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男子は2連勝に挑む林田が日本記録も視野にMGC出場権を持つ36歳・佐藤、千葉大大学院卒の今江も有力候補【全日本実業団ハーフマラソン2023プレビュー①】

 第51回全日本実業団ハーフマラソンが2月12日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで行われる。男子は前回優勝者の林田洋翔(三菱重工・21)が2連覇に挑む。対抗するのは佐藤悠基(SGホールディングス・36)と古賀淳紫(安川電機・26)、MGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)出場資格を持つ2人。さらには日本選手権10000mに優勝経験のある大六野秀畝(旭化成・30)、茂木圭次郞(同・27)らスピードランナーも黙っていない。そして千葉大大学院卒業の今江勇人(GMOインターネットグループ・25)がダークホース的な存在だ。

●「去年は勢いだった」と言う林田

 今大会の上位選手はハーフマラソンの海外大会に派遣される。前回優勝の林田が日本記録だけでなく、世界で戦うレベルの記録も視野に入れて臨む。
「世界ハーフマラソンでしっかり戦うには60分をちょっと切るくらいではなく、59分40秒台も視野に入れて臨みます」
 ただ、自信の程度を問われると、「正直、ないです(笑)」と率直に答えた。「ないですけど、やるからにはしっかり行きたい。去年は勢いで行けた感じだったので、今年は力が付いたことをしっかり見せたい」
 実業団3シーズン目の21歳だが、スポーツマンらしくチャレンジする姿勢と、自分を冷静に見つめる部分を併せ持っている。
 前回は最初の5kmを14分29秒で入り、10kmまでを14分22秒、15kmまでを14分23秒、20kmまでを14分21秒という5km毎のスプリットタイムを刻んだ。最初の5kmは上りがあるため若干ペースは落ちるが、ほぼイーブンペースで走り切った。
「今年は最初の5kmを14分20秒を切ったくらいで入れれば、と思っています」と林田。そのリズムなら5km以降は14分13秒前後になる。5km平均14分13秒を21.0975kmに換算すれば1時間00分00秒だ。
 最初の5kmのマイナスをどこで取り戻すか、という計算よりも、昨年のように終盤まで競り合いになれば、自然とタイムは上がる。勝負に勝てば記録も期待できる。

●佐藤をはじめMGC出場権を持つ選手が8人エントリー

 優勝候補は林田だけではない。林田、前回6位の今井崇人(旭化成・26)、同11位の佐藤悠基、同12位の難波天(トーエネック・23)の招待選手4人は、1時間00分台の記録を持ち、誰が勝ってもおかしくない。
 特に注目したいのは36歳の佐藤だ。20歳台にはトラックで大活躍し、12年ロンドン五輪と11年&13年世界陸上に出場。ニューイヤー駅伝でもスピード区間の3区と、最長区間の4区で何度も区間賞を獲得した。
 マラソンの距離が壁となったが、昨年の今大会で1時間00分46秒の自己新をマークし、4週間後の東京マラソンでは2時間08分17秒の自己新で走った。その走りですでに、MGC出場資格も獲得した。42.195kmの距離も、じっくり時間をかけて手の内にしようとしている。
 元旦のニューイヤー駅伝は1区で区間10位。区間1位選手と5秒差でタスキをつなぎ、チーム過去最高順位の6位入賞に貢献した。チームスタッフによれば駅伝以降も、状態を上げている。自己記録更新も期待できるという。
 佐藤以外にも
古賀淳紫(安川電機・26)
湯澤 舜(SGホールディングス・26)
橋本 崚(GMOインターネットグループ・29)
青木 優(Kao・32)
赤﨑 暁(九電工・25)
松本 稜(トヨタ自動車・32)
山本翔馬(NTT西日本・27)
 とMGC出場権獲得選手がエントリーした。中でも古賀は、20年の今大会で日本人トップの2位、21年大会では日本人2位の4位と、ハーフマラソンで強さを見せている。
 MGC選手たちがスピード持久力を生かし、ロングスパートで勝負に出るかもしれない。

●10000m27分台のスピードランナーも多数

 トラックのスピードランナーたちも多数出場する。世界陸上代表経験選手としては佐藤のほか、3000m障害で17年世界陸上ロンドン大会代表だった潰滝大記(富士通・29)と、21年東京五輪、22年世界陸上オレゴンに出場した山口浩勢(愛三工業)がエントリーしている。特に潰滝は駅伝でも活躍しているだけに、21.0975kmのハーフマラソンでも優勝争いに加わってくる可能性はある。
 それ以上に可能性があるのは、10000mを27分30~40台で走っている選手たちだ。佐藤、茂木、大六野、難波、潰滝が該当する。27分50秒台まで広げると今江、田中秀幸(トヨタ自動車・32)、古賀、大池達也(トヨタ紡織・32)、太田直希(ヤクルト・23)、森山真伍(YKK・24)ら、全員の名前を挙げきれない。
 特に注目したいのが、千葉大大学院ルーキーの今江だ。
 東日本実業団駅伝3区区間7位(区間1位と8秒差)、八王子ロングディスタンス10000mで27分50秒93の自己新、ニューイヤー駅伝5区区間3位、全国都道府県対抗男子駅伝3区区間2位と、高いレベルで安定した戦績を残している。
 今大会では「順位にこだわりたい」と亀鷹律良監督は言う。
「全国都道府県対抗男子駅伝では1秒差で区間2位でしたから、やはり1番じゃないとダメだよね、と話し合いました。今回は順位にこだわります。タイムは自ずとついて来るでしょう」
 潜在能力の高さを感じさせる今江が、実業団入り後初のハーフマラソンでどんな走りを見せるか。是非とも注目してほしい。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト


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