2017年後半に感動したビジネスモデルまとめ10個

チャーリーです。

ビジネスモデルを図解するシリーズを息抜きにはじめました。ひとまず10個まで書いたので、noteにまとめておきます。

100の事例を図解した「ビジネスモデル2.0図鑑」という本を発売しています(本記事の事例ふくむ)。予約開始と同時にnoteで全文無料公開という試みをやっています。本記事に興味を持ったらそちらもどうぞ!

ビジネスモデル図解シリーズを始めるきっかけになったサービス、Lemonade。

AMPの記事にわかりやすく詳細が書かれてるので引用。

ソーシャルインシュランスにおいて重要になるのが、どのようにしてグループを組めば、グループ内での保険の請求額が、そのグループにプールされている金額を超えないかだ。
Lemonadeでは、サービスに加入する際に、自身が関心のある社会課題を選ぶ。社会課題の中には支援や病児支援などが存在する。その社会課題に基づいてグループ分けが行われ、グループ内で請求されなかった保険の余剰金は、その社会課題の解決に取り組む団体に寄付されるという仕組みだ。
サービス上で、同じテーマを選んだ人同士でグループが作られ、社会課題になるべく多くの保険の余剰金を寄付できるよう、お互いに保険の請求が発生しないように振る舞うインセンティブ設計がなされている。
Lemonadeは、優れたユーザーインターフェイス設計を行うこと、従来の保険のビジネスモデルに立ち返ること、社会への貢献意識を刺激すること(ソーシャルグッドであること)、この3つが組み合わさることで、高度に複雑化した「保険」を解きほぐし、ミレニアル世代を魅了したように思える。

via https://amp.review/2017/08/25/lemonade-insurance/

最近、金融系の新しいサービスはどんどん出てきてるけど、保険みたいなレガシーな業界にもこういうソーシャルな波が押し寄せてきてるのは面白い。

違法な銃をリサイクルしてできた「ヒューマニウム」と名付けられた金属。素材が新しいわけではないのに、この名前を登録商標にして名付けちゃったのがまずすごいんだけど、その仕組みもよくできてるので図解してみた。このサプライチェーンをつくるのに2年かかったらしい。しかもこれ、カンヌでイノベーションライオンズを受賞してるんですよね。

この記事に詳細のってます。

ヒューマニウムの公式のサイトはこちら。

友達に300円から寄付を募れるアプリ「polca」。
クラウドファンディングならぬフレンドファンディングと称して、少額支援にして、プロジェクト立ち上げの審査をなくして、すぐにはじめられるようにしたのが面白いところ。あのクラウドファンディングで有名なcampfire社の新サービス。

お金をもっとなめらかに。
お金でもっとなめらかに。
お金がコミュニケーションと共にある世界を目指して。
っていう理念がまたよい。

ツイッターにも書いたけど、polcaは、利己的×切実なものはなかなか支援集まらない感じがする。それだけ切実なら自分でお金出そうよってなっちゃう。一方、利他的×切実なもの(NPO等)は集まりやすく、利己的×切実ではないもの(明らかにネタ系)も集まりやすいように感じる。

なので最近はNPOが続々とpolcaを使う事例が増えてるので、これまた面白い!これもどちらかというと、支援金額というよりも、支援者と緩やかに繋がることができるってところがよい。今後のアップデートにも期待。

polcaの公式サイトはこちら。

個人の時間を市場で売り買いするアプリ「TimeBank」。
「時間を売り買いする市場」と聞いただけだとおそらく多くの人がはてなかもしれない。でもすごく可能性を秘めたサービスだと思う。今まで、自分のスキルを切り売りするようなサービスは多くあった。けど、結局それは販売する側と、購入する側だけの取引だった。
TimeBankはまずそれを「時間」そのものを販売するという、一段階抽象度高い商品にしたのがすごい。さらに、その商品を市場に流通する仕組みにすることで、販売された時間を第三者同士が売り買いできるようになるってところがミソ。こうすることで、最終的には自分の時間を自分で値付けせず、市場の需給関係で値付けが決まり、その人の時間価値が決まっていく。

