トップ画像の何を目指しているか分からない一皿，なんだと思いますか？　自分でも分かりませんが，上に載っている粒々は分かります。

抹茶味のゲルです。

なぜ急に人工イクラなのか

きっかけは上の記事です。こちらならゲル初心者でも失敗しなさそうだと思い，記事でも紹介されているニチガさんの人工イクラキットを使いました。

詳しい図解は下の公式サイトにも書かれていますが，ゲルの代表的な材料であるアルギン酸ナトリウム水溶液を乳酸カルシウム水溶液に滴下するとイクラが作れるようです。（代表的ゲルとか言いましたが，知りませんでした。）

濃茶味のゲルができるまで

抹茶は私が勝手に混ぜたのではなく，公式が薦めています。きな粉も混ぜていますね。

しかしこの抹茶，色が薄くないですか？

一般にイメージされる抹茶といえば，薄茶といって黄緑色です。それにしても上の写真は，抹茶入り煎茶ではないかと思われる色の薄さ。

というのも，色素に関しては「適量を加え」と書いてあるのみで，抹茶やきな粉の分量は書いてありません。水とアルギン酸ナトリウムと乳酸カルシウム以外は目分量でいいとしたら，寛大で大らかな化学です。

ゲル初心者に対し，いきなり「適量」。しかしそれをいいことに，濃茶でゲルを作りました。上述の薄茶に対し，濃茶では抹茶の粉の量を多くし，お湯を少なくすることでドロドロの濃い緑色を作ります。
例えば，下の記事のトップ画像は濃茶です。

濃茶を点てた茶碗に，アルギン酸ナトリウム水溶液を混ぜます。こういう謎の使い方をするときは，バーチャルろくろで作陶した茶碗を使うと相場は決まっています。

その抹茶味の水溶液をスポイトで滴下します。動画も撮ってみました。

人工イクラ（和菓子味）をつくろう

液体ならなんでもイクラにできそうだと，愛媛の山田屋まんじゅうさんのサラサラのおしるこも使います。（こういうのがたまたま家にありました。）

そして公式がきな粉でイクラを作っていたので真似しましたが，我が家にあったのは黒豆きな粉。下の写真の通り，イクラに黒い粒々が混ざり，砂利感があります。もしくは魚類の卵。本物のイクラも魚卵ですし，思わぬ原点回帰です。

乳酸カルシウム水溶液の中に抹茶スイーツ（の要素）が積層していきます。多分口に入れたら和風スイーツっぽいはず。（食感以外は）

ゲルを美味しくいただくには

ただし大人の自由研究的には，どう美味しくいただくか，今後の展望を示して結論に代える必要があります。

手元にあるのは，さっきゲルにしたおしるこの余り。通常白玉と合わせますが，ゲルも白玉も見た目がポコポコしてるし（いいけど），おしるこにゲルが沈んでしまって見えないのでは。

そこで，餅の上にゲルを盛ることを考えます。おしるこに沈み切らない高さがあり，安定していて，映える餅。
家にあったのは，もらいものの雪見だいふく（生チョコ味）。

こうしてトップ画像の謎の「とろける生チョコの雪見だいふく冷製おしるこ〜抹茶と黒豆きな粉のゲルを添えて〜」が完成しました。（いま命名した）

下の写真は，哺乳瓶と同じ素材でできた，割れない透明急須に盛った場合。化学とお茶がごちゃごちゃになった一例です。この辺りでゲルに愛着が湧き，「ゲルは可愛い」という感情が生まれます。

乳酸カルシウムに漬け込んだ時間が長いので，かなりコシのある食感になりました。ガツンとは来ないけど，後から後からほのかに香る抹茶。

ちゃんとした食後のプチフールとして抹茶のゲルを作成される場合は，上に書いてあったことを全て忘れていただき，下の樋口直哉さんのレシピをご参照ください。

「これもゲルだ」と言い続ける

人工イクラの記事より前から拝読していたGelateさんのnote。特にこんにゃくの記事は，記憶に新しいかもしれません。

月並みな感想ですが，「こんにゃくもゲルなんだ」と思いました。他の記事を読んでもそうです。縁のない化学物質のように感じていたゲルも，自覚なく食べていた。

ゲルに詳しくなると違う面白がり方ができると思いますが，初心者はすぐにはその境地に行けません。初心者がまず面白いと感じるのは，身の回りにあったものを「これもゲルだ」と思えることなのだと思いました。

換言すると，あれはゲルでこれはゲルじゃないと区別できることが知識なのではなく，「これもゲルだ」と思えることが知識だと思います。
ここでいう「区別」そのものは，初心者が求めている楽しさとは関係ないからです。

だからこそ，変なお茶をする人間として，大真面目に「これもお茶だ」と言い続けていたい。こんなのお茶じゃないと言い続ける人生もそれぞれですが，人工イクラを濃茶味にする人生もまた，楽しいですよ。

お茶（味，茶葉，焼物，和菓子，空間etc.）と組み合わせたら面白そうなものを，いつでも募集しています！

専門家の知識については，以下の記事でも書いています。