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テンセント、ミクシィ、DeNA…事例で学ぶ最新コンテンツIP戦略

2017年のスマホゲーム世界売上ランキングで3位になるなど、人気が続くスマホゲーム『モンスターストライク(モンスト)』。Youtubeでのアニメ配信を経て、2018年10月には劇場映画を公開とゲーム以外への展開を積極的に行っています。

ゲームが絶好調の『モンスト』が映画公開で狙っているのはいったい何なのか。

そこには、中国最強IT企業の1つ・テンセントにも通ずる最新のコンテンツIP戦略が関わっています。本記事では、テンセント、ミクシィ、DeNA、サイバーエージェントなど、日中を代表するIT企業が仕掛けるコンテンツビジネスの仕組みについて解説します。

※テンセントにフォーカスして事例を整理した記事を新しく作成しました。中国コンテンツ動向に興味がある方はぜひそちらをご覧ください。

1. マンガと文学はIPを生み出す金の卵?

先日、中国事情に詳しいジャーナリスト・高口康太さんがこんなツイートをしていました。

テンセントの強さはコンテンツ事業(オンラインゲーム、コンテンツ配信)によるところが大きいです。現状のテンセントのコンテンツ強者っぷりは下記の記事に詳しく書いてあります。

一方、これらの事業はIPの有無が収益に大きく影響するビジネスです。オンラインゲームでも、ゲーム性の高さと同じくらい(あるいはそれ以上に)自分の好きな作品、キャラが出てくることが重要だったりします。

テンセント2Q2018決算資料より、スマホゲーム事業ハイライト。聖闘士聖夜のゲームがリリース直後から人気とのこと(掲載表の右下)。

FGOやモンスト、ポケモンのようにゲームから始まってそのまま人気IP化した作品も多くありますが(FGO、モンストは「歴史が原作」とも言えますが)、IPもので人気のゲームはマンガやアニメで人気の作品をゲームにしたものが多いです。ドラゴンボールやナルトなどです。

2. DeNAとサイバーエージェント。コンテンツIPの真逆の動き

2.1 DeNAは、ゲーム事業の利益を高めるためにマンガ事業を作る

ソーシャルゲームのプラットフォーム「モバゲー」を持つDeNAが、「マンガボックス」というマンガアプリを作った理由について、こんなことが語られています。

収益の柱になったモバゲーの中で、売上が上がっているゲームのタイトルを調べると、いわゆるIP(Intellectual Property/知財財産)もののゲームっていうのが大きかったのです。「キン肉マン」(ゆでたまご/集英社)や「キングダム」、「七つの大罪」(鈴木央/講談社)、「進撃の巨人」(諫山創/講談社)といった、マンガを原作としたIPを活用したゲームの売上も非常に大きいです。
その数字をまた分析していくと、ライセンス元に対する支出もやはりそれなりに大きな金額になっている。ここが自社のIPになれば、非常に利益率が上がるだろうという、シンプルなことから始まりました。
参考:マンガは拡張する(対話篇)Webマンガと市場構造

ゲームなどで既存のコンテンツIPを使うときに、そのコストを下げるためには自社でIPを育てるのが重要だと語っています。

IPを自社で保有していきたい。そして人気IPは「マンガ」というフォーマットから輩出されるものが非常に多い。マンガであれば、ゲームと比べると投資も安いですし、自分たちでも多くのチャレンジができる。そこでDeNAでマンガのサービスを作り、最終的にはゲームになるようなIPを作っていこうという流れで「マンガボックス」を立ち上げるに至りました。
参考:マンガは拡張する(対話篇)Webマンガと市場構造

「最終的にはゲームになるようなIPを作っていく」と明確に言っているのが印象的です。

2.2 サイバーエージェント、ゲームのIPをアニメ・マンガに展開

広告と並んでサイバーエージェントの利益を支えるゲーム事業(Cygames)は、自社一社提供によるアニメ制作・アニメ事業部の開設・マンガアプリの開始など、ゲーム以外の分野に手を広げています。

この動きの中で目立つのは「神撃のバハムート」「グランブルーファンタジー」といった、自社制作でしかも既に大きくヒットしているゲームのIPをアニメやマンガに展開していることです。ゲームのファンをさらに開拓するつもりなのか、プレーを辞めてしまった人にプレーを再開させるつもりなのか、はたまたグッズなどゲーム以外での売上を目指すのか(Cygamesはグッズ販売サイト「Cystore」も持っている)…今後の動きが注目です。

