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「発酵から日本を再発見する」発酵デザイナー小倉ヒラクさん(後編)

柿次郎:
はい。Dooo!!本日のゲストも前回に引き続いて、発酵デザイナーの小倉ヒラク君をお迎えしていま~す。

小倉:
皆さん2週続けて、よろしくお願いします。

柿次郎:
今回も凄い全国の発酵食品のエピソード盛りだくさんなんでみんな・・・寝る前に見ないで。昼!昼ぐらいに見て、元気な時に。

全国の発酵食品を集めた「ファーメンテーションツーリズムニッポン」にやってきた柿次郎。発酵デザイナーの小倉ヒラクさんにディープな発酵の世界について聞いちゃいました。

後編も引き続き濃厚な発酵トークをお届けします。

発酵食品は「Dooo」

小倉:
昔の人って、やり直しができない。昔の人の気持ちになってみると。だから、失敗したとか何か予期せぬことが起こった時に「じゃあ、やり直しね」
ってことをするほど、ストックがなかったりするんですよね。

柿次郎:
はぁなるほどなるほど!

小倉:
だから、失敗してしまったやつをうっかり別のことになってしまったものをどうするかってことを考えざるをえないことが多い。そういうところから発酵の知恵が生まれてきているってことがよく分かりますね。47都道府県集めてみると。

柿次郎:
勿体ないから食うというか、何というか・・・

小倉:

みんなDooo!!してる。

柿次郎:
Dooo!!凄いな。今までで一番Dooo!!の話してるかもしれない。

小倉:
47都道府県のDooo!!を集めたものですコレわ。

柿次郎:
そうですよね。

*****Dooo*****

お茶も発酵「碁石茶」

柿次郎:
なるほど!ちょっとのど渇いたんでお茶飲んでいいですか?

小倉:
いいっすよ。

柿次郎:

小倉:
これ!

柿次郎:
あら!気付かず!

小倉:
乳酸発酵してる!

柿次郎:
乳酸発酵してるってこと!?めっちゃすっぱい!

小倉:
ここで目にするもの、口にするものすべてが発酵している。

柿次郎:
やべぇ。

小倉:
ここは発酵ゾーン。

柿次郎:
発酵ゾーンね。ここヒカリエが(笑)。これは、高知の碁石茶は発酵茶?

小倉:
発酵茶です。

柿次郎:
発酵茶ってみなさん飲みますか?

小倉:
発酵茶って日本にはほぼない

柿次郎:
ない!?

小倉:
ない!

柿次郎:
日本ではない、海外ではある?

小倉:
ある!

柿次郎:
どこですか?

小倉:
中国!プーアール茶!

柿次郎:
え!?

小倉:
プーアール茶っていうのはカビで発酵したお茶

柿次郎:
えぇ!?

小倉:
で、この碁石茶ってのは、プーアール茶みたいにカビで発酵したあとに、
今度は乳酸菌で発酵させてる
っていう・・・2重の。

柿次郎:
2回!?

小倉:
超レア。なんで高知の山の中にそんなものが残っているのかわからないんだけど。結構アジアの中でも珍しいお茶ですね。

柿次郎:
はー。カビで発酵させて、乳酸菌で発酵させてる。

発酵っていうのは掛け算もできるわけ?

小倉:
できる!

柿次郎:
じゃあ、カビ、乳酸、さらに別の発酵も・・・

小倉:
できる!それが・・・

柿次郎:
えぇ?あるの!?ごど!?


納豆菌×麹×乳酸菌「ごど」

小倉:

これは、元々、青森のおかあさんたちが、手作りで失敗した納豆を何とか生き返らせるために作った食べ物で、失敗した納豆に、

麹菌(カビ)を混ぜて、

発酵させた後に、さらに乳酸菌を混ぜて、

すっぱくさせていくっていう食べ物。納豆×麹×乳酸菌。

柿次郎:
納豆はカビ?

小倉:
納豆は納豆菌、麹はカビ、乳酸菌がまた細菌類・バクテリア。

柿次郎:
そもそもじゃあ、納豆を発酵させるときに時には失敗するものであると。

小倉:
そうなんです。

柿次郎:
じゃあほっといたら100パーセント発酵されるものではなく、納豆は。

小倉:
そう、微妙だったり、手作りって微妙になるものなんです。

柿次郎:
あーなるほど。

小倉:
そういうものすらも捨てないという・・・

柿次郎:
もったいねぇと。

みんなが一生懸命作ったこの大豆、みんなの生活の糧であり捨てられないと、もっかい乳酸発酵させたらいいんじゃないかと。

小倉:
そう、乳酸発酵が進んでいくとどんどんドロドロにとけてくるから、これしょうゆの代わりにしようかって炒め物につかったりとか。

偶然から生まれた「かんずり」

柿次郎:
は~なんか他にも・・・

とかっていうのは。これ調味料ですよね唐辛子の。

小倉:
これはですね、新潟の妙高って言う山間のところの、秋に取れたおっきな唐辛子があるんですけど、それを塩漬けにした後に、雪の中に埋めて・・・

柿次郎:
ほう、1回?

