天久鷹央の推理カルテII_ファントムの病棟_のコピーのコピーのコピー

非常に深いエピソード

書名:天久鷹央の推理カルテIV−悲恋のシンドローム−
著者:知念実希人
出版社:新潮社
発行日:2016年1月28日
読了日:2019年8月15日
ページ数:314ページ

今回はすごく印象に残ったエピソードありました。

<目次>

📕プロローグ
📘迷い込んだ呪い
📙ゴミに眠る宝
📗瞬間移動した女 → 特出しで語ります(ネタバレ有り)
📚エピローグ

相変わらずこのシリーズは軽快に読める。
300ページがあっという間に感じる不思議。
すっかり天久鷹央に魅了されている。
少し頼りない小鳥遊優。
でも、いざという時に空手で鷹央を守る。

今回はアクションシーンも多くて
鷹央と小鳥の良さがすごく出ていた❗️

鴻池舞ちゃんも面倒くさい女の子ぶりは増しているけど
実は小鳥を狙っているのかな?
小鳥と鷹央の関係はどうなるのかな?
まだ残りのシリーズあるので展開も楽しみです。

そんな今回、3つ目のエピソードの
「瞬間移動した女」
これは事件の真相にも驚いたけれども
そのバックグラウンドにある医学的な面にも
考えさせられる点が多かったです。
本当におすすめです。

刑事が全く解けない謎を解き明かす鷹央。

途中からひょっとして❓っていう想像がつきましたが
やっぱり医療ミステリーなので
きちっと医学的な見解もあって良かった。

最後のシーンは本当に驚き❗️だった。
ここからはネタバレになるけれども
読了済の方がいたらぜひ感想を共有したいです。


ここからネタバレ

まだ読んでない方は絶対読まないでね❗️

物語の核心に触れます。


✅事件の真相−1−

瞬間移動した女の被害者の”関原桜子”
部屋には床に広がる血痕を残すも発見された場所は
マンションから10kmも離れた港のテトラポッドで発見される。
午前0時過ぎに襲われたとみられる。
根拠は2つ
・マンションの10院が大きな物音と悲鳴を聞く
・DVDレコーダが破損、血痕があり、録画が止まっている。
→確かにこれだけ見れば犯行現場は室内である。

そして室内で死亡したと考える警察の根拠は
・大量に発見された血だまり

しかし
0時過ぎから発見される9時半頃までに
マンションから出た人物は約12人。
死体を運んだ様な人物はいない。
非常口の防犯カメラはしっかり稼働。
エントランスのカメラはレンズが壊れていて
ぼやけてしか映っていない。
→この時点でなんとなくだけど、実は生きていて
 歩いていて外に出たのかな?って推測がついてしまう。

結論を急ぐと、そのまま歩いて200mほど離れた
自分が勤務する病院まで行こうとしたところを
横断歩道でバカなカーレースをしていた若者に跳ねられる。
そして、その若者が殺してしまったと勘違いして
港まで運んで死体を遺棄したのである。
(軽くぶつかった程度ですぐ病院に連れて行けば助かった。
 但し、室内での出血性クッシング潰瘍のせいで大量出血し
 轢いた若者が殺してしまったと勘違いしたのである)

事件は大体こんな感じ。

✅事件の真相−2−

では、室内に一緒にいた人物は誰なのか?

爪に残されたDNAから警察は男性と断定。
数ヶ月前からストーカー被害に悩んでいた事もあり
警察は男性に対象を絞って捜査をしていた。

しかし!

なんと…DNA上は男性なんだけど
犯人は”相馬若菜”という女性。

しかも若菜は小鳥と同じ病院に勤める看護師であり
今回の件の真相をしりたくて相談をもちかけた張本人。

これには驚いた!全然予想つかなかった!

でもなぜ女性の若菜が男性のDNAを持っていたのか?

