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NHK朝ドラ『まんぷく』には知財の学びが溢れていた(特許、先使用、アイデア創出...)

今期のNHKの連続テレビ小説『まんぷく』、即席ラーメンに関する話ということで、実は結構気になってました。

というのも、カップヌードルは昔から「特許のオープン戦略事例」として特許庁のウェブサイトに掲載されるくらいには有名で(自分もセミナーでよく使ってました)、創業者の良い話的な切り口でその辺の話も出てくるかなと思っていたからです。

で、軽くググってみたところ、特許の話以外にも知財に関わる話がいろいろ出てくることが分かりました。商標だったり、先使用権(これも特許の議論の一要素ですが。詳細は後述)だったり。

今回は、ソニー・トヨタに続く『日本企業の昔話を振り返る』第三弾として、ドラマ『まんぷく』を切り口に、日清食品の即席ラーメンについて見ていきたいと思います。

※テレビ放送前のネタバレが含まれる可能性もある旨、ご了承ください。

粗悪品を排除するための即席ラーメン製造方法の特許開放

まずは冒頭に書いた特許のオープン戦略の話から。

特許というとコピー品を排除するために取得するイメージが強いですが、まんぷくの即席ラーメンでは「コピー品を作ってもらう」ために、特許を他社に開放しています。

特許を他の会社に使わせてあげるかわりにライセンス料をもらうパターンもあるのですが(即席ラーメンも最初はそのパターンを考えていたようです)、最終的には無償で開放したようです。

では、なぜそんなことをしたかというと「マーケット立ち上げ時に粗悪品が出回ると、せっかく作ろうとしている需要が壊れる」からです。

もしはじめて食べたカップラーメンがめちゃくちゃ不味かったら(他メーカーのものであっても)なかなか食べる気にはならないですよね。

即席ラーメンのマーケットを立ち上げるためには、他社も含めで美味しい商品が出回る必要があった。そのために特許を開放した、ということです。

新しい分野でサービスを立ち上げた会社が、類似サービスに対して「敵じゃなくて一緒に市場を育てる仲間だと思っている」ということがよくありますが、まさにそんな感じです。

「特許を持っているのはあなただが、先に作り始めたのは私だ」は通じる?

「特許の開放戦略」と言いつつ、実際のところはコピーを防ごうとしてうまく行かず、戦略を変えたようです。

特許によるコピー品の排除がうまく行かなかった理由として作中に出てくるのが「特許の先使用権」という話。

先使用権についてざっくり説明すると「特許出願より前に自分たちがその技術を自社で実施またはその準備をしていた場合、特許権者の同意なしにその特許の実施権を認められる」というものです。

下記あらすじにある「特許を取ったんはおたくかもしれませんが、あのラーメンを先に作ったのはうちや」という主張は、(すごく方便に聞こえますが)まさに先使用の主張をしているわけです。

(詳しくは下記記事ご覧ください)

実際に使おうと思うと「特許出願時に自分たちが実施していた(その準備をしていた)」の証明がけっこう大変なので、可能であれば特許を無効にするような対応の方が優先度が高いかなと思います。

アイデア創出の教科書としても学びの宝庫

鍋で煮込む即席ラーメンの市場が飽和して、新しいニーズを掘り起こすことになったまんぷく食品。そこで思いついたのは、今では当たり前となっている「カップラーメン」のアイデアでした。

下記記事に紹介されている

・既存技術を応用する

136話・熱風での除臭。アメリカから輸入される発泡スチロールが無臭であることをヒントに、熱で臭いを取り除く製造工程を開発。

139話・フリーズドライ。大学時代に読んだ論文をヒントに、乾燥した具材を開発。

・日常から気付きを得る

142話・アルミ箔でくっつけた蓋。飛行機の機内食で出てきたマカデミアナッツの容器をヒントに、発泡スチロールの容器にアルミ泊の蓋をくっつける方法を開発。

143話・容器の途中で麺を固定する。小さい容器に固形の麺を入れて途中で詰まってしまったのをヒントに、小さな容器に麺を入れる方式を開発。

144話・「麺をカップに入れる」のではなく、「麺にカップを被せる」。部屋が上下に回転する夢をヒントに、カップを上から被せる方式を開発。

などなど。

カップラーメンのエピソードが始まってからは「課題が出る→解決案を生み出す→次の課題が...」の繰り返しで、これまでにない商品を作るプロセスは、課題解決の集まりだなと改めて思いました。

まとめ

今回の記事では技術に関する知財(特許・先使用権・アイデア創出)について、ドラマ作中のエピソードと絡めて紹介しました。

作中で派商品名の商標の話やポスターのデザインなど他にも知財に関する話題が出てくるようなので、気になる方はぜひ見てみるとよいかと思います。

補足・キャッシュポイントを作って無償開放するパターンもある

1つ目に紹介した特許の開放戦略としては、paypayやラインペイなどで目にする機会も多くなったQRコードも似た方式を取っています。

QRコードは元々日本企業のデンソーが開発したもので、関連する技術の特許を取得した上でライセンス料無料で開放しています。

こちらは特許のオープンとクローズを使い分けた知財戦略のお手本のようなビジネスモデルです。

カップヌードルとはちょっと違った戦略ですが、この辺りはまた機会あったら記事にしようと思います。

(参考)

『まんぷく』と知財について、もっと詳しい話を知りたい方はこちらの記事を。けっこう専門用語多いですが参考になると思います。

(twitter:@tech_nomad_

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