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【ITトレンド2018】スライド294枚から10枚選んでまとめてみた

毎年5月にアメリカで開催されるIT&メディアのカンファレンス「Code Conference」。その目玉の1つが、IT業界の伝説のアナリストと呼ばれるメアリー・ミーカー(現在はベンチャー・キャピタリスト)が発表する「Internet Trends 20XX」(通称:メアリ・レポート)です。

本記事では、毎回30分の発表時間で200枚以上(今回は294枚!)のスライドを使用する膨大な情報の中から、自分なりに構成を組み立て直し、スライド10枚に絞ってその内容を紹介します。

※本記事の最後に講演動画と講演資料を掲載しているので、全内容が知りたい方はぜひそちらも合わせてご覧ください。

0. 時間が無い方はこちら。1分でわかるITトレンド2018まとめ

1. グローバルでのユーザー数の成長は鈍化。しかし、1人あたりの消費時間はまだまだ成長の余地あり

グローバルでのインターネットユーザー数(棒)と増加率(折れ線)の推移

アメリカ成人が1日でデジタルメディアと接続している時間の推移(緑がモバイル)

この2枚のグラフが一番広い視野でインターネットトレンドを紹介したスライドになります。要するに「ユーザー数は昔ほど増えなくなるから、成長を続けたければ1人あたりの使用時間を押さえましょう」ということです。

下のグラフで分かるのは「1日あたりのネット接続時間は増えている」「増えている要因はほぼモバイル」の2点ですが、モバイルもちょっと伸び悩みが見える推移になっており、隠された問いかけとしては「ネットとの接点はモバイルの次は何になるのか?」ということだと思います。

2. 検索クエリは「近くの〇〇教えて」が900%増

Google検索クエリの増加率。「Near Me」が900%増。

ちょっと分かりにくいかもしれませんが「近くのレストラン教えて」「このあと見られる映画教えて」といった検索です。個人的な解釈ですが、「近く」は「場所」と「時間」の両方を指してると思います。

このグラフを見たときに「モバイルシフトってこういうことだったのか」と初めて腑に落ちた感覚がありました。画面が小さくなるとか、どこでも見られるようになるとか、そういうことではなくて、要するに「今の私の状況に合わせてサービス提供してください」ということなんだと思います。

3. 欲しいものはAmazonで直接検索

商品を探すとき、最初にどこで探すかのアンケート結果

このグラフを見たときに昨年読んだこの記事を思い出しました。検索エンジンの多様化(細分化?)です。

あと、Googleの検索クエリが「いま、ここ」が伸びてることと合わせて考えてみると、いわゆる「パーソナライズ」って2つに分かれるのだと思いました。

3.1 パーソナライズには「属性」と「状態」の2つがある

よく言われるパーソナライズは「その人の属性・趣味・嗜好などを把握して検索結果やリコメンドを調整する」だと思うんですが、Google検索クエリのことを考えると「いま、ここにいる、お腹が空いている人」みたいな「その人の状態に合わせてチューニングする」なんですよね。言い換えるなら、長期的な視座でのパーソナライズと、短期的な(数分で状態が変わる)視座でのパーソナライズ

後者の視点をあまり持ったことがなかったので、個人的にはハッとしました。

4. Shopping is Entertainment!

アプリ種類別のセッション増加率(2016→2017)

eコマースのアプリが、動画・音楽よりも、ビジネス(slackとか)よりも、使用頻度が上がっているというグラフです。で、このグラフの前のスライドでメアリーさんが挙げていたのが「Shopping is Entertainment」です。

昔から休日は買い物(ウィンドウショッピング含む)という人が多かったことから買い物がエンターテイメントというのは分かるのですが、ここで言われているのは単にそういうことではないです。

このスライドの次には、YoutubeとTaobao(中国最大のeコマースサイト)を中心に商品レビュー動画やライブコマースが流行していること、くじ引きや集団購入での割引などゲーム化が行われていることなどが紹介されていました。

ネットのエンターテイメントの中心は動画・ゲームですが、「エンタメのライバル」にeコマースがなりつつある、ということです。

5. 広告投下費用は、そのメディアにユーザーが使う時間に比例する

アメリカのユーザーの消費時間と広告費の内訳

前項で紹介した「eコマースのエンタメ化」と絡めて考えたいのがこの図です。メディアごとのユーザー消費時間と広告投下費用の比較です。

まず思ったのが「ユーザーが見ている時間と広告費用は比例する」「その観点で、モバイルの広告費は現状ギャップがある(モバイルの接触時間はまだ増えるはず、という話とは別の議論)」という視点。言われてみれば納得感があるんですが、こういう見方をしたことが無かったので参考になりました。

そしてもう1つ思ったのが、「ショッピングサイトも滞在時間を増やせば、メディアとして広告費が(も)稼げる」ということです。極端に言えば、仮に商品が売れなくても商品レビュー動画をユーザーが長時間見ていれば、それで利益が上がるということです。

これは、自分自身は何も売らずに広告費で収入を得ていたYoutuber(特にゲーム実況など)と近い状態なのかもしれません。動画プラットフォームが人気の実況者を抱えにいく動きがここ数年ありましたが、ショッピングサイトがそういう動きをするようになっていくんだろうなと思います。

6. 知ってたけどやっぱりすごい! おまけの4枚

個人的な本編はここまでです。ここから先は「だいたい知ってた。けど、改めてイラストで見ると凄いな or 整理された」情報になります。

6.1 ユーザー数が伸び悩んでも収益を伸ばすことは可能

FacebookのDAU1人あたりの売上推移

この記事を数日前に読んだばかりだったので参考にしながら読んでいました。

facebookも大きな意味では広告ビジネスで、接触ユーザー数が重要かと思ったんですが、その印象以上に1DAUあたりの売上単価が急激に上がっていました。これはちょっとびっくりしました。

6.2 中国のモバイル決済がやっぱり凄い

中国のモバイル決済総額推移とシェア内訳

中国のモバイル決済はすごいと聞いてましたが、取り扱い金額の伸び方が半端ないです。

6.3 ショートムービーの勢いが凄い

中国ユーザーのモバイルでの消費時間推移

TikTokをはじめとしたショートムービーの成長がすごいです。生放送やゲーム実況(緑)は既に横ばい、Netflixのような長時間コンテンツ(赤)もそろそろ横ばいの中、急激に伸びているのがわかると思います。

6.4 データドリブンのAI開発

データ駆動のAI開発サイクル

これが最後のスライド。ユーザー数と製品品質のフィードバックサイクルです。AIが普及するほどに初期でユーザーをどれだけ確保できるかが重要になるというのが分かりやすいです。

まとめ

全294枚のスライドの中から、自分の中で気になる部分を抜き出して各トレンドの関係性を整理しなおしたものが本記事の内容になります。

元の公演では、サブスクリプションサービスの普及、フリーランスの増加など、他にも様々なトレンドが紹介されているので、自分の興味と照らし合わせて元資料を読んでみるとよいと思います。

(twitter:@tech_nomad_

参考:メアリー・ミーカー講演アーカイブ&発表資料

講演動画(33:15)

講演資料(294枚)


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