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【Mother-007】そのままで〜あなたの味方だから〜※投げ銭方式

あなたはとても 優しい人で
そして傷つきやすくて 時に 涙を隠す

あなたはとても 笑顔の人で
笑い声が胸の 深くまで 優しく響くよ

沢山の裏切り 沢山の嘘
そんなものが あなたを ひどく責めても

愛を止めないで  たとえどんなに不安でも
足を止めないで  たとえどんなに遠くても
いつも笑顔の人で みんなあなたを待ってるから
いつもそのままで 僕はあなたの味方だから

(【Song-002】そのままで)


 大学2年生の時、ある女性に出会った。彼女は僕の大親友、K君の奥さんの友達だ。僕は当時悩んでいたK君を励ましに、彼女はK君の奥さんを励ましに来ていた。

 何を言うわけでもなく、誰に見られているわけでもなく、悩んでいる人のそばに、ただ自然と寄り添う彼女の優しさに好感を持った。そして彼女は、相手の素晴らしいところを見つけ、褒めることが上手だった。

 彼女も僕と同じで小さい時からいじめられていた。たくさん傷つけられてきた。そんな中で両親のことを、幼い頃から様々な面で守り支えてきた。とても苦労をしているのである。だから何も聞かなくとも、目の前の人の傷が分かるのだろう。とても深い優しさだなと思った。

 しかしそんな彼女にも”欠点”があった。彼女は”自分が嫌い”なのだ。人の良いところを見つけるのは得意なのに、それを持っていない自分と比べては、自分には良いところが何もないと、自分を責めていた。自分で自分をいじめていた。

 そう、まるで16歳の時の僕のように。

あの頃の僕は、自分のことが大嫌いだった。自分の口が憎かった。自分の心が許せなかった。自分を信じられなかった。

けれど僕の代わりに、僕を大好きで、愛してくれて、許してくれて、信じてくれて、待ってくれて、祈ってくれたのが母だった。

 自分の事を受け入れられないで彷徨っていた僕を、母はあの時、

「ひろぼはありのままでいいんだよ」

と、全てを受け入れてくれた。母は生まれた時からずっと僕の味方だ。だから僕は、自分を少しずつだが、受け入れられるようになっていった。自分を少しずつ好きになっていった。

 しかし人は、人から愛情をもらうだけでは”愛は育たない”と思う。満たされないと言ったほうが良いかもしれない。愛し方を知らないと人は”愛をもらうだけ”になってしまい、やがて”愛は枯れていって”しまう。僕は母から愛情をもらう以上に、「愛情の受け取り方、あげ方」を教わった。またその大切さや素晴らしさも。

 そして母は、お世話になった恩師の言葉を借りて、こうも言っていた、

「人生”貸し方”になれ」

と。


 ふと、我に帰った僕は、目の前の彼女を見て、無性に腹立たしさを感じた。”もったいない”と思ったのだ。せっかくこれだけ深い優しさと、人の良い部分を見つける素晴らしさを持っているのに、その優しさと励ましでどれだけの人が元気になるだろうと考えると、心の底から”もったいない”と思った。

 家に帰った僕は、居ても立ってもいられず、この気持ちを何とか伝えられないかと悩んだ。そして気が付くと、ギターを抱えながらパソコンのワープロソフトを立ち上げていた。歌で伝えようと思ったのだ。

 それまでの僕は、恋人にラブソングを書いたり、モヤモヤした感情を、吐き出すべく、ギターの力を借りて、”心のカルテ”として表現し、精神安定剤のように歌を書いたりしていた。

 恋人の為でもなく、自分の為でもなく、ただただ「目の前の一人」の為に歌を書いたのは、この時が初めてだった。そしてこの事が、僕の後の人生を大きく変えていくことになる。

 初めての事だったが、伝えたい気持ちもハッキリしており、手紙を書くようにスルスルと歌詞とメロディが出てきた。”あの時の自分だったら何を言われたら嬉しいか、元気になるか”を考えればいいのだから。

そして、あっという間に完成した。タイトルは「そのままで」。

そのままだ。(笑)

 それをパソコンのマイクで録音し、CDを焼き、郵送で送った。彼女からすぐに喜びの電話を頂いた。泣きながら何度も聴いたと。素直に嬉しかった。

 その日から不思議なことが起き始めた。まるで「その歌を待ってました」と言うような人に良く出会うのだ。その人の為に作ったわけではないのに。どういうわけか、この歌を歌うとその人は元気になってくれる。そして数日後、

「あの歌のお陰で元気になれました。本当にありがとうございました。そこでお願いなんですが、同じように悩んでる僕の大切な友だちがいるんですけど、同じように歌ってくれませんか?」

と、そしてその当時住んでいた狭い4畳半一間のアパートに、その人が友人と一緒に歌を聴きに来てくれるのだ。そしてまたその友人が数日後、

「あの歌のお陰で元気になれました。本当に…以下同文」

気が付くと、”目の前の一人の為に書いた歌”がまったく違う誰かを元気にしてくれて、さらにまた違う人に伝わっていく。まるでこの歌が誰かを連れてきてくれるかのようだ。

”どうやら宇宙はそういうルールになっているらしい”
(この表現、今後もよく使いそうな予感)

その”ご紹介ルール”は10年経った今でも続いている。きっとこれは永遠に続くものなのであろう。そして、そこで出会った人達のお陰で、僕は今でも歌い続けることが出来ている。

この歌は証明してくれた。”彼女の優しさを待っている人がたくさんいる”ことを。

そしてこの歌は教えてくれた。”目の前の一人から全ては始まる”ことを。

 彼女は今では結婚し、一児の母である。彼女から頂いた恩は計り知れない。その恩返しとして、彼女の幸せを祈り続ける。

そして、

今日も歌い続ける。

これからもずっと僕は、

あなたの味方だから。


このnoteを気に入って投げ銭してくれる方へ

このエピソードにまつわる曲「【Song-002】そのままで」の歌詞をプレゼントします。この曲は僕にとって本当に特別な曲で、いまだに「何のために歌うのか」を僕に教えてくれ、また、問いかけてくれる歌でもあります。

以下歌詞です

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