入居者写真

介護ロボットは気を使わないから8割の人が肯定的 ~11月11日「介護の日」意識調査

TBSテレビ報道局 科学担当解説委員 齋藤泉

●介護業界への外国人スタッフ導入は52%が「人手不足解消される」

●「介護離職ゼロ」政策の意味については半数以上が間違って理解

●介護ロボットは「気を使わないから」との理由で8割が肯定的

厚生労働省は11月11日を「介護の日」と定めている。「介護について理解と認識を深め、介護従事者や介護サービス利用者、そして介護家族を支援する」ことなどを広く国民に啓発するため、2008年に作られた。

この「介護の日」に全国の40代以上の男女を対象に行われた意識調査では、「介護ロボット」については“8割が肯定的”で、外国人が介護業界で働くことについては“5割以上が良い”と感じていることが明らかになった。

この意識調査を行っているのは、有料老人ホームなどを運営するオリックス リビング(本社:東京港区)で、今年で実に10回目になる。調査結果からは、介護に対する中高年層の“本音”を読み取ることができる。(写真提供:オリックス リビング)

■介護業界への外国人スタッフ導入は52%が「人手不足解消される」

介護業界で今、最も深刻なのは人手不足の問題だ。国内だけでは必要な人材を確保することはできず、介護現場では、すでに多くの外国人スタッフを受け入れている。

こうした中、今年11月から法律改正で外国人の技能実習生が介護職種に就くことが可能になった。外国人が介護業界で働くことについて、意識調査では、「人材不足が解消されて良い」という回答が最も多く、全体の51.9%を占めた(男性56.6%、女性43.2%)。

これに対して否定的な回答としては「言葉が通じないのではないかという不安がある」が43.2%、「文化の違いによる不安がある」が43.2%となっている。

■「介護離職ゼロ」政策の意味について半数以上が間違って理解

また、最近よく耳にする「介護離職ゼロ」の政策については、正しく理解されていないという実態が浮き彫りになった。

「仕事と介護の両立ができずに、家族の介護などのために離職を余儀なくされる」というのが「介護離職」である。これをゼロにしようというのが「介護離職ゼロ」の政策なのだが、「内容が分からない」という回答が34.9%、「介護職員の離職を防いで、介護業界の人手不足を解消するための政策」という回答が21.8%に達し、合計すると全体の56.7%が、この政策を正しく理解していないことが分かった。

政策実現を訴える行政などが、もっと丁寧な説明をしていく必要があると感じる。なお、「仕事と介護の両立」については、「できると思う」と回答した人はわずか8.6%で、調査を開始して以来、4年連続で1割を切っている。

■介護ロボットは「気を使わないから」との理由で8割が肯定的

介護業界が人手不足になっている背景には、日本の少子高齢化という根本的な問題がある。それ以外にも仕事内容に見合った報酬を得られているとは言えず、ほかの仕事に転職してしまう人が多い。さらには介護従事者が介護の際の移乗や移動で腰痛など体に不調をきたし、やむなく職を離れるケースが目立っている。

こうした中で注目されているのが介護現場へのロボット技術の導入だ。介護ロボットによる身体介護については、「推奨されていれば受けても良い」という回答が71.8%、「積極的に受けたい」が8.4%となり、合わせて80.2%もの人が介護ロボットの導入に肯定的という結果が得られた。

一方、「ロボットによる身体介護は受けたくない」という回答は17.3%で、2011年の調査開始以来、最も少なくなった(2011年は21.1%)。

介護ロボットに対する抵抗感は年々、低下している傾向がうかがえる。肯定的である理由には考えさせられるところがある。「ロボットは気を使わないから」というのが53.7%、「本当は人の手が良いが気を使うから」が24.2%で、人に迷惑をかけたくないという、心理的な負担が背景にあるようだ。