「地域おこし」考⑦

「長々とした話にもう飽きてきたけど、結局『地域おこし』を効果的に行うにはど~すればいいわけ?」

世の中の全てのことというのはそれに携わった人の「自己評価」とそれに関わった人…お客様であったり、今後お客様になりうる人であったり、近隣の人であったり…のいわゆる「評価」に基づいてその良し悪しが判断されます。

その「地域おこし」事業が「地域おこし」として良かったのか悪かったのかという判断はとても難しいことなんです。

ちょっと雑な言い方をするとその「地域おこし」事業が「地域にとって良かった」と判断されるのは、「その地域のある程度の割合の人が『やって良かったね』と思ってくれる」ことだと思うのですが、これが意外と難しい。だから再三「『地域おこし』は面倒くさい」というのです。

その「地域おこし」事業を行っている当事者にとっては事業開始当初の目標や狙い(売上高であったり、利益であったり、顧客数であったり)を達成すれば「成功」、お役所にすれば税収や人口、地域への来訪者数が増えれば「成功」なのでしょうが、他の住民にすればそれで地域が良くなったと素直に喜べるわけではないことも多いのです。

田舎の中山間地域における「地域おこし」策の代表といえば観光業です。観光地の整備や特産品の製造・販売の強化を中心に地域の予算立てがされ多くのお金が使われます。

ただし、地元の製造業の方や地元の人向けの日用品などを扱う商店の方などは「そんな他から来る人のためにお金を使うならもっと我々のような地元の人のためにお金を使えよ」と思っている人も少なくないのです。

お金というものには限りがありますので、「地域おこし」という取組を行政も巻き込んで効果的に本格的に行うためには、ある程度特定の分野に集中的に資金を投入する必要性があります。

そうなるとその分野から外れている人たちは「俺たちの払った税金が他の人たちに使われている」とあまりいい気はしないのが現実です。もちろん、地域の税収が増えれば公共施設やインフラ整備にもお金が回るので全く利益が享受されないわけではないのですが、やはり自分より利益を余分に受けている人が隣にいると面白くはないものなのです。

突然話が変わりますが…お祖父ちゃんやお祖母ちゃんって、不思議と孫が楽しそうにしていると物凄く嬉しそうで、孫が何かで賞を取ったといえば自分の子供が取った時以上に喜び、孫の喜ぶ顔見たさにお金もヒョイヒョイとあげますよね?

私もまだ孫は持ったことがありませんが、なぜお祖父ちゃんお祖母ちゃんは孫がそんなに可愛いのか?…それは自分の愛する子供の子供だから愛しているのは当然のこと、かといって立派な人間に育てなきゃいけないとか、直接的に金銭の苦労をかけてはいけないなどといった責任が少ないからあまり感情的に接する必要がないからではと思っています。

このお祖父ちゃんお祖母ちゃん的な感情…自分以外の人の楽しみや喜びを自分のことのように思える気持ち…を「地域おこし」事業に対して当事者以外の人に感じてもらうには、やはり「愛情」、「地域に対する愛着」の醸成が不可欠だと思います。

「地域に対する愛着」というのはどうすれば生まれてくるのか?…「その地域を好きになるには、まずその地域の歴史を知ることである」…私がある地域の地域資源を守る活動をしている方から教わったこの言葉、意外と忘れられていることだと思います。

歴史を「過去のこと」と捨て去ってしまうのは簡単ですが、歴史というのは突然作り出されるのではなく「積み重なっている」ものなのです。

今現在のその地域の産業というのはその地域の風土や地質、交通網による他地域との繋がりなどに起因、その時代時代の変遷も含めて今の形になっているわけです。

余談ですが、「地域おこし」の策として江戸時代や昭和30年代の町並みを保存している地域もありますが、別に元々ノスタルジックな町並みだったわけではなく、当時は最先端の町並みだったわけです。それが時代の波に取り残されてしまったのが今や観光資源となっているわけです。

さらに「地域おこし」事業は行政主導の一本釣りビックプロジェクト的なものより(先述したように直接的に利益を享受する人たちが限られるため)「地域の人による、他人に迷惑をかけない『自己満足』事業の集合体」が良いのではと考えます。

~つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?