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「ごちそうさま…美味しかったです」という言葉の輝き

昨年の秋に、普段仕事でお世話になっている会社の社長さんのお誘いで、とある町の紅葉スポットにて二人で一日限定でコーヒーショップを開店しました。

この町には紅葉の名所が2ヶ所あるのですが、一方は大勢の人で賑わう場所。もう1ヶ所はそことは赴きを異にして訪れる人も少なめで静かな雰囲気。その静かな環境の中でその場の雰囲気をさらに楽しんでいただこうと、一昨年にその社長さんが商工会に企画を持ち込み奥様と二人で開店したとのこと。今年はその話を聞いた私が面白がって手伝わせてもらいたいと事前に打診し、お誘いをしていただきました。

その社長さんは行動力があり中々のアイデアマンの方で、経営者としても地元では一目置かれている人物なのですが、地元の地域振興にも個人的に力を入れている人です。

このコーヒーショップもただ「コーヒーを売る」というだけではありません。
雰囲気を盛り上げてもらうために使い捨てのカップではなく陶磁器のカップとソーサーを用意。注文された方に好きなカップを選んでもらい、注文を受けてからドリップをするという念の入れよう。
イベント用テントの前に日よけの傘を置いて絨毯を敷き、脇には椅子も用意。我々もカフェの店員風の格好…スーツパンツに白のワイシャツ、ベストを着て、エプロンを掛ける徹底ぶり。
また、売上代金から経費を引いた分全額を地元の養護学校に寄付するという目的でやっていらっしゃって、私もその考えに賛同して協力をさせていただきました。

私の本業は飲食業ではなく別のサービス業なのでコーヒーショップについては畑違い。コーヒーの淹れ方については過去にとあるカフェ主催のコーヒーの淹れ方講習会に参加したこともあり一応知識は持っていたので、ようやくその時学んだ知識と経験が活かせるとかなり楽しみにしていました。

さて…前置きが長くなりましたが…
その時にコーヒーを飲み終えたお客様の中にカップを返却する際、「ごちそうさまでした。まさかこんなところで紅葉を見ながらこんな美味しいコーヒーが飲めるなんて思いもしませんでした。美味しかったです。」と声をかけてくださった方が多くいらっしゃいました。

この「美味しかったです。」の一言が強烈に私の心を打ちました。

プロではない我々(ご一緒した社長さんの本業は金属加工業。私以上に全くの別業種)は「美味しかったです。」という言葉から我々の普段の仕事…長年、その道のプロとしてサービスを提供させていただいている中…でいただく感謝の言葉とはまた違う新鮮な感激を受けたのです。

私はその日以来、外で飲食した時は必ず「ごちそうさまでした。」のあとに「美味しかったです。」と一言添えるか、「いや~、美味しかったなぁ。」という独り言を付け加えるようにしました。

もちろん「ごちそうさまでした。」という言葉の中には「美味しくいただきました。こんなに美味しいお食事を出していただいてありがとうございました。」という意味が元々込められているのです。
しかし、その「込められている」意味をわざわざ言葉にすると相手にはより感謝の気持ちが伝わるということが分かったのです。

私たちは周りの人たちの言葉や態度に一喜一憂しているのです。
「己の欲せざること人に施すことなかれ」という孔子の言葉がありますが、「己の欲すること人に施せ」…自分が言われたりやってもらうと心地いいことを他人にも贈る…これこそが真の「思いやり」なんだなぁ…最近そんなことにあらためて気づきました。、

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