ビジネスモデル図解教室2

ビジネスモデル図解を生放送でレビューしてみた

チャーリーです。

先日、Schooで「ビジネスモデル図解教室」という生放送番組に登壇しました。第一回目は講義形式、第二回目は視聴者の方から提出してもらった図解をレビューする、というものです。この記事では、第二回目で話した、どんなふうに図解をレビューしたのかを図解とともにまとめたいと思います。

ビジネスモデル図解ツールキットについてはこちらの記事参照

ここからは、ビジネスモデル図解教室の第一回目で視聴者から募集したビジネスモデル図解を、生放送でレビュー。ぜんぶで6この図解を取り上げました。

農業体験っていうとふつうは「農家」が案内することが多いけど、このビジネスでは「ガイド」が案内していると。しかもそのガイドは、地元住民の方で、シニア層の方が多いので、彼らにとっての生きがいも生み出すことにつながってるみたい。

提出してもらった図解がこれ。まずは真ん中の列からみていく。「参加者」は「農場ピクニック」という事業・サービスに対して参加費を支払うことで参加できる。その「農場ピクニック」は(株)いただきますカンパニーという会社が事業運営している。

次に左右をみる。農業体験には欠かせない「農場」が左に、活動自体のファンになって発信する「メディア・旅行会社」が右にきている。地域のシニアがガイドになり(右下)、企業・自治体が右上にきている。

で、僕が図解をちょっとだけアップデートしてみたのがこちら。ここでは「情報の引き算」を意識しています。前の図との違いわかる?このビジネスにおいて重要なのは、ガイド役の地域のシニアだから、右真ん中にメディア・旅行会社ではなく「地域のシニア」を置いたほうが、より事業の説明がクリアにできるのではないかと思いました。

さらに、メディア・旅行会社を通じて参加者に対してツアーが紹介されるため、メディア・旅行会社は外せないので右上に移動し、もともと右上にいた「企業・自治体」というステークホルダーは、優先度が一段落ちると考え、あえて図の中から削っています(ただ、地方のビジネスにおいて自治体の役割が重要、みたいな意見もあったので、その重要性をメッセージとして込めるなら、入れるのもありだと思います)

「仕組み上、説明必須な主体のみ残す」ということをポイントとして話しました。言葉の意図としては、どうしても図解をつくると、いろんな情報を入れたくなってしまうんだよね。なのでそんなときは、これがないと絶対説明できない、というものを意図的に残して、あったらベターかも、というものは極力省くみたいにしてみると、より説明しやすくなると思います。

後日、農場ピクニックの図解をしてくれたフミコさんがその模様をツイートしてくれてた。ありがとうございます。

ビジネスモデル2.0図鑑にもSHOWROOMを事例として載せてますが、あえて見ずにかいてくれたとのこと。

この図は、書籍執筆時に初期にかいた図解と似ていたので、とても気持ちがわかった。サービスを説明するという意味では、これで成り立つと思います。

この図は書籍にも掲載した図なんですが、提出してもらった図解との違いがふたつ。オーガナイザー(事務所)の存在と、株式会社ディー・エヌ・エーの存在です。前者は、実際には配信者(図上は強調的にかくためにアイドルとしてますが)がお金のやりとりをするわけではなく、事務所を通してお金のやりとりがされ、その収益を分配するというモデルになっています。後者は、より補足的な情報だけども、もともとディー・エヌ・エーのサービスだったものが、会社分割され単独の事業会社になっているという点も、書いたほうがよりビジネス上の背景が伝わりやすいかなと思い、載せています。

今回みたいに、実際にはどこにお金が流れているか、を押さえることは、ビジネスモデルを語る上では重要だと考えています。ビジネスモデルは、誰がどんな価値(お金、モノ、情報などの経営資源)を交換しているのか、に経済合理性が成り立っていることだとが重要だと思うので、お金の流れをよりつよく意識できるとわかりやすいかなと。

こちらが提出いただいた図。この図を見て何かおもうことはありますか?

僕がすこし調整した図。まだサービス自体がリリースされていないこともあり、これが正しいか、あやしいところもありつつ、レビューした意図としては大きく分けて3つ。

1. だれがその事業を運営するのか?下の事業者の段をより詳細に書く

このウォレットアプリは、すこし調べるとどうやら、クラウドワークス本体ではなく、クラウドマネーという会社の事業らしいと。クラウドマネーは、クラウドワークスとJapan Digital Designという会社が共同出資してできた会社でした。なので、図にはそのように分解して表現してます。さらに、補足として、Japan Digital Designという会社は、三菱UFJフィナンシャル・グループの小会社だということで、フリーランスのネットワークを持っているクラウドワークスが、銀行系と組んで、決済関連のサービスを出そうとしてるんだなというところまでわかります。

2. どの事業について話してるのか?

もともとの図には、左側に「派遣先企業」という主体がありました。それに対して労働を提供して、対価を得る、というようなことが表現されてます。ただ、この流れ自体は、どちらかというとクラウドワークス本体のサービスについての説明かなと思って、それよりウォレットアプリそのものの説明ができた方が、図解としてはクリアかなと。なので、ちょとざっくりしてますが、「報酬」という主体を代わりに入れました。こうすることで、ウォレットアプリというのは、報酬という主体を従属させている概念なんだということがわかります。クラウドワークスで得た報酬が、このウォレットアプリに入ってきて、それがいろんなところでそのまま決済するお財布として使えるってことですね。

