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2019/08/11 風をよむ「"きのこ雲”誇れますか?」

・被爆者たちが演じた原爆投下の悲劇 映画「ひろしま」

・核兵器禁止条約に参加しない日本

・アメリカの高校のロゴマークに使われたきのこ雲


映画「ひろしま」より

教師「Bよ、Bじゃない?」 生徒「ほんとBの音よ」

1953年、原爆投下からわずか8年後にもかかわらず、一つの映画が制作されました。タイトルは「ひろしま」…

撮影には、実際の被爆者ら9万人近い広島市民が参加し、壊滅した市街地を逃げ惑う人々の姿が描かれたのです。

映画「ひろしま」より
皮膚がめくれた少年「寒いよ-、寒いよ-、寒いよー」

この映画は1955年、ベルリン国際映画祭で長編映画賞を受賞。

しかし、「反米色が強い」などの理由で配給会社が手を引き、その後半世紀以上に渡って、ほとんど上映されることはなかったのです。

幻の映画ともされた「ひろしま」…それが今、英語字幕版も作られ、各地で上映が始まっています。

映画見たアメリカ人(Q原爆の恐ろしさや非人間性を理解できたか?)
「はい、すべて理解できました。原爆は戦争犯罪です」

その原爆投下から74年。6日、「原爆の日」を迎えた広島では…

広島・松井市長「唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いをしっかりと受け止めていただきたい」

さらに9日、長崎の平和宣言でも…


長崎・田上市長「日本はいま、核兵器禁止条約に背を向けています。戦争をしないという決意を込めた日本国憲法の平和の理念の堅持とそれを世界に広げるリーダーシップを発揮することを求めます」

2017年、国連で採択された核兵器禁止条約への署名や批准を、両市長とも日本政府に求めましたが、安倍総理は挨拶の中でこの条約に触れることはありませんでした。

現在、アメリカや中国などの核保有国のほか、日本など「核の傘」に
頼る国はこの核兵器禁止条約には参加していません。

その一方で、6日、南米のボリビアが新たに条約を批准しました。

ボリビアの国連大使は 「1945年の今日、広島に原爆が落とされた。あの日に亡くなった全ての人を忘れず、敬意を示したい」として、あえて6日に批准を行った理由を語ったのです。

しかし、条約発効には50の国・地域の批准が必要で、現在その数は25にとどまり、発効の目処はたっていません。

いまだ「核」を巡って一つになれない世界。そうした中、今月2日、1987年に、アメリカと旧ソ連が結び、冷戦後の核軍縮の柱ともなった「INF=中距離核戦力全廃条約」が失効しました。

これを受けて、早速、条約で規制されていた地上発射型ミサイルの開発について、米ロ双方が言及します。 

アメリカ・エスパー国防長官(3日)
Q 地上発射型中距離ミサイルのアジアへの配備を検討しているか?
 「そうしたいと思っている。中距離の、通常の兵器だ」

ロシア外務省・リャプコフ次官(5日)
「米国が新しいシステムの配備をアジアで始めるのであれば、我々も適切な対応をとる

「核なき世界」どころか、軍拡競争の懸念さえ強まりつつある世界。こうした「核」を巡る認識の違いは、国だけでなく、市民レベルにも及んでいます。

例えば、2015年にアメリカで行われた世論調査。広島・長崎への原爆投下は「正当化される」と答えたアメリカ人は56%と、「正当化されない」の34%を大きく上回っています。

そうした状況を、象徴的に示す出来事がありました。

6月、アメリカ・ワシントン州の地方紙に、ある日本人留学生の行動を伝える記事が掲載され、反響を呼びました。

高校3年生・古賀野々華さん
「リッチランド高校ではきのこ雲のロゴは皆に愛され、いろんな所に掲げられています」

福岡県の高校3年生、古賀野々華さんが、留学先の高校で、ロゴマークに原子爆弾によるきのこ雲のデザインが使われていることに、驚き、校内向けの動画で、異を唱えたのです。

ここリッチランドは、長崎に投下された原子爆弾の原料のプルトニウムが生産され、以来、核産業が町の経済を支えてきました。そして町には「アトミック=原子」の名前がついた店が数多く見られます。

古賀さんの留学先の生徒たちは、このロゴマークについて誇らしげに語ります。

高校生「非常に“誇り”に思います」
高校生「私たちの町、リッチランドの一部だと考えている」

「核兵器」を巡る日米の認識の違いが、改めて浮き彫りとなったのです。

高校3年生・古賀野々華さん
「きのこ雲の下にいたのは、兵士ではなく、市民でした。罪のない人たちの命を奪うことを“誇り”に感じるべきでしょうか?」


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