TimeBankのミッションも壮大で良い。(以下公式サイトから引用)
1. 個人が主役の経済
企業が中心である既存の経済から、自分の影響力や専門性を資産として生きていける「個人」が主役の新しい経済を実現します。

2. 時間を通貨とする経済
万人に平等な「時間」が通貨のように機能する経済を作り、人生における時間の価値を再認識してもらうことで人々の生き方を変えていきます。

3. 経済を選べる時代
人類が進化と共に住む場所や職業や結婚相手を選べるようになったのと同様に、個人が自分に合った経済を「選べる」時代を作ります。現状、だれでも時間を売り出せるわけではなく、一定の基準を満たした人だけが売り出せる。
(引用ここまで)

個人的には、メタップスの代表の佐藤さんがNewspicsでも話していた、3の経済を選べるようになるという話が面白い。ある経済では浮かばれない人も、違う経済では生きやすいかもしれない。よくもわるくも経済的なルールに支配されやすい世の中で、それをうまく逆手にとって、個人の人が自分らしく生きやすい世界をつくろうとしているように思える。

Timebankの公式サイトはこちら

ちなみにTimebankのビジネスモデルが一番リアクションが多く、メタップス代表の佐藤航陽さんに「俺が作る資料より見やすい笑」とお褒めの言葉をいただきましたw


持ち物をすぐに現金化できるアプリ「CASH」。
審査がないので、アイテム登録すると、速攻現金化できる。
ただこれは実際には、何のブランド/メーカーなのか、どんなカテゴリの商品かを選択肢から選ばせてるので、それがそのまま査定になっているという仕組み。

キャンセル手数料が15%だったこともあり、質屋アプリだと騒がれて炎上と需要加熱のためか一時サービス停止にまでなってしまったけど、そのあとのサービスアップデートがすばらしかった。

8月24日に再開。再開しましたのページも誠実な感じが出ていて良い。
https://cash.jp/comeback/

キャンセル手数料は廃止、評価制度導入、写真はライブラリからの選択は不可にしてその場で撮影のみ、にしたことで、適当に画像を持ってくるみたいな悪ノリはできなくなり、だいぶクリーンな仕組みになった。
こういう金融系のサービスはともすると怪しいとかなんとか思われやすいところを、しっかり仕組みで変えようとしているところがすばらしい。クリエイティブに力を入れてるところもすてき。

CASHの公式サイトはこちら。

信頼できる記事と人がわかるメディア「ALIS」。

昨今、ネット上のコンテンツの質が問われている中、彼らはそれを、広告収益モデルに頼るためにどうしてもPV偏重になってしまう、構造的な課題だと指摘。PVを稼ぐことに経済的なインセンティブが偏るために、そのような質の低下が起きやすい状況になっている。彼らはそれを、仕組みで解決しようとした。

このメディアのすごいところは、記事を書いた人にも金銭的なインセンティブがあるだけでなく、記事を評価した人にも金銭的なインセンティブがあるところ。しかも、優れたコンテンツをいち早く発掘すると、よりインセンティブが高まる。

そうなると、原資はどこから出てくるの?ってことになるけど、それは仮想通貨による資金調達(ICO)によって解決。広告収益モデルに頼らずに、よりよいコンテンツが評価されるエコシステムをつくる取り組み。すばらしい。

公式サイトからslackに参加できるんですが、熱気がすごい(注:いまはslackへの参加は一時停止している・スパム対策のため)。しかも、trelloで今後のロードマップが全部可視化されている。透明性のあるプロセスを徹底しているところがすごい。

ALISの公式サイトはこちら

ALISの英語バージョンも図解。
「海外のマーケティングを強めたい」と、ALISの方が言っていたので、英語バージョンもつくりますよといって、ぜひ、とのことだったので、英語は監修いただいた上で制作。英語圏の方にも結構シェアされたみたいなのでよかった。
ICOですでに数億調達しているALIS。今後にも期待。

ソーシャルインパクトボンドって聞いたことある?
2010年にイギリスではじまった、民間資金を活用した官民連携による社会課題解決の仕組み。・・と、こう書くとちょっと固いけど、要は、いままで行政がサービスを行うときに民間の事業者に委託していたものを、活動に対して支払うのではなく、成果報酬で支払うようにするというもの。