3. わかりにくい単語は極力つかわない

もとの図をみると、国際ブランドネットワークという言葉が出てきます。ここでの「国際ブランド」というのは、クレジットカード決済を語る上では、比較的ふつうに出てくる単語のようです。いわゆる、VisaとかMastercardみたいなブランドのことです。このウォレットアプリについてのメディアの記事をみると、事業説明でも使われていたっぽいので、おそらくそのまま言葉を引用したのかなと思いますが、できれば、もっとわかりやすい単語に置き換えられたりした方が、情報を認知するストレスが減って、本来伝えるべきメッセージが伝わりやすくなるかなと。情報量が多いほど人は混乱するので。

上に書いた、3つめのポイントだけ抜き出して書きましたが、1〜3全部大事かなと思います。ただ、多くの人が(そして僕自身も自戒を込めて)、たとえ専門的な用語であっても、知っている単語であれば無意識に使ってしまうので、なるべく見るひとにとって優しい単語をつかう意識がもつといいかなと思います。専門的な知識をもちながら、素人的な視点をわすれない力を「素人力」と読んでいます。前にこんなことツイートしたので参考までに↓

うまく表現できませんでしたと書いてくれていますが、なかなかむずかしい図解にチャレンジしているので、気を落とす必要はないと思います。この図解は、特定の企業についてかいてるのではなく、喫茶店がおこなう「モーニングサービス」というものを総称して表現しようとしてるのです。通常、ビジネスモデル図解では、特定の企業のビジネスを図解します。なぜなら、ユニークなポイントを描きやすいからです。あるビジネスを抽象化して、ユニークであるメッセージを保ったまま、図解するというのは、特定企業の図解よりも高度なことだと思います。

僕が手直ししたのはこの図なのですが、図をみるかぎり、モーニングサービスのどこにユニークさを感じたのかがわからなかったので、内容に対するレビューというよりも、図の表現的な指摘にとどまってしまっています。

「矢印」というのは、モノ、カネ、情報のような経営資源がどう流れているのかを表すものです。図の書き方として、上下段に飛び越えた表現をされてましたが、

利用者

事業

事業者

という構造で成り立っているのがビジネスモデルです。事業者は、事業を通じて利用者に価値を提供するので、利用者が事業を飛び越えて事業者に矢印が伸びることは基本的にはないと思います。そのため、矢印は上下を飛び越えないように書くルールです。

この方はふたつの事業を図解してくれたんですが、生放送の時間の都合上、一つだけ選ばせていただきました。

これが提出してもらった図。

これをすこしだけ手直ししたのがこの図。大きく何が違うかというと「短編映画」という主体が登場していることです。このサービスは、短編映画をつくっている人が、短編映画を投稿でき、それをオーディエンスが見ることができるという構造のため、短編映画というコンテンツが重要な立ち位置をしめています。

一番はじめに紹介した農場ピクニックの事例では、情報の引き算ということを強調したけど、ここでは、あえて足すということをしています。なぜなら、重要な主体だからです。そのビジネスを特徴づけるユニークな主体は、あえて入れる方が、より説明しやすくなるかと思います。

さいご。まさかももクロが出てくるとは。

提出してくれたのがこの図なんですが、

この赤枠のところが、ある意味特徴的で、判断が難しいところでした。まずこの図を見て思ったのは、右側に、モノ、カネ、情報のアイコンがないことでした。経営資源がどう流れていて、それがどんな価値交換にもとづいてるのかを見るのがビジネスモデル図解なので、単に矢印だけでつながれるものの場合、これはビジネスモデルの話ではないのかも、ということを感じます。

プロレスに影響を受けているということ自体は、説明としては成り立つけども、それだけだとコンテンツの話であって、ビジネスモデルの話ではなさそうです。たとえばこれが、プロレスの要素を取り込むことで、プロレスの各種団体との提携があり、そこからお金が流れるようになっていることで、アイドルという人気商売においても、より安定的にビジネスが成り立つようになっている、みたいなことが仮にあったとしたなら、この図のようにプロレスを主体として入れるのはありかもなとは思いました。

・・・

ここまでで6つの図解をかんたんにレビューしてきました。1時間の生放送で、各8分くらいでのレビューだったので、かなりざっくりはしてますが、ふだんこんな視点でレビューしているということがすこしでも伝わったかなと思います。ちょうど、いろいろな観点でお話できる図解が集まって、僕自身もすごく学びになりました。

番組の最後にも言いましたが、ビジネスモデル「図解」というとどうしても絵心がないとできないんじゃ、と思いがちです。ただ、ビジネスモデル2.0図鑑で紹介するビジネスモデル図解においては、3×3のマス目におさめるなどのルールが明確に決まっているので、図解に対するハードルはより低いです。

それよりも、そもそもどんなメッセージを伝えたいのか?より重要なポイントはなにか?何がユニークなのか?みたいなことが自分の中で整理できていないと、図解じゃなかったとしてもなかなかアウトプットすることができません。ビジネスモデル図解は、コミュニケーションツールです。相手に対して自分が言いたいことを適切に伝えるために、情報を引き算したり、必要に応じて足し算したり、単語をわかりやすくしたり、相手目線で考えられると、よりシャープな図解ができると思います。僕も、まだ勉強中です。一緒に学んでいきましょう。

さいごにちょっとだけお知らせ。

先日、ビジネスモデル2.0図鑑がなんと、5万部突破しました!読んでいただいた方、ありがとうございます。ツイートしたらいっぱいいいねもらったうれしい。

そしていま、Kindle版が半額セール中です。Kindle派の方でまだ購入にいたってないという方がいたら、この機会にぜひ。

↑Amazonのリンクはこちら。

さいごのさいごに、なんと、Schooの生放送の授業、ふつうは有料会員にならないとアーカイブを見れないんですが、特別に記事公開から約1ヶ月間ほど(2019/2/16まで)無料でみれるようにしてくれるそうです。以下よりみれます。この記事を見て内容気になった方はぜひ。おはやめに。

以上です。


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