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2019/6/9 風をよむ「天安門事件から30年の中国」

・6月4日は天安門事件から30年。当時の記者が凄惨な事実を訴える

・いまなお続く”言論への弾圧”

・矛盾した動きを取る中国、今後の行方は・・・

流血し包帯を巻き横たわる人、現場に残された血痕。30年前、中国で起きた天安門事件の凄惨な事実を伝える画像。

 
事件から30年の今年、香港の記者でつくる団体は、先月、当時取材した画像を、インターネット上に公開。現場で、取材にあたった記者たちが、事件の悲惨さを訴えました。
 

現場を取材した女性新聞記者「多くの市民が次々に撃たれて倒れていた。その光景は誰にも信じてもらえないと思い、テープに録音しました」

30年前の6月4日。天安門広場で何が起きたのでしょう。

中国で改革開放政策が打ち出されるなか、1989年、改革派の胡耀邦元総書記が死去。学生らを中心とする追悼の動きは、次第に民主化運動の色彩を強めていきました。

学生「対話!」「民主万歳!」

この動きに危機感を抱いた政府がとった対応策が、戒厳令。

李鵬首相「今回の動乱に対し,断固とした措置を取ることを決定した」

そして6月4日、政府は実力行使による、鎮圧に踏み切ったのです。この時、中国政府の公式発表では、死者は319人とされましたが、実際は数千人との推計もあります。

それ以降、この事件は「学生らによる動乱」で「解決済み」として、体制批判や民主化の声を、徹底して抑え込んできた中国政府。

事件から30年を経た今年も、中国で放送される、イギリスのBBCなどのニュースが天安門事件に触れるたびに頻繁に遮断。また、鉄道予約サイトでは、事件の日付を連想させる「8964」という番号がついた列車の予約が、できない状態になりました。
 
こうした中、天安門事件の元学生リーダーで少数民族ウイグル出身の、ウアルカイシ氏が、4日、アメリカ議会の公聴会に出席、こう訴えました。

天安門事件の元学生リーダー・ウアルカイシ氏「世界の指導者は中国市場にアクセスしようと北京に足を運ぶようになった。天安門事件に言及するのは彼らにとって不都合なことになった。戦車に立ちはだかった若者に寄り添うべきか、それとも戦車に寄り添うべきか、みなさんに問いたいと思います」 

またアメリカのポンペオ国務長官も、今回、次のような声明を出しました。「中国の一党体制は、異論を認めず、党の利益になるとみれば、いつでも人権を侵害する」

これに対して中国は・・・。

中国外務省・耿爽報道官「内政干渉し、中国の安定を壊そうといういかなる企みも必ず失敗する。 現実離れした寝ぼけた発言も歴史のゴミの山に捨てられるに決まっている」

しかし、天安門事件以降も、例えば、ノーベル平和賞を受けた劉暁波氏が、国家政権転覆扇動の罪を問われ、拘束された末に病死。言論への厳しい弾圧は、国際世論からも批判を受けています。

強気な姿勢を崩さない中国。その背景にあるのが、今や、世界第二位を誇る経済力。

2017年には、1000万元、日本円で一億五千万円以上の資産を持つ富裕層は約161万世帯に。また世界の有力企業ランキングの上位10社中5社が、中国企業でした。

しかし、その陰には、中国独特の異様な仕組みがあると言います。

天安門事件から30年。今や世界第二位の経済大国・中国の矛盾を、中国事情に詳しい専門家は・・・。

神田外語大学・興梠一郎教授「国家資本主義ってアメリカは呼んでいますが、これは国有じゃなくて、共産党が所有している企業。“党有”企業。共産党の手の平の上でやっている、管理された市場経済。常に民間企業は指導される対象。ある一族がある業界を支配していたり、要するに権力者が資本主義を支配する」
 

市場を重んじ、自由な経済活動を求める、本来の資本主義とは、矛盾する中国の体制。その歪みは、すでに様々な形で現れています。


ウイグルやチベットなど、少数民族への抑圧。そして、「反腐敗運動」と称して行われる、粛清による権力基盤強化。
 
外に向けては、中国を中心に据える、一帯一路政策や、軍事力を背景にした、強引な海洋進出などの、拡大主義的な動き。

そんな中国の今後を、興梠さんは、次のように分析します。
 
神田外語大学・興梠一郎教授「(国民は)経済が拡大していって、それなりにみんなこの政権でもいいんじゃないかという雰囲気ができあがった。歪んだ構造のまま進めていこうとするから活力がどんどん無くなっていく。今まで隠されていた問題が表に出てきて、ますます治安維持をしないといけなくなる。守りに入ると、政権維持が最優先、経済などは二の次に。大変な転機にきている」
 
天安門事件から30年、今や世界的に大きな影響力を持つ中国は、いったい、どこへ向かおうとしているのでしょう。

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