マガジンのカバー画像

嘘のフィクション

1
僕は嘘つきだ。でも、このマガジンでは嘘をつかない。リアルとフィクションの境目を掬い上げるための文章。
運営しているクリエイター

記事一覧

予感

予感



暗く暖かい部屋で眠っていると「ひゅうっ」と小さく音を立てて、冷ややかな風が吹いたような気がした。

どこの隙間から入り込んだのだろう、と手のひらの感覚を頼りに壁を探ってみる。

ザラついた壁紙は、無限に続くかのような単調なリズムでそこに張り付いている。指先に伝わる無機質な感触は、無表情なあの人の顔によく似ている。

この部屋のどこかに、ついさっき芽吹いたばかりの、棘のある植物が置かれていて、い

もっとみる