをやらなくても実際エストニアのこと気になって「行ってみようかな」とか観光とかでも行ってみたら観光業潤うわけですし、その中からエストニアの国家のブランディングというか、ブランド力が上がっているというのもあると思います。


政府が自国をブランディング

ミイナ:
確かにこれまでエストニアなんて意識したことなかったんですけど、この近年の盛り上がりで特別な国かもっていう気がしてきてるので成功してますよね。

アレックス:
実はエストニアって国がブランディングをやっているというのもあって、ブランドエストニアっていうのがあって、そこが国のブランディングというのをやってる。

具体的にいうと、国の広報物とかに使うフォント、であるとか写真であるとかすべてウェブサイト上で無償で公開されていて、それ誰でも無料で利用できるんですよ。

エストニアの広報物を出すとか僕も実はブログというかメディアをやってるんですけど、そこで使っている写真とかフォントはツールボックスエストニアっていうところからダウンロードして使わせてもらってる。

ミイナ:
じゃなんかエストニアのすてきな町並みとか山を紹介したいなというときにネットの雑な写真ではなくて・・・

アレックス:
国が提供しているすごいクオリティの高いものを利用できる。