小倉:
1回埋めて、そしてしんなりしたら今度、麹につけて柚子とかスパイスとか、いろんな調味料とかにつけて、味噌みたいに発酵させて、最終的に調味料にするっていう文化ですね。味噌みたいに発酵させて、最終的に調味料にするっていう文化ですね。

柿次郎:
どうやって気付くんですかねそれ?

小倉:
僕も気になって、聞いてみたら、元々はただの唐辛子の塩漬けだったらしい
それを軒先で干しておいたら、落ちて、落ちたことに気付かずに雪に埋もれて、ある程度雪がとけて出てきたのを食べたらうまかった
と。

柿次郎:
はははは(笑)

小倉:
なんかしんなりしてたと、悪くねぇと。

柿次郎:
これ食えんじゃないかと。

小倉:
それをさらに、発酵させると味噌みたいになるんじゃないか、みたいな発想で出来たみたいです。

柿次郎:
結構偶然で。

小倉:
偶然。

柿次郎:
それで生まれてるものも多いと。

小倉:
多い、半分くらいは偶然から生まれてますね。


自分のローカルに何があるか注目

柿次郎:
ここまで皆さんついてこれてますかね?

小倉:
わかんない。

柿次郎:
ははは(笑)

小倉:
大丈夫かな?どんな人が見てるのこれ?

柿次郎:
どんな人・・・まぁ地方のね、10代とか20代でこう、スマートフォンで?テレビはないけどスマートフォンで、色んな情報にアクセスしたいと、色んな価値観を知りたいと。好奇心はあるけども、実家の6畳一間の部屋で、親に反抗期を、牙をむき出しにしながら見てるみたいなのが、発酵に・・・

小倉:
こういうイヤホンかけて?

柿次郎:
そうそう。もしかしたらそういう人がいるかもしれないって言う。

小倉:
ローカルの子たちだったらね、それぞれ色んな土地あると思いますけどここのマップからね・・・

自分たちの文化で何があるかっていうのが注目して欲しいところですね。


柿次郎のローカル「すんき漬け」

柿次郎:
なるほどね、生まれ育った土地だったり、おじいちゃんおばあちゃんの土地だったりとか。これは長野全体では南の方の文化ですよね、南信?すんき漬けって言うのはなんなんですか?

小倉:
すんき漬けって、赤カブのハッパを湯通しして、塩を使わず乳酸菌だけで発酵させたお漬物

柿次郎:
塩使ってない?

小倉:
使ってない。木曽に不思議な乳酸菌がいっぱいいて、土着の。

柿次郎:
へー自然の中に?

小倉:
その土からカブの頭の部分出てるじゃん?土から出てる部分にいっぱいいるの。

柿次郎:
えっ!?

小倉:
だから採るときにカブの頭の先っちょもハッパと一緒に切り取って
それでつける。

柿次郎:
それで付いてる乳酸菌で発酵しちゃう?湯通ししても死なない?

小倉:
ぬるいお湯でやるの。

柿次郎:
死なない程度の。はー。

小倉:
という不思議なお漬け物があるんですよね。コレね、世界的に見てもかなり珍しいお漬物で。

柿次郎:
すんき漬けが。

小倉:
ザワ―クラフトとかもお塩使うんだけど、一切塩使わないお漬物って言うのは世界的に見てもウルトラレア

柿次郎:
へー。

小倉:
っていうのが長野にある。

柿次郎:
すごい。塩を使って保存食にするって言うのが基本ですもんね。

小倉:
基本なんだけどそれはやらないっていうすごくアクロバティックなのが
あるんですねー。


4つのカテゴリー「山・海・島・街」

小倉:
今回の47都道府県あるんですけど一応カテゴリーを4つに分類していて、すんきだとのカテゴリーで・・・

明太子だとのカテゴリー・・・

離島とか、くさやとか伊豆諸島だとのカテゴリーで

すごい都会にある、例えば愛知県の八丁味噌とかの中にあるのは街のカテゴリーにして。

そういう風に4つに分類して、それぞれの土地の文脈でそれぞれ食べ物を保存して、健康に良くて、どうやって付加価値をつけて商売してるかっていうみたいな、そういう観点でやってるんですね。

柿次郎:
じゃあ自分たちが食べるって価値観もあるけども、できれば人に届けてお金に換えてって物のほうが残っているとか?

