見出し画像

【東日本実業団駅伝注目チーム① Honda】

複数の東京五輪代表を擁する富士通とHondaが激突
Hondaは伊藤、青木、小山が成長し若手3本柱に

 東日本実業団駅伝が11月3日、埼玉県熊谷スポーツ文化公園陸上競技場及び公園内特設周回コース、7区間76.4kmで行われる。
1区・13.4km:競技場2周+周回コース(1周4.2km)3周
2区・ 8.4km:周回コース2周
3区・16.8km:周回コース4周
4区・ 8.4km:周回コース2周
5区・ 8.4km:周回コース2周
6区・ 8.4km:周回コース2周
7区・12.6km:周回コース3周
 前回優勝の富士通と、若手3人の成長が著しいのHondaの優勝争いが注目される。前回2位のGMOインターネットグループがそこに加わるか。さらには全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)4位の日立物流、同7位のJR東日本、同8位のヤクルトなど、本大会でも入賞できる力を持つチームが多数出場する。また、上位12チームに与えられるニューイヤー駅伝出場権争いも熾烈を極める。

●五輪選手同士のトップ争いが展開するか?

 富士通とHonda、複数の東京五輪代表を輩出した2チームの優勝争いとなりそうだ。
 富士通はマラソンの中村匠吾(29)に5000mの松枝博輝(28)&坂東悠汰(24)、3人が東京五輪に出場した。Hondaは10000mの伊藤達彦(23)と3000m障害の青木涼真(24)の2人。中村は東京五輪のダメージが十分に回復していないため今回は出場しない。2名ずつが東日本大会を走ることになるだろう。
 コロナ禍の影響で開催場所は昨年、今年と熊谷スポーツ文化公園内の周回コース。重要区間は最長距離の3区、2番目に長く流れを左右する1区、順位変動が起きやすい4区、3番目に長いアンカーの7区と言われている。2区はインターナショナル区間で、外国人選手が在籍するチーム(上位チームは全チーム)はアフリカ選手が走る。
 富士通は1、3区を、前回1区区間賞の浦野雄平(24)とリオ五輪3000m障害代表だった塩尻和也(24)で分担する。塩尻は箱根駅伝2区(エース区間)の元日本人最高記録保持者でもある。坂東と松枝は距離の短い4~6区に登場しそうだ。
 一方のHondaは小川智監督によれば、東京五輪コンビに小山直城(25)を加えた3人を、主要4区間に起用する予定だという。小山は10000mで27分55秒16を筆頭に、今季28分前後で3レース走り、その全てが日本人1位という安定した強さを見せている。前回は1区が青木、3区が伊藤だった。距離を考えると今年も同じ配置が有力だが、青木が9月の全日本実業団陸上5000mで13分21秒81の今季日本最高で日本人トップで走るなど、五輪を経てさらに力を付けている。青木が3区の可能性も十分ある。
 富士通の塩尻も4月に5000mで13分22秒80の自己新で走っている。全日本実業団陸上10000mでは腹痛を起こして低調な記録に終わったが、10月第4週の10000m記録会では腹痛を起こさずに28分50秒前後で走り切った。塩尻と青木の3000m障害五輪選手同士の対決が、1区か3区で実現したら興味深いものになる。

画像1

●全国“3強”に匹敵する選手層になったHonda

 昨シーズンの東日本実業団駅伝、ニューイヤー駅伝に優勝した富士通の陣容については別記事として紹介するが、Hondaも負けていない。
 前述の伊藤、青木、小山の3人に、新人の小袖英人(23)と川瀬翔矢(23)が加わったことが大きい。小袖は全日本実業団陸上5000mで13分23秒94の今季日本4位の好記録で走った。川瀬は昨年の全日本大学駅伝2区で区間賞を取り、17人抜きの韋駄天走りを見せた。今季は故障で出遅れていたが、10月2日の5000mでは13分38秒32まで記録を上げてきた(自己記録は13分28秒70)。
 マラソンでも今季のHonda勢は好記録を連発している。2月末のびわ湖マラソンで土方英和(24)が2時間6分台、足羽純実(26)が2時間7分台、松村優樹(28)が2時間9分台をマークした。自己記録では設楽悠太(29)も2時間6分台、木村慎(27)も2時間7分台を持つ。
 設楽はマラソン練習に入っているが、距離を踏むよりもレースを連戦して調整していく選手。そのパターンに変化が生じているというが、マラソン練習中に駅伝に出ることはまったく問題ない。「その時点で強い選手を上から7人選ぶ」(小川監督)のが、Hondaの東日本大会に対するスタンスだ。
 山中秀仁(27)や田口雅也(29)らHondaの駅伝を支えてきたメンバーも、「元気です」と小川監督は期待している。
 昨シーズンの実業団駅伝は、ニューイヤー駅伝優勝の富士通、2位のトヨタ自動車、3位の旭化成が3強と言われ、どのチームも分厚い選手層を誇った。今季のHondaは昨年の3強に匹敵する選手層になった。

●Hondaの強さの理由は?

 Hondaの強さは設楽が結果を出したことが基盤になっている。ニューイヤー駅伝最長区間の4区で区間賞を3回取り、マラソンでは18年に2時間06分11秒と、16年ぶりに日本記録を更新した。
「あの頃は悠太の練習はすごいな、と思いました。彼しかできない練習だったのですが、今はそのレベルの練習が何人もできるようになっています。チームが強くなっている実感はあります」と、小川監督は大きな手応えを感じている。
 動きの「精度を高める練習」(青木)の効果も出ていると思われる。だがそれよりも、結果を出す選手が次々に現れることによる相乗効果が大きいと小川監督は見ている。
 昨夏、伊藤が10000mで27分台を出し(12月の日本選手権で従来の日本記録を上回って2位)、刺激を受けた同期の青木が3000m障害で記録をどんどん伸ばしていった。小山も入社当初は、1年目でニューイヤー駅伝3区区間2位となった中山顕(24)と切磋琢磨し、昨年からは伊藤、青木に刺激を受けている。土方や足羽は設楽という先輩を目標にしながら、トラック組の活躍に触発されてマラソンで記録を伸ばした。
 Hondaの東日本実業団駅伝は、まずは若手3本柱に注目すべきだろう。伊藤、青木、小山がライバルである富士通の五輪コンビや塩尻、GMOインターネットのエースである吉田祐也(24)らを相手に区間賞が取れるかどうか。
 そして3人以外の選手が、主要区間以外で確実に区間賞争いができるかどうかも、重要なポイントになる。「3本柱が練習でも強いのですが、3人以外がもう少し育たないとニューイヤー駅伝では勝てないのでは、と思っています」と小川監督。
 五輪選手同士の対決が注目を集める駅伝になるが、ニューイヤー駅伝の戦いを考えると、主要区間以外の選手の走りにもしっかり注目する必要がある。

画像2

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?