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明日 一人芝居 そして正月

明日から3日間、店を連休にする。

1年で一番忙しい大晦日を終えて、休む暇もなく営業を再開したので、ようやく正月休みの感がある。

明日は楽しみにしていた横浜芸術劇場へ。

安藤玉恵さんの一人芝居を見に行く。

十年以上前、私は近所のとんかつ屋さんの若旦那と仲良くなった。

街のことを一緒にやりながら雑談していたところ、妹さんが俳優をやっているという。

「まだまだ、ちょい役でさ。深夜食堂ってドラマにも出ている。」と言っていた。

自分はあまりドラマや映画を観ないほうで、まして演劇はシェイクスピアみたいなものか、お笑いに毛が生えたようなもののどちらかだと、当時は勘違いしていた。

映画を観る良い機会だな、と彼女の出演している映画をレンタルDVDで、たくさん観た。

近々舞台がある、と聞いたので、(恐る恐る)初めて演劇を観に、下北沢の「スズナリ」に行った。

幕が開いた瞬間、こりゃマズい、と思った。

最初の沈黙のシーンだけで、完全に引き込まれてしまった。

それ以来、可能な限り安藤玉恵さんが出演される舞台は観に行っている。

しかし、彼女は基本バイプレーヤー、脇役だ。

野球で言えば、バントの指示がベンチからあれば絶対に成功させる職人肌の選手だ。

自分の役割を見事に演じられているが、素人の私はいつも心の中で、「なんでホームランバッターがバントなんだ」という気持ちを持っていた。

ある時、NHKで、長年同じ演目で一人芝居をされている俳優のドキュメンタリーをやっていて、引き込まれた。

これを見終わって、ある気持ちが湧き上がってきた。

「安藤玉恵さんの一人芝居が見たい」

ホームランバッターのような演技を余すことなく見たい。

ある時、そのとんかつ屋さんファミリーとバーベキューをやる機会があり、玉恵さんもいたので、酔った勢いで「一人芝居が観たい!」とくだを巻いてしまった。

彼女は、私の酔っぱらいの言葉を覚えていらっしゃらないと思うが、何とその後、深夜食堂で、そのドキュメンタリーの坂本長利さんと親子役を演じられた。

そして突然のコロナ…

飲食店も演劇の世界も、自粛の嵐が吹き荒れていた。

とんかつ屋さんも宴会の予約が全くなくなり、劇場も閉まった。

その時、彼女は、感染対策の専門家に相談して、万全の対策をした上で、とんかつ屋さんの宴会場で、目の前の料理屋で昭和のはじめに起きた阿部定事件の一人芝居を行った。

芝居を見終わった後、みんな距離を置いて、孤独のグルメでも登場した、お兄さんの作るとんかつ定食を食べる。

食べている途中、感想を書いたり、直接話せたり。

自分はこの一人芝居を観ただけでも、夢が叶ったと思った。

しかし、これだけでは終わらなかった。

ついに、神奈川芸術劇場で一人芝居を、それも75分という長丁場、行うことになったのだ。

片桐はいりさんとのダブルキャスト。

あらすじ

顔がスプーンみたいに丸いため“スプーンフェイス”と名付けられた自閉症の少女は、7歳にして癌に侵される。死を間近に、両親やお手伝いのおばさん、病院の先生、大好きなオペラに思いをめぐらせながら、生きることや死ぬこと、そしてこの世界の意味をも問い語り続ける…

ホームページより

もう、この写真見ただけで、大変な75分になるのでは、と期待と不思議な恐怖感でいっぱいになっている。

すでに観た人のコメントも、絶賛の嵐。

それが、いよいよ明日なのです。

チケットをセブンイレブンに行って、発券しなきゃと、今朝行った。

番号を書いた紙を渡すと、店員の中国系の方が打ち込んでくれる。

変な機械音が鳴る。

「これ、終わり。」

えっ?

もう一度打ち込んでもらう。

「うん、これ終わり。もう一度番号を確認して来て下さい」と。

えっ、終わりって意味がわからない。

メールを見ても、番号に間違いはない。

なんでこんな事が起きるんだ…

前回の演劇は、咳が止まらなくなって行けなかったし。

家に戻って深呼吸をしてからメールを見直す。

あれっ、2023年3月?

神奈川芸術劇場だけど、あっ、これ安藤玉恵さんの旦那さんのタニノクロウさんの方の、1年前の舞台の発券番号だった…

メールの検索の仕方が悪かった。

今回の演目のタイトルでGmailを検索したら、正しいメールと発券番号が出てきた。

ホッとした。

改めてコンビニに行って無事に発券できた。

そのお姉さんに「ごめんね、ありがとう」と言ったら、にっこり笑ってくれた。

これで、財布を落とさなければ、明日は、夢にまで観た、安藤玉恵さんの一人芝居を観ることができる。

やっと正月だ。