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人生は、19.8億円で変わるのか。

わたし達には固定の家がない。
オフィスはもちろん、プロダクトもない、従業員もいない。

わたし達は何者か?と問われることが多い。(本当にとても多い)

およそ10年前ベンチャー(当時はスタートアップという言葉がない)に足を踏み入れたわたし達は、M&AというEXITといわれる出来事までの8年間を走った。(ちなみに当時は、家もオフィスもプロダクトもあった、会社には200人を超える従業員がいた。)

M&Aに動き始めたのは突然だった、IPOかM&Aか、ある理由から後者に決まった。経営陣内では急激に様々なことが動いた、誰にも知られないように。
しかし、売却は確約されていない、当時の体制で経営を続ける確率は十分にあった。むしろ、継続可能性の方が高いと思っていた。

経営状況・事業実態を一番把握している立場として、外部からヒアリングを受ける機会があった。それは社内で語ることと同じだった、マーケットの成長性、事業計画、戦略とオペレーション、組織体制。ただひとつ違ったものがある。

固有名詞、名前だ。

資本家の論理として、人は従業員人数として抽象的に語られ、そこに名前はない。しかし、大企業でないかぎり必ず個人の名前が存在し、それは経営に含まれる。この差分が、後に葛藤を生むことになる。

わたし達にとって、売却と経営継続路線の動きは相反するものだった。
それには理由がある、EXIT戦略を描き、それを前提としている組織ではなかったからだ。EXITを将来的に考えていると表明し組織づくりをしていたら、一貫性がありスムーズだ。しかし、それが皆無の組織だった。途中から表明をするのは難しい、ほんの2ヶ月で8年の歴史を変えられるほど組織の性格はやわではない。

M&Aの話が裏で進めば進むほど、メンバーとのコミュニケーションはしんどくなる。未来を共有していないかもしれないというイメージは、発する言葉を嘘っぽくする。

自分で許せる、未来を語る範囲に線引きをし、中途半端なコミュニケーションに逃げてたと思う。メンバーからの視線にどう応えたら良かったのか、未だに正解は持っていない。

わたし達は創業から代表や取締役として経営をしていたが、株主ではない為経済的なメリットはなかった。そんなことは明らかであり、そこよりも重要なのは、どっちに転ぶか分からない状況を早く終えたかった。感情と言葉が一致しない半端なコミュニケーションを一刻も早くやめたかった。

秘密は、精神をすり減らす。


8年間が1ヶ月で決まる、あっけなく。

そしてM&Aが決まり、じげん社が買収した。
2014年9月26日、買収額19.8億円。
あっけない。

年商を超える額が、一瞬で口座に入る、入金のやり取りを目の前で見ていたが、本当にあっけない。現実としては数字の文字が印字されるだけだ。(わたし達は見てないが)

浸ってる時間などなく、売却直後にやらなければいけないことは色々ある、なんせこの動きは極秘だったし、経営陣以外は誰も知らないのだから。買収された後に、何をするかは誰も知らないし、教えてくれない。

やらなければならないことを、急ピッチでTODOをまとめる。TODOをまとめてないほど、最後は急に決まった。まずは、全体にアナウンスをしなければならない、何をどこから説明すればいいのか?
ここはEXITを想定していない組織。

フロアは、いつもと変わらない日常、1分前に会社が売り買いされたなんて誰も知らない。これが「株式会社」なのだ、洋服と同じお金を出して所有権を得ることができる「箱」。さて、どのようにアナウンスをするか。
まず、着手したことは.........

今回は趣旨が異なるので、この辺までにしようと思う。

わたし達は、この3年半、極端にインサイドストーリーを語ってこなかった、語りたくない部分もあったし、どうやって表現したらいいか微妙な部分もあった。

しかし、時間が経過し、他人事のようになった今、知りたいというリクエストがあれば、また別の機会に書こうと思う。

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取締役を退任したのは、買収されてから半年後、予定通り退任した。
わたし達がいなくても、何も問題がない状態だったし、重圧から開放されたことに正直ほっとした本音もあった。

しかし、開放感は続かなかった、これは自分たちとしても予想外の体感だった。

わたし達は前職の一部のメンバーと、新しいことをスタートすることが決まっていて、すぐ動き始めていた。一枚岩の(ように感じられた)チームだったが、リーダーと相容れない違和感を感じ、わたし達はそれをスルーできない心境にまでになった。