小倉:
そうそう。そこって結構日本のローカル文化のダイナミズムを出したくて、
一方ではすんきってほとんど外には出ない。

なぜかって言うと木曽福島っていう町が山の中に閉じ込められているので、いかに何もないところで生きていくかって言う閉鎖系のもの。一方では、兵庫県のお酒とかわかりやすいんだけども、兵庫で作って、海を越えて東京の方に持っていって、そこで付加価値をつけていっぱい売ってお金を得るっていうダイナミックな貿易の文化があって・・・

動的なものと静的なものとか閉鎖的なものと開かれてるものみたいな対比を出したいんですよ。


秋田×広島・尾道=「米酢」

尾道っていう海沿いの町があって、ここってかつて明治初めくらいまで日本有数のお酢の製造地で、今は全く面影がないんですけど。

何やってたかって言うと尾道は元々廻船問屋さん、海の商人の町で一言でいうと、瀬戸内海で北前船の文化を牛耳っていたところの一つなのね。

柿次郎:
北前船って函館とかの・・・。

小倉:
北海道の利尻とかから日本海をずーっと回って、下関でターンして、

最後は大阪の堺とかなんだけど。

秋田とかの安い米を持ってきて、お酢の原料って米と水だけなんだけど、安いお米をお酢に変える。


MAPに詰まったタテ・ヨコ・ナナメ

今ってお酢安いんだけど江戸時代とかまでは下手なお酒よりお酢の方が高かった、だからお酢にかえて付加価値をつけてもう一度逆側にまわして、ずーっと日本海側をお酢を売っていって大もうけして。

柿次郎:
それは逆に秋田が米どころで米が余っていたから米を使ってより交易をして稼ごうってのでここ(広島)でお酢にしてまた戻ってみたいな。

小倉:
だからこれが・・・

ですね。

柿次郎:
はぁ~すごいな。

小倉:
タテの関係がその土地の風土とか微生物でしょ。ヨコの関係が民族とか歴史でしょ。さらに別のところにいる微生物とか食物とか民族とかが別のところと関わってまた新しいものができて価値が生まれて広がっていくこともこの地図の中につまってる。

柿次郎:
これはある意味、現代的な地図の解釈では全然ない・・・海路というか航路ってとこでいかに日本人の文化とかが行き来していたかっていう。

小倉:
だから山すそとか海の道とか僕らが普段現代人があまり注目しない道がこの中にいっぱい通ってる。

柿次郎:
すごい展示ですよね。

小倉:


*****Dooo*****

時に倒れながら全国8ヶ月の旅

柿次郎:
いや~しかしすごい、これマジで大変でしょ?47都道府県をどれくらいの期間で・・・。

小倉:

柿次郎:
8ヶ月!?

小倉:
8ヶ月で周りました。

柿次郎:
周ってさらに今、宣伝のために2、3日に1回の頻度で全国でトークイベントをやったり、テレビだったり・・・。

小倉:
してます。

柿次郎:
いやぁ~。

小倉:
余生・・・終わったらもう余生。

柿次郎:
絶対途中で体調崩しますよね、元々ヒラク君体が強くないはずなんで。

小倉:
はい・・・

柿次郎:
何回も・・・

小倉:
旅の途中で。病院いったりだとか、過労で。

柿次郎:
それは8ヶ月のなかで何回ぐらい山があって・・・

小倉:
3回ぐらいあって・・・一番最初に体調崩したのはこのへん(近畿)回っているときで。前半戦だったんだけど、一番楽チンな夏終わりぐらいだったんだけど、一個一個蔵を訪ねると異世界が待ってるんですね。

柿次郎:
異世界?

小倉:
山のように桶が連なってるとか、

まず1回、熱が出たんですよね。

柿次郎:
いわゆる、知恵熱的な。

小倉:
知恵熱出たままも辛かったし、あとはこの辺(日本海側)の北に登っていった時なんかは、リアルに旅のルートが辛すぎて、超寒いとか、移動に時間かかるとか。

柿次郎:
僕もあちこち行きますけど東北に行く選択肢は少ないというか結果少なくなってて行くとすごい移動するし、新幹線もあるし飛行機もあれど、ローカルな文化っていうのは今の現代的なインフラからはちょっと距離が離れていたりするし。

小倉:
あと今回僕は便利な道をあまり使ってなくて、なるべく昔の人が使った街道や海路を使っていくっていうルールを設定していて。


柿次郎:
そんな見えない努力も!?

