「地域おこし」考⑥

UターンやIターンで田舎に移り住み、「地域おこし」ってほど肩肘張ったものではないけれど自分の「面白い」をみんなに広めるべく事業化し、SNSなどで情報発信。フォロワーを増え、遠くからお客さんもやって来るようになり、事業収支も贅沢な暮らしまではできないけれどかなり軌道に乗ってきました…なのに地元の人に聞くと「へぇ~、そんな店あったんだ…知らなかった」っていうケースが結構多い。

「別に私は自分の好きなことを仕事としようとしているだけで地域の活性化を目指しているわけではない」という方には問題ないのですが、「地域のために」と考えている人にはちょっと残念な結果なのかもしれません。

田舎の人は基本的に実際に会って話した人しか信用しない…というか、「地元」と称する同じコミュニティに所属しているとは認識しない。

移り住んできた人がその地域のコミュニティに帰属するには、何やらへーこらへーこら頭を下げて地域階級社会の最下列からスタートしながらいけない感じもしてしまい、それが嫌で田舎へ移り住むのを躊躇う人も少なくない。ただ、主体性を持ってその地域に溶け込んでしまう人、さらにはその地域のイニシアティブを取ってしまう人もいないわけではない。

1つの例なのだが…昨年、仲間とある中山間地域の地域資源を深堀する民俗学的な調査に訪れたときのことだった。その地区の公民館が集合場所になっていたのでカーナビを頼りに車を走らせていた。その地区に車が入ったあたりから擦れ違う車や人が必ずニコニコしながら会釈をするのである。あまりにも皆するものだから私は勝手に「地区に住む誰かと勘違いしているんだな」と思っていました。しかし、よく考えると同じ長野県内の地域でしたが私の車とはナンバーが違う地域…何故だろうと不思議ではありましたが少ししたらそのことを忘れてしまいました。

その夜、その地区とは同じ町に住む私の仲間が「あの地区に入ったあたりから皆に頭下げられなかったか?」と聞くのです。そこで思い出して「そうそう❗…なんで?」と聞くと「○○君がそうしてるから」。

この「○○さん」という方は農業がやりたくて他の地域から移り住んできた方。とにかく地域の人に顔を覚えてもらおうと移り住んだ当初から会う人会う人に元気よく挨拶をしていた(もちろん今のしているのだが)らしい。それがあまりにも気持ちいいものだから地元の人もみんなやるようになったらしいのだ。その○○さん、その日の夜にお話を聞ける機会を設けてもらったのだが、私45年以上生きてきてあれほど引き込まれる話をされる方に会ったことがないというくらい魅力的な方だった。

そう考えると「地域おこし」に限らず何か事を始めて人を集めようとする場合は「何をやるか」という事業内容やアイデアよりも、「誰がやるか」という人間性、人間的魅力がカギとなるのではないかなと個人的には感じるのです。

~つづく

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