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2019/08/25 風をよむ「グリーンランド、買えるの?」

アメリカ トランプ大統領(18日)「グリーンランドには戦略的に興味がある。デンマーク側と話してみる。本質的には大きな”不動産取引”だ。」

18日、突然グリーンランドの買収に言及したアメリカのトランプ大統領。グリーンランドの住民は・・・。

グリーンランド 住民「トランプ氏は何でも買えると思ってるんでしょうね。でも残念ながらそうは行かないわ。」

さらにグリーンランドを領有する、デンマークのフレデリクセン首相は、
「ばかげた議論だ」と拒否。

この言葉に憤慨したトランプ大統領は、9月初めに予定していた
首相との首脳会談を、キャンセルしてしまいました。

世界最大の島・グリーンランド。面積は日本の6倍近くもありますが、 大部分が北極圏にあり、その80%が一年中、雪と氷で覆われる島です。

14世紀末にはデンマーク領になっていましたが・・・。

第二次大戦で本国・デンマークはナチスドイツが占領。
グリーンランドは暫定的にアメリカの保護領となりました。

戦後の1946年、アメリカのトルーマン大統領が1億ドルで、グリーンランド購入を提案したことがありましたが、実現せず、1953年、グリーンランドはデンマークの一部になったのです。

ではなぜ、今、トランプ大統領は、買い取り話を持ち出したのでしょう。

グリーンランドと言えば以前は氷に覆われた状態でしたが、最近、こんな映像が話題になりました。暑さで溶け出した氷原を、まるで海をわたるように走る犬ぞり。

温暖化により、これまで妨げとなってきた、厚い氷が溶け出したことで、石油などの資源開発の可能性が見えてきたのです。
  
土地取引を生業にしてきたトランプ氏にとっては、まさに、宝の島。しかし、この買収計画の裏には、もう一つ、複雑な事情があるのです。

北極海を中心にした周辺地域をながめてみるとグリーンランド、ノルウエー、ロシア、カナダ、さらに、アメリカのアラスカ州などが、向き合い、その背後には中国も。国際政治の専門家は・・・。

青山学院大学・羽場久美子教授(国際関係学)「今、北極圏というのがかなり各国先進国の新たな経済的、安全保障上の重要地域になってきている。この地域にアメリカや中国が積極的に介入しようとしています。飛行機にしてもミサイルにしても非常に短時間で目的地に着くことができるという点では、安全保障上も極めて重要な地域なので、だからこそ北極海の争奪戦が行われている」  

23日金曜日、北極海に面した町に向けて出発したロシアの構造物。これは世界初の、”海に浮かぶ”原子力発電所なのです。
「氷上のチェルノブイリ」との批判も上がる中、年末にも稼働の予定です。

さらに、アメリカ国防総省の報告書では、この北極海で勢力拡大をにらむロシアは、北極海航路を利用する外国船に事前の許可を要求。従わない場合は、軍事的行動も辞さない姿勢だと指摘されています。

また北極圏については、中国も、「一帯一路」の一環として、「氷上シルクロード」の建設を表明。砕氷船を建造したり、グリーンランドの空港整備計画に、融資を持ちかけたこともありました。米軍基地があるグリーンランドを丸ごと買おうという、トランプ発言。その背景には、こうしたライバル国の動きがあったのです。

国益を掲げた国家間のせめぎ合いは、北極海だけではありません。

ヨーロッパでは、ロシアによる、ウクライナ南部クリミア半島への侵攻。

南シナ海では、南沙諸島の実効支配を強める、中国の動き。

また、中東でも・・・。

アメリカ トランプ大統領(3月・ワシントン)「私はゴラン高原での、イスラエルの主権を認める宣言に署名する」

トランプ大統領の、この発言で一気に緊張が高まったゴラン高原。

アジアでも・・・

カシミール地方を巡る、核保有国同士のインドとパキスタンの対立。

デモ参加者(14日)「パキスタン政府に言いたい。軍事行動をすぐに起こせ!そしてカシミール地方に閉じ込められている人たちを解放せよ!」

なぜ、こうした動きが、広がりを見せているのでしょう?

青山学院大学・羽場久美子教授「現在は、200年から300年に一度の、大きな転換点。米国や英国が引っ張ってきた近代世界が徐々に頭打ち状況になって来ていて中国やインドのような国々が追い越しつつある。そうした中で、先進国と新興国のはざまの、領土、領域、辺境の境界線で、大国と小国、先進国と新興国の衝突が起こってきている。」

人類が迎えた大きな転換点。世界はどこへ行くのでしょう。

アメリカ トランプ大統領「大きな“不動産取引”だ。やれることはいろいろある・・・」

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