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ゼロからわかる自己調整学習④自己調整に不可欠な3つの要素とは!?

自己調整学習理論の続き、第4弾です。

そもそも自己調整学習には定義がありまして、
「学習者が、動機づけ、学習方略(行動)、メタ認知において、積極的に学習過程に関与する学習」(Zimmerman, 1989)
というものになっております。
が、分かるような、分からないような、、、

というわけで、
自己調整学習には3つの要素がある!
① 動機づけ(やる気)
② 学習方略(学び方)
③ メタ認知(客観視)
この3つをフル稼働して学習に向かうのが自己調整学習!

と理解してみるのはどうでしょうか?
今回はこの3つの要素について概略を解説します。


【要素①動機づけ】 自己調整できる子は自ら「やる気」を出す

「動機づけ」すなわち「やる気」だとか「モチベーション」が自分で学習を進めていくうえで重要になることは理解しやすいと思います。
この動機づけは、勉強を始める前に「よし!やるぞ!」と自分を奮い立たせるだけでなく、学習の最中にも後にも関わってくるんですね。

①学習前(予見段階)での動機づけ

  • ここまでやるぞ!と目標を立てる

  • 学習内容に興味をもつ・自分の興味と関連させる

  • 「これならできそう!」と自信を確かめる

  • 学習環境を整える

②学習中(遂行段階)での動機づけ

  • 「いい調子だぞ!」「集中集中!」と自分自身のモチベーションを保ちながら勉強する

③学習後(省察段階)での動機づけ

  • ちゃんと自己評価をする

  • 次の学習に向けやる気を出す「次はこうしよう!」「もっとやりたい!」

やる気の方程式 できそう×よさそう=やる気

さて自己調整学習理論では、動機づけには「自己効力感」という概念が大きく関わっているとされています。
「自己効力感」(Bandura, 1977)とは、特定の課題に対して「できそうだ」と感じる自信のようなものです。

Bandura(1977)は、この「できそうだ」という自信(自己効力感)と、「やればいいことがありそう」という期待(結果期待)がそろうと、人は動機づけされるという理論を提唱しました。

要するに、
①できそうにもないし、やっても価値のないことにはやる気がでない
②できそうだけど、やったところでどんな意味があるかわからないことにはやる気が出ない
③やったら意味があるのはわかるけど、できそうにないことにはやる気が出ない
ということで、なかなか納得できるのではないかと思います。

子どもの自己調整学習を促すには、
できそうだという自信をもたせること(成功体験を積ませたり、励ましたりする)
②よさそうだという価値を認識させること(これからやることの意義を説明したり、良さを実感させたりする)

ことが必要になりますね!

【要素②学習方略】 自己調整できる子は「学び方」を身につけている

これはわりと分かりやすいのではないでしょうか。
勉強のやり方が分からなければ、自分で勉強できるようにはならないということですね。
よく、「魚を釣ってあげるのではなく、魚の釣り方を教えよ」といったフレーズを耳にしますが同じことですね。
学習の方法にはいろいろありまして、以下にいくつか例示します。

  • 反復練習(リハーサル方略)…繰り返し練習する。最も一般的な方法だと思いますし、反復は重要ですが、ただ反復するだけですべてカバーできるわけではないので、工夫が必要です。

  • 図で理解(リソース活用方略)…教科書にある図や表、動画など様々な使える資料(リソース)を活用して学ぼうとする方法ですね。分からないところをYouTubeで検索して解説動画を見る、なんてのもこれに当てはまります。

  • 関連付け(精緻化方略)…自分の知っていることや他で学んだことなど、知識と知識を関連付けて深く理解する方法ですね。表面的に覚えるのではなく、今まで学んできたことと関連付けたほうがより深く理解できますね。

  • 分類・整理(体制化方略)…たくさんある知識をカテゴリー分けしたり、関係図に表したりして整理する方法です。バラバラに覚えるのではなく、すっきり整理して全体構造を把握した方が頭に入ってくることもありますね。

  • お助け(援助要請方略)…困ったときに人にヒントを求めるというのも実は立派な学習方法です。ただし、「いい助けの求め方」と「ダメな助けの求め方」があり、これについてはまた別の回でじっくり解説したいと思います。

【要素③メタ認知】 自己調整できる子は自分を「客観的」に見ている

自己調整するためには、「自分が今どんな状態なのか」が分かっていなければいけません。そのためには自分を客観的に見る、すなわち「メタ認知」が必要になります。

これも学習の前・中・後それぞれで必要となるものです。

①学習前(予見段階)でのメタ認知

  • 目標設定するときに自分自身のレベルや課題がちゃんとわかっている

  • その目標を達成するためにどんな方法をとればいいか計画できる

②学習中(遂行段階)でのメタ認知

  • 自分が学習に集中できているか、計画に沿っているか、順調にできているか、などをモニタリングする

  • もし順調でない場合は、やり方を修正するなどコントロールをする

③学習後(省察段階)でのメタ認知

  • 学習をふり返って、目標達成できたかどうか自己評価する

  • うまくいった・いかなかった原因を客観的に考える

まとめ 自己調整学習理論はこれまでの理論の「統合」

以上のように、自己調整学習には「動機づけ」「学習方略」「メタ認知」の3つの要素があります。

本来これら3つは、別々の分野として研究されてきたものです。
それぞれの研究にはたくさんの知見がありました。
ジマーマンをはじめとした研究者は、それらの研究の知見を「自己調整」というフィルターを通して1つに統合したのです。

今回はあくまで概略で、1つ1つの内容がとても奥深いです。
またじっくり解説できればと思います!

参考文献


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