✅真相−3−

実は、彼女はアンドロゲン不応症だったのだ。
(Androgen Insensitivity Syndrome:AIS)

これなんだ?!と思って自分でも調べてみました。

外見は全く女性で女性として育てられます。
でも染色体はXY。アンドロゲンは男性ホルモンの事を指します。

一般的にはXYは男性ですが、そうでない人もいる。
つまり女性として発達していく事もある。
→XYだから男性との決めつける事は良くない事を知りました。

精巣はあるが、外性器や体は女性として育つ。
でも、体内には子宮も卵巣もないので妊娠する事もない。


でも、正常に発達していないため生理がこないため、初潮がこない。
親が心配して病院に連れて行き、発覚するそうです。

本書にも出てきますが
この精巣をそのままにしておくと癌化する恐れがあるので
外科手術で切除するそうですね。

このAISはDSDの一つの様です。
私はこのDSDも知りませんでした。
性分化疾患(Disorders of Sex Development)というそうです。

人間が男・女として成長する過程でできる
性器などが正常に発達しない事にあるようです。
体の特徴や性器が一般の特徴とは異なる発達を遂げるようですね。

どうやら新生児の2,000人に1人いるらしい。

こちらのページが非常にわかりやすくて
一部編集した上で引用しました。

トランスジェンダーは性自認で自分が男・女であると認識している事。
このDSDは性に関する身体の状態・機能が一般的な人と違うという事。

表現が正しくないかもしれませんが
トランスジェンダーはソフト面(心)
DSDはハード面(身体の構造、機能)

なのかな。

つまり、少ないけれどもDSD、かつ、トランスジェンダーの人もいる。

DSDの方はホルモン注射をする人が多いそうです。
でも、トランスジェンダーとは違って
自分の性別を「男性らしく、女性らしく」にするためでなく
健康維持のためにするので誤解してはならい様です。

私も当時は衝撃的で驚いたのですが

キャスター・セメンヤ選手

皆様も覚えていますでしょうか。
染色体としてはXY。でも、戸籍上は女性。
子宮と卵巣が無く体内に精巣があり、通常の女性の3倍以上のテストステロン(男性ホルモンの一種)を分泌していることが判明。
今回の若菜と同じですが、男性ホルモンが3倍も分泌されている事から
外見は筋肉が発達していて、一般的にいわれる男性にも見えます。

何が男性・女性を決めるのか?外見か?性器か?ホルモンか?
ここで述べると長くなるので割愛しますが
両性具有として生まれた本人が一番苦しいのだと思います。

https://real-sports.jp/page/articles/283807766483567773

物語に戻りますが、

若菜は染色体としてはXYである事を桜子に伝えます。
桜子は同性愛者で女性しか愛せないと自分では思っていて
相手が男性だと知り、嫌悪感、拒否反応を示します。
きっとこのDSD-AISを知っていればこんな事はなかったでしょう。

XYであるのは間違いないけれども
若菜は女性です。彼女自身もAISと診断された後も女性と認識している。

つまり彼女はAISでありながら同性愛者であったのだ。

本人は「私が好き二なるのは、女の人ばかりだったんだから。やっぱり私の本質は男なんです。いくら私が女のつもりでも…」
この言葉からも相当な苦悩が伺えます。

私はこのエピソードを通して学んだ事は

DNAは人間の本質を示すものではない

LGBTQ+、第3の性とは異なり

性分化疾患(DSD)というのがある事を知る。

という事です。

多様性の世の中、色々な人がいるという事を理解する。

それを受け入れていかなければなりません。

この「DNAは人間の本質を示すものではない」
は物語で鷹央が小鳥に放った言葉でもあります。
さすが鷹央先生…。
こういう推理は医学の知識がないと絶対思いつかないですね。

この医療系のミステリーとしての真髄を
このエピソードで知る事になりました。

DSD・AISという疾患がある事も勉強になりましたし
ますます本シリーズのファンになりました❗️




この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?