結論、わたし達が変わってしまったのだ、
「これは他人の人生であり、自分の人生ではない」と気づいてしまった。

そして、それぞれがチームから離脱することを決め、ようやく想像していた開放感を味わうことになる。

開放感は自分の人生を選択しない限りやってこない事を学んだ。


19.8億円は、人生に対する考えを変えた。

開放感といっても、清々しさなんてなく、内面は憔悴している状態だった。
エネルギーが底をつき静養期間が必要だったわたし達は、未来のことなど約束もせず、個別で活動していた。

1人になる期間だった。

わたし達はもともと内向的な性格で、それが手伝って自分色を無くすことがデフォルトになっていた。まずは取り戻した”時間”で、ニュートラルな自分に戻し、人生を選択する必要があった。

わたしは、ノイズの多い東京を離れ実家に戻った。長年のストレスで肥大化した子宮筋腫の手術を無事に終え、日本から離れたい一心で、サンフランシスコで1ヶ月生活をした。知らない環境で考えたかった、今までのこと、これからのこと。ほとんど誰とも連絡をとらずに生活をしていた。

タカナシはというと、何処かに属する気はなく、フリーランスで仕事をしていた。自分の実力を確かめるかのように狂ったようにハードワークをしていたようだ。経営層のマーケターは転職市場にはいない、そういう背景もあり退任バブル(周囲の経営者から一気にリクルーティングの声がかかる現象)は長く、その状態を助長していた。

そして、再集結したのは2年半前。
きっとソロ活動期間を経てなければ、ビタミンは誕生していない。世界観を近いことを確認し、過去とは全く違う新しいことをしようとビタミンとして活動しはじめた。

ビタミンはオフィスもプロダクトも持っていない。雇用もしないと決めた。(これにも理由がある)

当初、コワーキングも借りていたが、なくても大丈夫そうな気がして解約した、そしたら何も不自由ない。仕事向きのカフェもあるし、周囲の方のご厚意で席をかしてくれる企業はたくさんあった。(本当にありがたい)

プロダクトはというと、”もちろん”つくろうと模索していた、社会課題を解決する為に当然必要なものだと。しかし、何をどう解決したいのか?を考えていくと、自分たちでなければならない、というところまで行き着くのが難しかった。具体的には、5年や10年に渡って同じ社会課題やプロダクトにコミットし続けるイメージが持てなかったのだ。

そして気づいたことがある、「プロダクトをつくる」という前提が思い込みだと。それは、◯◯というプロダクトをやってる自分です、と自己表現のひとつの手段だと。なので、今はそれ自体が目的ではなくなった。


「平和な世界がいい」10代に逆戻り。

やりたいことを見つけるのはとてもむずかしい。
しかし、苦手なことや、やりたくないことを抽出するのは意外に簡単だ。
わたし達の場合はこうだ。

[苦手なこと]
✓見える価値だけで評価する環境や人
✓損得勘定で動く環境や人
✓お金儲け自体が目的になっている環境や人
✓搾取する環境や人
✓奪い合う行為や人
✓嘘がある環境や人…..など

本当に話が合わないし、とても疲れてしまうので、違う世界の人だと割り切った。

別視点で、何をやりたいかではなく、どんな世界だったら好きか?という問も答えられる。

[好きな世界]
✓平和で寛容で世界
✓目に見えないものが評価されている世界
✓搾取がない世界
✓サポートしあう世界
✓チェレンジしたい人が活躍している世界
✓ライフスタイルを選択している世界
✓好きなことをしている世界 …..など

これは、頑張って達成したいことではなく、そういう世界がいいでしょ、と疑いもなく思うレベル。それは、わたし達が生きやすい世界でもある。
大きな方向性はみえた、実はこれは考え抜いたものではなく、もともとあったものだ。別々で歩んでいた10代の多感な時期から、わたし達が根本的にもっていたもの、そして色々な経験をして更に強まってきた理想みたいなものだ。


世界を変える≒”自分の世界”を変える

わたし達が生きたい世界を実現しようとすると、何をするのがいいかは正直まだわからないが、この2年で自分たちのアプローチ方法は変わってきた。
世界を変えよう、から「”自分の世界”を変えよう」というアプローチへ。

