愛沢えみりのコピー

アフリカゾウの密猟を知って欲しい

書名:牙: アフリカゾウの「密猟組織」を追って
著者:三浦 英之
出版社:小学館
発行日:2019年5月8日
読了日:2019年8月25日
ページ数:245ページ

すごい読み応えがありました。
アフリカゾウの密猟。15分に1頭のペースで殺されている。
こんなにひどい現状だとは驚きました…。
牙の密猟。それを買う中国人。
そして、国内の市場を守ろうとする日本人。

お手元に象牙のハンコがありますか?
その裏にあるアフリカゾウの実態をご存知ですか?

アフリカゾウの牙がテロ組織の資金源になっている。
その売買に中国やアフリカの現地人が大きく関わっていて
日本も例外ではないという事がわかりとてつもないショックを受けた。

痛ましい写真からもこんな事が人間にできるのか?
と思えるほど悲しい現実がそこにはありました。

現地で体当たりの取材を続けた著者のルポライター・三浦さん。
ものすごい説得力があり、どんな調査結果よりも
アフリカゾウの絶滅の危機が伝わるし信頼できると思った。

アフリカゾウの牙は

「サバンナのダイヤモンド」

と言われているそうです。

1kg、なんと2,000ドル(約20万円)。

1940年代に500万頭いたとされているアフリカゾウが
2010年代には既に約10/1の約50万頭まで激減。
このままだとあと1世代で絶滅してしまう。

アフリカゾウのオスは35歳〜40歳以上にならないと繁殖に適さない。
密猟者は真っ先に大きな牙を持つ、この年代を狙う。
次にメトリアーチと言われる群れを率いる雌のリーダが狙われる。
群れごと根絶やしにされてしまうのである。

この牙は生え変わらないのです。
頭の奥と繋がっている事もあり、牙を取るという事は
ゾウを殺す事に直結します。

さらに、驚いたのはアフリカの特にケニアやタンザニアは
汚職、賄賂が染み付いていて、アフリカゾウを守る仕組みがあっても
それが全く機能していないという事。

・政府
・警察
・役人
・パークレンジャー

書籍内では証拠までは掴めなかったとしているが
中国大使館も関わっているとの確度の高い情報もあった。
最大の密輸組織のリーダの中国人(楊鳳蘭)が逮捕され
今年、禁固15年、罰金14億の判決がでました。

そこまで人々を駆り立てて
政府や守るべきパークレンジャーが腐敗してしまったのか。
全ては

「金」

である。汚い世界である。

なんとも悲しい話だけれども、貧しい人にとって
手元の生活を維持するためには金に目がくらむのである。
それを根本から立つには”買い手市場”を根絶する事である。

密猟象牙の最大の消費市場であった中国は
2016年のワシントン条約締約国会議で国内市場を閉鎖した。
それに対して、日本は反対し国内市場を維持している。
あくまでワシントン条約は国際間の取引であり
国内は自由である事や、象牙の入手経路などを管理していると
主張しているが、私は納得できなかった。

結局、それが完璧に管理されているとは思えないし
日本市場というのがある限り、裏ルートでいくらでも
売買されるのではないかと思う。

現在、ジュネーブで開催中の
ワシントン条約締約国会議(2019年8月17日〜8月28日)では
国内市場を維持する国(日本など)への早期閉鎖は見送り、
違法取引を防ぐ対策の実施状況を来年までに報告するに留めたようです。
なんかすごく残念。閉鎖で良いのに…。

おそらく、ここにはハンコ文化を守るような
既得権益が裏にあるような気がします。
これだけテクノロジーが進化しているにも関わらず
象牙のハンコにこだわる理由があるだろうか。

私には全く理解できない。

私は象牙を選ばない。








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