ちなみに、Cygamesアニメ事業部部長の竹中氏は、アニメ単体(DVD等のパッケージ、いわゆる円盤)での収益化は難しいと発言しており、ゲームやグッズも絡めたアニメ業界の新しいビジネスモデルを作っていきたいとのこと。

いまどこの会社も考えているところですが、パッケージに縛られないビジネスモデルを確立することが重要ですね。じつは円盤(パッケージ)が売れている作品はそこまで多くなくて、実際に蓋を開けてみるとイベントチケットが付いているなど、純粋に映像作品のみで購入を決めている人は少なくなってきているのではないでしょうか。
そのため、パッケージビジネスを考えなくとも収益が見込めるようなビジネスモデルを組み立てていかなければならないと思っています。それこそ、弊社の強みであるソーシャル性やゲームなどを組み合わせてもいいかもしれません。
参考:【インタビュー】「アニメ業界の再編に」…何故Cygamesはアニメ事業部を立ち上げたのか? 事業部長に訊く

3. コンテンツIP戦略における各メディアの位置づけ(期待される役割)

ここから、メディアごとにコンテンツビジネスでどんな役割を担っているかを解説していきます。

3.1 マンガ、小説→低コストで原作を大量生産

本記事前半の高口さんのツイートどおりですが、小説(ネット小説含む)とマンガは大きく育つIPの卵の役割になります。両コンテンツ(両メディア)の特徴としては、他の形態に比べて「制作にかかるコストが少なくて済む」ということです。少ないコストで作品を量産して、その中からお金をかけて育てるIPを見定める場所になります。

ちなみに、誰でもRPGが作れることで人気の「RPGツクール」は、2017年末に「ラノゲツクール」(=ライトノベルゲームツクール。「FGO」も最初はノベルゲームです。)をリリースしています。これも広い意味では小説投稿文化の醸成で、ユーザー投稿文化を持つニコニコ動画とIPをお金にできるカドカワがIPを生み出す打ち手として分かりやすいです。

3.2 ゲーム→マネタイズ

ゲーム、特にスマホゲームは、基本的にはマネタイズの場所です。モンストの2017年の世界売上が約1300億円ですが、これは数年前に社会現象にもなったディズニー映画「アナと雪の女王」の世界興行収入とほぼ同額になります。

これは要するに、ディズニーの何年かに一度の大ヒットと同じ規模の売上を継続して挙げられる可能性があるということです。こう見ると、スマホゲームのマネタイズ装置としての強さが分かるのではないでしょうか。

ちなみに、昔は玩具・グッズ(ガンダムのプラモデルなど)、あとパチンコ・パチスロが主なマネタイズ役を担っていました。

3.3 アニメ・映画・リアルイベント(フェスなど)→認知度向上&休眠ユーザーの復帰

アニメや映画、そして最近増えているリアルイベント(FGOフェスなどが有名)は、まだユーザーでない人にリーチしたり、過去にゲームを遊んでいたけど何となく止めている人を復帰させたり、の効果があります。

映画やリアルイベントは時間や場所を制限(=集中)させることで、熱狂感を生み出す効果があり、現役ユーザーでない人(未経験、休眠)にアクションを起こさせやすい効果もあります。

3.4 おまけ:プリキュアのアニメとグッズを連動させた年間グッズ販売システム

アニメとグッズを連動させたコンテンツ戦略の見本になるのが少女向けアニメの「プリキュア」です。子供がグッズを欲しがるタイミングで新キャラや新しい武器や衣装が出てくる、みたいなストーリー構成にすることで、グッズでのマネタイズ効果を最大化しています。

プリキュアは先日AR技術をつかった絆創膏もリリースしています。これもIP活用の1つですね。

まとめ

各社の事例を盛り込みながら、いまどきのコンテンツIP戦略について解説してみました。皆様の参考になりましたら幸いです。

(twitter:@tech_nomad_

※テンセントにフォーカスして事例を整理した記事を新しく作成しました。中国コンテンツ動向に興味がある方はぜひそちらをご覧ください。

おまけ:参考書籍

本記事で紹介した複数のメディアを駆使したコンテンツ戦略について詳しく知りたい方は下記書籍がおススメです。


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