そうすると、事業をはじめる最初の資金はどうするの?ってことになるけど、それを、民間の資金提供者から投資してもらう構造。資金提供者も、成果が出たらリターンがあるようになっているという仕組み。

こうすることで、行政は財政的なリスクをおさえて、公共的な事業にチャレンジしやすくなる。いまこの仕組みが世界中で取り組まれていて、日本でもパイロットテストが済み、具体的な実施が神戸市や八王子市ではじまってる。
日本財団によれば、すでに16か国60件以上、約220億円の規模で広がっているとのこと。まだ、成功事例が少ないこともあって、いろいろ実験段階なのだろうけど、こうして民間を巻き込んで行政がチャレンジする事例が増えるのはいいことだと思う。

オンラインブランドのシェア小売店「Bulletin」。
この記事をみて知りました。

WeWorkのリテール版が登場「オンラインブランドのシェア小売店」ネット界の“いま”を実店舗で再現

一瞬、なんだこれはただのセレクトショップじゃないのかと思いかけたのだけど、場所をシェアして細切れにするだけでなく、時間も月単位で借りれて細切れにしたことで、実はうまいソリューションになっている。

ニューヨークのような一等地は、地価が高く、一度借りる人が抜けてしまうとまた次借りる人がくるまでに少し時間が空いてしまったりする。そこにこのBulletinは着目して、短期間でうまく活用できますよっていうことで、低価格で借りることに成功してる。実店舗をやる上で立地は超重要。
ブランド側にとっても、これまで実店舗を持つためにあったハードルを解決できている。好立地を手に入れたことでブランド側も乗っかりたくなるし、しかも月単位でいい。ポップアップストアもできちゃう。
時間と場所の両方を刻んだことで、物件オーナーの課題と、ブランド側の課題の双方をうまく解決してる。しかも、WeWorkのリテール版とかいってちゃっかりシェアリングエコノミー的な文脈にうまく乗っかってる。うまい。

北京発の話題の自転車シェアリングサービス「Mobike」。
いいことをするとポイントがもらえて、よくないことをするとポイントが下がっちゃうという仕組みが、よくできてる。そもそも自転車のレンタルはあったけど、返却がされなかったり、盗まれたり、壊したりしちゃうことが問題で、倫理的に利用することが中々難しい領域だった。そういう、ビジネス特有の課題をうまくインセンティブで解決しようとしている。
既に日本にも上陸していてまずは札幌から始まり全国に広がっていきそうな予感。ただDMMやメルカリも自転車シェアリング事業に乗り出したので、ここは激しい戦いになりそう。

公式サイトはこちらから。

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ということでここまでで10個のビジネスモデル(ALISの英語バージョンも含めるので実際には9種類)をご紹介。twitterのモーメントにもまとめてます。

すっごくよくできてる!だけど一見わかりにくい・・という仕組みを、なんとかわかりやすく全体像を見える化できないかと思い、書きました。単純に、自分が感動した仕組みを、自分の解釈混じりで書いてるので、恣意的な部分があることをお許しください。また、2017年8月〜9月頃書いたものがほとんどのため、11月現在状況が変わっているものがあるかもしれません。

もしどこかの何かでこれらの画像を使いたいという方がいたら、ご連絡ください。基本自由に使っていただいて構いませんが、どこで使われたかだけ知りたいので。

そして書き始めたときは全く覚えてなかったですが、学生時代に読んだ「ビジネスモデルを見える化する ピクト図解」という本のビジネスモデルの書き方に、かなり影響を受けていたことを後から知りました。ここでお礼をさせてください。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。最近は、 #ビジネスデザイン図解シリーズ という新たな連載をtwitter上でしているので、それもある程度数が集まってきたらまたnoteにまとめでも書こうかと思います。

以上です。

追記)もともとデスクトップ上でスライド形式で作成していることもあり、画像の文字が小さくて見づらいので、せめてもの策としてPDFファイルを置いておきます。記事内にあるビジネスモデルの画像が全部入ったPDFファイルです。
PDFファイルをダウンロード

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