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交通安全

Yさんから聞いた不思議な話。

Yさんがよく通る旧国道の交差点には、交通安全期間になると親子のマネキンが設置されるという。

交差点の角にコンビニがあり、昼夜を問わず車の出入りが激しい為、期間中は交通安全の啓蒙活動として横断歩道の傍に小柄な母子一体づつのマネキンが置かれるのだ。

この活動を知らないドライバーは勿論驚き、地元の人でもその姿にはハッとして、改めて横断歩道の歩行者優先を意識するらしい。

少し雨が降る夕刻。
Yさんの運転する車がその交差点の信号待ちをしていた時、
助手席の息子さんが母子マネキンに気付き、雨粒に濡れた窓ガラス越しにしばらく眺めてから「今日はおじさんも一緒なんだね」と言ったそうだ。

は?と思ってYさんも見るが、目に入るのは信号柱の横に立つ母子の姿だ。
Yさんは地元民なので、そこに2体のマネキンが経つ謂れも良く知ってる。

青信号になったのでハンドルを切りながら「えー?2人だよ?」と言うと、息子さんは「柱の陰におじさんもいたよ」と言うのである。

その後もYさんは何度か交差点を通るのだが、母子2体にしか見えなかったという。
旧国道とはいえ交通量の多い交差点なので事故が発生する事はあるのだが、Yさんの知る限り死亡事故が起きた噂もない。

という話を旦那さんにしたところ、彼はちょっと驚き「子供は2人じゃなかったっけ?」と言った。
偶に母1体子2体になっている時があるので、そういうモノだと思っていたそうだ。
Yさんは母子が1体づつだと否定するのだが、「偶にお父さんも」と言い出したので怖くなって話を止めたという。

と言う話をYさんが妹さんにしたところ、彼女はちょっと驚き「子供は2人じゃなかったっけ?」と言った。

私も来年の交通安全期間が楽しみになった。

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