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無表情の行方

駅ですれ違う人の顔を見るのが好きだ。

と言っても顔の造形を見るのではなくて、その表情を見る。

一見無表情な人でも、よく見るとどんな気持ちでいるのかがなんとなく伝わって来る。

うつむき加減の暗い顔、誰かに会うのか浮かれ顔。

数秒後には忘れる顔たちだけれど、そこには確かに人がいて、それぞれの生活と思いを持って生きている。

その人生に一瞬だけ思いを馳せて、すぐ忘れてしまうという遊び。



朝夕の通勤ラッシュの時間はいい顔をしている人が少なく、なんとなく悲しい。

眉毛を少し上げ、息を吐き出し、こわばった肩を下ろして、腕をゆるやかに、膝を柔らかにして歩く。

ちょっとした力の抜きどころを作ってやることで、だいぶいい顔になることもあって、あなどれない。

病は気から、気は体から。


目に光のある、生き生きした顔の人が増えるといいと思う、この頃。

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