聞く人によっては利己的にすら聞こえるかもしれないが(社会課題解決にアプローチしていない、イノベーションがないとか)、わたし達からするとそうでもない気がしているし、そう思われる場合、そもそもの前提の考え方がズレている可能性がある。ちなみに、好き勝手生きたいというのとはニュアンスが違う。

世界は変わってはくれない。
そして、世界は紛れもなく自分中心で回っているのだ、全ての人にとって。
であるならば、「”自分の世界”を変える」ことが、結果的に世界が変わることになる。

なので、わたし達は、”自分の世界”を変えはじめた。

全てを自分たちの感覚に沿って選択する、環境、人、仕事、遊び方.....。これを数ヶ月続けているうちに、本当に世界が変わっていった。こちらが選択しなくても、イメージする”自分の世界”になっている。表現すると、我慢して頑張らなくていい生きやすい世界。

社会的に何が解決されたのかと突っ込まれそうだが、変わらず紛争はあるし、色んな差別はあるし、ジェンダーの問題も、現金払いが残ってることも........。そこに直接影響は与えていないが、将来間接的に影響を与えている可能性はある。

世界は間接的に影響しあって繋がっている、それは事実だから。
今日の出会いや行動が、紛争がなくなることに繋がらないと、理論的に説明することは難しい。どこの誰に影響を与えたいというマーケティング思考だけでははかれない影響範囲は存在すると思ってる。

なので、”自分の世界”をつくることは、社会につながってることだと思っている。それを実現する為に、様々なアウトプットが紐づく。

何かのプロダクトで課題解決をするのとアプローチが違うだけなのだが、これにはEXITがないので、日頃一緒に仕事をする機会が多いスタートアップ界隈の方々に、どのようなリアクションをされるのか、そもそも理解されるのか興味がある。


改めまして、ビタミンです。

今まで思想的なことはお伝えしていなかったので、周囲には色々分かりづらくさせてしまっていた。もしかしたら、あまり考えずに気楽に生きている人と思われたかもしれない(否定はしきれないが...)

引き続き、スタートアップのサポートはしていく、これは面白い人と出会えるし、応援したいし、大好きだから。ただ、それはわたし達の一部であって、全てではない。

わたし達は主張をするタイミングを逃しがちで(会話に割り込むテンポが遅い)、これは自分たちの課題だった、伝えないと”なにも考えていない”と同じになってしまう。そして解決策をみつけた、テキストのアウトプットの方が向いてると今更気づいた、本当に今更である。

そういう経緯で、今後ビタミンの活動、考え事、仕事で学んだことなどを、表現していこうと決めた訳です。


noteのコンテンツで考えていること

◎Movable Life
固定の家をもたないわたし達のライフスタイルの中身、使ってるもの・気になっているものなどライフキュレーション全般を。

◎Marketing Insider
スタートアップマーケティングのケーススタディや最新情報をネタバレ的に。

◎COOお悩み相談室
スタートアップでNO.2、COOポストのお悩みを一緒に悩んで本気レスを。

◎プロフェッショナル ビタミンの流儀
わたし達が日々スタートアップと仕事をしていく中で考えた、わたし達の流儀など。

◎ビタミンの仲良しさんを紹介するお
わたし達の大好きな人たちのインサイドストーリーを、普段メディアに出てない人もお呼びして。

内容はこんな感じで考えていますが、わたし達の興味が向く方へと柔軟にやろうと思います。

最後に「Movable Life」記事の雰囲気を、チラ見せです。

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社会人になり、一人暮らしをはじめると、生活においての当たり前をインプットされる。まずは、賃貸契約とインフラ契約は誰もが通る、わかりやすい例。賃貸は2年が当たり前と思っていたし、しかも更新時は1ヶ月分の家賃が上乗せされる。場合によっては礼金というお布施みたいなものがある。

もちろん長期契約にもメリットはある、しかし、それに対してのデメリットや他の選択肢をちゃんと考えなかっただけではなかろうか。そういえば、そもそも、なぜこの仕組になっているのかを知らない。

成り立ちの経緯をとしては、こんな感じらしい。
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そして、現代というかわたし達のライフスタイルだとこんなデメリットがある。

[ビタミンにとってのデメリット]
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これはライフスタイルで選択することだが、わたし達の場合こうありたい、という姿を実現するには、メリットよりデメリットの方が勝る。そして、一般的な賃貸契約をしなくなり、今では.........

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どこかのタイミングで、この記事もアップします。
では、またねー!!

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