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3連勝を目指す富士通は代表経験者が多数。最長区間の3区候補は塩尻と横手【東日本実業団駅伝プレビュー②】

日本代表経験者を多数擁する富士通が1位通過を目指している。東日本実業団駅伝は11月3日、埼玉県庁をスタートし熊谷スポーツ文化公園陸上競技場にフィニッシュする7区間76.9kmで行われ、上位12チームが来年元旦のニューイヤー駅伝出場権を得る。
 富士通は東日本大会2連勝中で、21年のニューイヤー駅伝にも優勝したチーム。今年のニューイヤー駅伝は12位と敗れたが、戦力的には実業団チーム一二を争う。マラソン勢は出場しないが、東京五輪5000m代表だった松枝博輝(29)と坂東悠汰(25)、3000m障害で日本代表経験がある塩尻和也(25)と潰滝大記(29)ら、日本代表クラスが揃う。
 今季のチーム状態と東日本大会の戦い方を高橋健一駅伝監督に取材した。

●3000m障害から5000m、10000mにシフト中の塩尻

注目は最長区間の3区を誰が走るか。過去2年間はコロナ禍の影響で熊谷スポーツ文化公園内周回コースでの開催だったが、最長区間は同じ3区で、一昨年は東京五輪マラソン代表の中村匠吾(30)が、昨年は塩尻和也(25)が走った。
 高橋駅伝監督は「勝てるときに勝っておきたい」と、今年は優勝を狙うことを明言しているが、富士通は東日本大会をニューイヤー駅伝へのテストと位置づけることも多い。優勝を狙いながら区間や選手によっては、お試し的な要素を持たせる感じだろう。
 ニューイヤー駅伝最長区間の4区(22.4km)は19年以降、中村が走ってきた。勝負強い選手で21年の優勝時にも、4区終盤で2位以下を突き放した。だが東日本大会は中村、世界陸上オレゴン代表だった鈴木健吾(27)、今年の大阪マラソンで2時間07分52秒(3位)をマークした浦野雄平(25)のマラソントリオは故障の影響で出場しない。
 高橋駅伝監督は塩尻と横手健(29)を今年の3区候補に挙げる。
 16年リオ五輪と19年世界陸上ドーハは3000m障害代表(ドーハはケガで欠場)だった塩尻だが、昨年後半からは5000m、10000mに重きを置いている。今年の日本選手権10000mは28分04秒70の5位。「どんな種目でも走れる選手ではあるのですが、今は中途半端というか、突き抜けていません」(高橋駅伝監督)
 順大4年時には、箱根駅伝エース区間の2区の日本人区間記録を出したこともある。東日本大会で3区なら、ニューイヤー駅伝4区へのステップという位置づけになる。今季のニューイヤー駅伝で“突き抜ける走り”ができれば富士通がV奪還に近づく。
 横手は17年、18年と入社してすぐにニューイヤー駅伝4区を任された選手。その後は調子を落としていた時期もあったが、今季は5000mで日本選手権6位、全日本実業団陸上10位(日本人3位)と充実している。
「故障をしなくなったことと、マラソン練習を始めたことが良い形になっています」(高橋駅伝監督)
 期待されてきた横手が最長区間に復帰し、エースの走りをする可能性がある。

●中盤3区間で攻勢に出るプラン

富士通はとにかく、選手層の厚さがすごいチームである。東京五輪5000m代表コンビのうち松枝は、5月の日本選手権10000m6位と長い距離にも対応し、5000mなら13分30秒台前半はいつでも出せる力を見せている。
 坂東はシーズン前半は調子を落としていたが、9月に「1500mを2本走って調子を立て直した」(高橋駅伝監督)ことで、10月のAthletics Challenge Cup5000mで13分21秒94と、自己記録に3秒少しと迫る好タイムをマークした。
 若手も成長し、2年目の塩澤稀夕(23)は日本選手権5000mで8位に入賞し、自己新もマークしている。新人2人も実業団競技生活に慣れ始めたという。飯田貴之(23)は青学大出身で学生駅伝でも活躍したが、椎野修羅(23)は麗澤大出身で学生時代は目立たない存在だった。
 10月22日の平成国際大長距離競技会10000mは、練習のペース走に近い感覚のレースと位置づけられ、富士通の日本人9選手が並んでフィニッシュした。終盤で予定より少しタイムを上げたのは、椎野の自己記録(28分37秒03)を破るためだった。椎野は28分35秒42の自己新だが、「抑えて行かせました」と高橋駅伝監督。
「入社当初は練習でも置いて行かれたりしましたが、その後は練習にもつけるようになって、飯田もそうですが、夏の十和田八幡平駅伝で区間賞を取りました。順調に来ていますよ」
 今の富士通はマラソン選手を起用しなくても、全区間が好調の選手たちで埋まってしまう。
 コース的には1区が一斉スタート、2区がインターナショナル区間、3区が最長区間という特徴になる。JR深谷駅前で折り返した後の6区が追い風となり、そこは選手の適性を見て起用されるが、4区以降の4区間は距離的にはそこまで大きな違いはない。
 だが高橋駅伝監督は最短距離の5区に、それなりに強い選手を配置するという。
「3、4、5区の中盤3区間である程度は(先頭集団を)絞り込んで、優勝争いに持ち込みたい。うまく行ったら5区で決めたいですね」
 富士通の3区、5区の起用選手と、3~5区のレース展開にはしっかり注目したい。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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