スタートアップの知財戦略に関わるIPOとM&Aの違い

自分が分科会のオーガナイザーをしているSmips(知的財産マネジメント研究会)で、特許庁のスタートアップ施策(IP BASE、IPAS)についてのセッションが2つありました。

様々な観点に話が広がったので詳しくは上記まとめを見てほしいのですが、本記事では下記の内容について詳しく書いてみたいと思います。

スタートアップが抱える特許訴訟リスク

以前、スタートアップと特許訴訟に関する記事を書いた。

上記記事の中で、「Exitの際に特許訴訟のリスクがあると買収金額が下がる」という話を書きました。

特許庁もこの問題を認識していて、「売り手側(=スタートアップ側)から見た知財デューデリジェンス」の手順書が公開されています。

IP BASE:知的財産デュー・デリジェンス/標準手順書 Seller's DDのススメ

M&Aの場合は、「買い手が保有する特許」という知財リスクを抑える特効薬が使える(可能性がある)

冒頭のツイートに書いてあるのは、

・IPOによるExitと、M&AによるExitで、知財リスクに関する違いがある
・M&Aの場合は、スタートアップが抱えた特許訴訟リスクを買い手が引き取る形になる
・買い手の所有する特許の状態などによっては、特許リスクが軽減される

という話です。

分かりやすくするために極端な事例で説明すると

・Exitを目指すスタートアップのA社がある
・A社はB社の所有する特許権pを侵害している可能性が高いことが判明した
・A社の買収を検討していた大企業X社は、A社が抱える特許訴訟リスクのコストを100億円と設定した
・同じくA社の買収を検討していたY社は、自社が持つ特許qをB社が侵害している可能性が高いことを確認した
・Y社は、B社と特許訴訟になった場合でも有利に進められると判断し、A社が抱える訴訟リスクのコストを10億円と設定した

というケースがあり得るのです。

下記ツイートで紹介しているのは「グリーとSupercellが特許訴訟をしたときに、Supercellの親会社であるテンセントが訴訟用に特許を譲渡した」という記事です。

スタートアップを買収した大企業は、買収した企業の価値を最大化するため、必要に応じて自社が持っているリソースを提供します。その1つとして、大企業が持っている特許は大きな力になります。

その目的のためだけではないですが、Googleは特許を取得するためにモトローラ買収や特許オークションに積極的に参加していますし、

Microsoftは、Azureを利用するスタートアップに対して、「特許訴訟を受けた場合には、訴訟用に自社が保有する特許を1つ提供する」制度(Azure IP Advantage)を提供しています。

最終的なExitに向けて知財訴訟リスクを抑えながら事業を育てるに越したことはないですが、M&Aの場合は買い手によって訴訟リスクのコストが大きく変わってくるよ、という話でした。

ちなみに、日本企業はアメリカの企業に比べて、買収後の処理(交渉などでトラブルの種を摘む等)が未熟だ、という話もありました。

このあたりも今後の日本のスタートアップ業界の課題と言えそうです。

(twitter:@tech_nomad_

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テクノ大仏(『技術広報の森』編集長)

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