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The Care Killed The Cat.

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  • 思索と発露

    自分で考えたことをまとめて、伝えるためのマガジン。

  • 嘘のフィクション

    僕は嘘つきだ。でも、このマガジンでは嘘をつかない。リアルとフィクションの境目を掬い上げるための文章。

最近の記事

視界

大抵の人は自分の目の届く範囲で、見たいものだけを見るし、見えたようにしか見ないし、それらを過去に見たことあるものになぞらえて見る。 そして、本当を混ぜた嘘が本当より本当らしいのと同じように、いくらかでも見える部分があると、見えにくいものはその人にとって限りなく透明になってしまう。 見えないもの、知らないもの、理解できないものを自分から遠ざけることは、精神的に快適な生活を送る上では良い方法だけれど、立ち止まってそれが何かを考えてみることができる人間の良さというものを自分は信

    • スピードと停滞

      秋と冬のグラデーション。そのちょうど間のような、最近の気温。 朝、目覚めた時の冷えた足先や、顔を洗う水のつめたさに、季節の移ろいを見つける。 あの人が去った夏はとうに過ぎて、新しい季節が次へ次へと僕を急かしているが、特に行き先があるわけでもないので、ただただ、めまぐるしさの中に取り残された自分がいる。 以前は、ずっと20歳のまま、青年のままで年齢を重ねていくのだと思っていた。 実際、心の年齢はたいして変わっていないように思える。 若いままでいたいとかいう願望の話では

      • 無表情の行方

        駅ですれ違う人の顔を見るのが好きだ。 と言っても顔の造形を見るのではなくて、その表情を見る。 一見無表情な人でも、よく見るとどんな気持ちでいるのかがなんとなく伝わって来る。 うつむき加減の暗い顔、誰かに会うのか浮かれ顔。 数秒後には忘れる顔たちだけれど、そこには確かに人がいて、それぞれの生活と思いを持って生きている。 その人生に一瞬だけ思いを馳せて、すぐ忘れてしまうという遊び。 朝夕の通勤ラッシュの時間はいい顔をしている人が少なく、なんとなく悲しい。 眉毛を少し

        • 鏡よ鏡

          最近は「もっと自分のことを知りたい」と思っている人が多いと思う。 「自分にしかない何か」というやつを、自分の中の引き出しのあっちこっちをひっくり返して、必死に探している。 それは結局、「幸せとは何か」というテーマがボヤけてよく分からなくなってしまった今の世の中で、「何とか自分の背丈にあった分だけでも幸せになりたい」という人々の思いが反映されているように感じる。 不安に突き動かされている。 自分探しの旅というものをする人が、今、どれくらいいるのかは知らない。 個人的に

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        記事

          SNSなんてものをやっていると、薄っぺらい画面の向こうにいる人々の顔かたちがぼやけてわからないような感覚になる。 それはごく近しい人でも同じことで、冷たいディスプレイに流れる言葉と、その人の表情がどうにも結びつかない。 「(笑)」とか「www」とかつけてるけど、その文字を打ち込んでいるあなたの顔はたぶん、笑ってない。 今の「あなた」っていうのは、この文章を見ている、いわゆる「あなた」のことではないけど、「あなた」は「自分のことかも...」と思ったかもしれない。 文脈の

          予感

          暗く暖かい部屋で眠っていると「ひゅうっ」と小さく音を立てて、冷ややかな風が吹いたような気がした。 どこの隙間から入り込んだのだろう、と手のひらの感覚を頼りに壁を探ってみる。 ザラついた壁紙は、無限に続くかのような単調なリズムでそこに張り付いている。指先に伝わる無機質な感触は、無表情なあの人の顔によく似ている。 この部屋のどこかに、ついさっき芽吹いたばかりの、棘のある植物が置かれていて、いつか僕の手はそれを探り当てる。そんな予感がある。 チクリと痛みが走ったそのとき