小倉:
していて。だから車借りて下道で行くとか、昔の人が開いた道がいま国道になっているとこがあればそこを行くとか。あと昔の人がよく使ってた海の道とか瀬戸内海とかいっぱいあるんですけどそういうところで移動したりとかいっぱいやってるんですよ。昔の人が越えたであろう峠を越えていくとかそういうのをいっぱいやってるんで・・・

柿次郎:
本気の学者がやるフィールドワークみたいなものをハードな取材の中に自らに課して自分の景色というか解像度を昔の人に合わせながら・・・

小倉:
そーっすねぇ、やってきましたね~。


*****Dooo*****

 

発酵ツーリズムのススメ

柿次郎:
僕も4年かけて全国それぞれ回って。4年っていう時間軸でも相当へとへとですけどそれをね、半年とか8か月でやりきるっていうのは・・・。

小倉:
大変でした。

柿次郎:
でもこれもう自分の血、肉となって今後一生ね、「自分でも見てきたぞ!」っていうネットで見たものじゃなくて、自分の足で、五感をフルに駆使してって体験できたものをここに展示してると。

小倉:
でもこういう展示をやっているとすごいローカルおじさん・おばさん、みたい人が僕に話しかけてくれて、

とか言うんですよ。

柿次郎:
えぇ!?それはもう旅人のおじさん?

小倉:
そう趣味でこういうのずっと食べ歩いて、さらに有力な口コミを僕にくれるの、ここにこういうのあるみたいな、ほってんなぁって。

柿次郎:
ははは(笑)

小倉:
僕まだまだだなって思います。

柿次郎:
上には上がいるわけですね。

小倉:
これをやったからって何か誇れるわけでもなくて、上には上のローカルおじさんおばさんがいっぱいいる

柿次郎:
これもまぁヒラク君が現時点でフルでやったけども・・・

小倉:
まだまだそこを目指すかは知らないけどまだそんなに自慢できることはやってないっすね。

柿次郎:
そっかそっか。でも、これ1回成し遂げたらすごいことですよ。これをみてる若者もね、夏休み暇だったらね、1か月、2か月間使って、自転車とかでお金をかけずに発酵食品めぐってみるとかっていうのも。

小倉:
そうですね、親の車借りて下道でやっていくとかね。是非やって欲しいなって思います。

柿次郎:
それが大人に金借りてね、交遊しながら回るっていうのもね、一興ですね。

小倉:
やっぱ自分の五感を使って、人と会って、その土地の暑いなとか寒いなとか風が気持ち良いなとか感じてものを知るってことをして欲しいなって思います。

柿次郎:
じゃあ今回ここに来て、ヒラク君と近しいような旅の仕方をするとしたら・・・東京の人だったらまずここ行ったら気楽というか。

小倉:
やっぱり東京から、山梨・長野、甲州街道を抜けていくのがオススメなんですよね。

出来れば車とかで行ってほしくて、ここ(山梨)のあたりでブドウ畑とかみて温泉はいって、北上して、木曽の方にいって、木曽とかって本当に素晴らしいというか結構浮世離れした場所なんだけどそこで郷土料理食べたりとか御嶽山にお参りとかいって、そこから結構大変だけど、本当にいいのは、飛騨高山を通って・・・。

柿次郎:
アルプスの道がありますね、抜けて。

小倉:
こう行って(長野→岐阜)関西のほうに降りていくか・・・

あるいは富山の方に上っていって最後石川にたどり着く・・・

みたいなルートがいいですね。

柿次郎:
なるほど。

小倉:
このルートとかって古いルートなんですよね。江戸時代以前から繋がってるルートなので。

柿次郎:
ほんとに馬とかが往来していた道と共に土地土地の発酵文化に触れていくっていうのがオススメであると。

小倉:
そうです。

柿次郎:
それとかは、これ夏休みぐらいにいいんじゃないですか?

小倉:
みんなで車借りて、三泊四日で発酵ツーリズムしようかって。僕も一泊二日の旅好きなんだけど、三泊四泊していくと身体感覚が変わってくるでしょ?だから、その土地にチューニングされてくるって感じあって、できれば長めに旅していくつかの土地を・・・割とローカルな道を通ってやっていくと
土地にチューニングしてる感が出てくる
んですよね。そこまで感じてもらえるといいかな。

柿次郎:
それめっちゃいい旅の仕方。

小倉:
エヴァンゲリオンのシンクロ率がやばいみたいな。

柿次郎:
その中で行く土地土地の。

小倉:
なってくるのでオススメですね。

柿次郎:
うん、大事!

小倉:
頭だけでもいいけど。

柿次郎:
いやぁ、みんなそういうDooo!!の生き方をしていきましょう!じゃあヒラク君今日はありがとうございます!

小倉&柿次郎:
Dooo!!


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