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気の昇降出入

  東洋医学は気の医学と呼ばれることもあり、生命現象は全て「気」で表していきます。具体的な名前や役割は「気の種類」「気の作用」として分類されています。

 ですが、東洋医学の学習をするときに、「気とはなんだ?」と意味が分からないでしょうし、さらに、「気の種類」、「気の作用」もあるので、混乱しやすいところではないでしょうか。

 すでにいくつかの記事を書いてあるので、こちらも参照してみてください。


東洋医学の気とは何か?
気の種類
気の作用

 この記事では、東洋医学での臨床、臓腑の関わりという点では「昇降出入」も重要になってくるので、昇降出入とはどういう考え方なのかをまとめていきます。

1.気の昇降出入とは

 東洋医学では、地球に水や空気が流れているように、全身に何かが循環し続けていることで、生命現象が成り立っているという考えになります。

 この何かというのが「気血津液精陰陽」という「生理物質」であり、「生理物質」を循環させる役割を持つのが「気」になります。気の運動について細かく分類したのが「気の昇降出入」であり、この運動のことを「気機」といいます。

①昇

 人体は、足から頭までありますが、頭部は脳や目、耳、口、鼻など重要な場所が多く集まっているところになります。人は食事によって栄養を吸収して生命を維持していますが、栄養を消化・吸収しているのはお腹ですよね。

 お腹は人体で言えば、中央にあるものなので、吸収された栄養は頭部まで送られないと、脳や目、耳、口、鼻の栄養が出来ない状態になってしまいます。そのため、気には昇という役割があります。

②降

 食べたものは下に降りて便として排泄されます。呼吸活動でも息は身体の中に下って入っていきます。体幹で得られた栄養は下に降りることで、下肢を栄養していくことができます。

③出

 身体の中に入っているものは、吸収され、排出されていきますが、これは中から外への動きになります。体内で生成されたものは、身体の外側部分(皮膚の方まで)に送られることで、体表面を栄養します。

④入

 飲食物を食べる、息を吸い込むというのは身体の中に入ることなので、気には入の力があります。

2.気の昇降出入と身体

 昇降出入に関しては、個別でみていきましたが、本来は、昇降出入が相互に影響しあうことで、身体の中に流れている生理物質は全身に循環することで、正常に機能していきます。この関係のことを図にしたのが下になります。

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 相互に関係しあうことを図にしたのが下になります。

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 一応、文章での説明を入れますが、文章だと理解するのが大変かもしれないです。

 「昇」の働きは物を上にあげていきますが、人体は有限でそれ以上あがることができないので、上にぶつかれば下に「降」ります。「降」の働きも同様に下に下げていきますが、人体は有限でそれ以上あがることができないので、下にぶつかれば上に「昇」ります。

 上下では外に出ることもあるので、「昇」の力が100%「降」に行くわけではないですし、上にいくなかで力を使ってしまうので、最初の「昇」の力は段々と弱くなります。閉鎖された空間なので、「降」の力も同時に発生すれば、「降」になることでスペースができるので、「昇」の力を助けることができます。

 「昇」と「降」という関係でまとめましたが、「出」と「入」も同じになります。「昇」と「降」、「昇」と「降」は一部で行われているのではなく、全身のいたるところで行われています。

 イメージとしては地球です。どこかで風がふけば、その影響は全体に及び、一周まわれば、風を後押しすることにもなります。

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3.昇降出入と陰陽

 気の働きは気機として、昇降出入と分類されていますが、この分類は、全身の気の動きを陰陽論で分類したものになります。上は陽、下は陰になるので、昇は陽、降は陰、外は陽、内は陰。

 身体に気血津液などが全身に循環しているなかで、不具合が生じたというのは、陰陽学説を利用した、昇降出入の障害によって生じたと考えていくと、病の状態、原因を細かく分類していくことができます。

4.昇降出入と五行

 昇降出入は陰陽で分類できるので、五行にも分類していくことができます。五行は木・火は陽、金・水は陰に該当していくので、昇降出入は五行に当てはめていくことができます。

 五行に当てはめられるということは、臓腑にも当てはめられるので、臓腑にも昇降出入の役割があります。

5.昇降出入と臓腑

 昇降出入は五行と関係するので、臓腑の機能にも関係をしていきます。臓はそれぞれの特徴と機能から以下のように分けられます。腑の中でも胃は「降」の働きを持ち、全身に影響を及ぼしますが、その他の腑は胃の支配に入るものも多く、ほとんどが「降」になります。

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 臓腑の生理機能は細分化されているので、それぞれの生理機能ごとにも昇降出入があり、代表的なものは以下があります。

・昇:疏泄、宣発、運化、昇清
・降:粛降、降濁、伝化
・出:疏泄、宣発
・入:統血、蔵精、主水、粛降、納気

 「昇」と「出」の生理機能が同じものがありますし、「降」と「入」の生理機能でも同じものがありますよね。これは生理機能を陰陽ではっきりと分けられるものがあるので、後は、方向性をイメージできれば十分です。

6.まとめ

 昇降出入という考え方はどこで使うのだと感じる人もいるでしょうが、相互に影響しあうという関係性があるので、低下している機能の反対にアプローチしたら、低下している機能を助けるという考え方をすることができるので、治療の考え方の幅が広がります。

 なかなかよくならない、変化しないと言う場合は、昇降出入を考えて施術をしてみるのもいいかもしれませんね。


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