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受付嬢の大園さんに見透かされて溶かされた。


上司:おいー。〇〇が作った資料、ミス多いぞー?

〇〇:すみません!以後気をつけます!

上司:疲れてんのか? 〇〇にしては珍しい.....でも、ミスは良くないぞー。


上司が眼前でごちゃごちゃと説教を垂れている。まぁ、オフィス内ではよく見る光景だ。


上司:ま、今後気をつけるように。

〇〇:はい。すみませんでした!


一応、頭を垂れてから自分のデスクに座る。


後輩:す、すみません....本当は僕が作った資料なのに...

〇〇:ん?あぁ、大丈夫だっての笑 お前はミス気にせず頑張れ。な?

後輩:は、はい!


横のデスクの後輩は再びデスクへ向かう。奮起しているようだ。

〜〜

〇〇:ただいまー....つっても誰もいねぇか笑


いつも通り近くのスーパーでビールを買って帰る。


〇〇:...んっ...んっ....ぷはぁ...あー....うめぇ。

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スーツに身を包み、いつも通り変わり映えのないオフィスに出社する。


後輩:あ!〇〇さん、おはようございます!

〇〇:おう!おはよう!

上司:おー、〇〇。おはよう。

〇〇:おはようございます! 今日もよろしくお願いします!


できるだけ良いイメージを与えられるように、元気にありきたりな挨拶を交わす。


大園:あ、〇〇さん、おはようございます〜。

〇〇:あ、大園さん。おはようございます。


受付嬢の大園さん。美人。もしかしたら大園さん目当てで取れた契約も何件かあるんじゃないだろうか。


大園:.........ジー

〇〇:ん?なんかついてます?

大園:....疲れてるみたいですねぇ、休む事も大事ですよ?

〇〇:え....だ、大丈夫ですよ?笑 体力無限なんで!

大園:んー....そうですかねぇ...


何処となく不思議な雰囲気を纏っている。そんな人だった。オフィス内でも人気が高かった。

〜〜


上司:よし!〇〇!昼飯食いに行くか?

〇〇:うわぁ!行きたいっすけど....今日は弁当持って来てるんすよねー笑

上司:なぬ!彼女でも出来たのか!

〇〇:自分で作ったんすよ笑

上司:なんだよー笑 でも〇〇は仕事熱心だからなぁ、彼女とかはできねーか。


上司はそう言い残して出て行った。


後輩:先輩、弁当とか作るんですねー。

〇〇:まぁな。よし、俺も飯食うかなー。

後輩:あれ、ここで食わないんですか?

〇〇:ん、ちょっとお気に入りの場所あってさ。

〜〜

屋上


〇〇:はぁ....


カチッ シュボッ


〇〇:すーーっ.......はぁぁぁぁ...


肺の深い所まで煙草の煙を入れる。別に中毒じゃない。本当に時々吸うだけ。

死んだ母にずっと言われて来た。「良い人でありなさい」 漠然としてるなと思って来たが、気づけばずっとその言葉を守っている。

弁当なんて作ってない。上司の誘いを上手く断る為。後輩の残した仕事も家に帰って俺がやる。ミスも俺が被る。それで会社の雰囲気込みで上手く回るならそれでいい。

本当は暗い人間なんだ。 出来るなら部屋の隅でイヤホンをしながらずっとラジオを聴いていたい。


〇〇:あーー......疲れた....

??:あれ〜? ここ喫煙所じゃないですよ〜?

〇〇:んぐっ!ゴホゴホッ!え!?


普段は誰も来ない屋上。不意に聞こえた背後からの声に思わず咳き込んでしまった。


大園:大丈夫ですか?

〇〇:あ.....お、大園さん....


後ろにいたのは大園さんだった。


大園:〇〇さんって煙草吸うんですねぇ。

〇〇:あ、こ、これは違くて.....あっつ!


見られたくなくて、思わず手で煙草を握りしめてしまった。


大園:えへへ笑 ごめんなさい。〇〇さん何処にいるのかなぁって探してたら、こんな所まで来ちゃいました。

〇〇:え....俺を?なんで?

大園:疲れてるように見えたから。


泣いてしまいそうだった。この人は俺の事をどこまで見透かしているんだろう。


〇〇:だ、大丈夫ですって笑 疲れてませんよ。....あ、俺が煙草吸ってた事は秘密でお願いします!じゃ!

大園:あっ!


俺は逃げるように屋上を後にした。自分の底を見せるのが怖かったから。

〜〜

上司:もうそろそろ退勤時間だぞー。

〇〇:.....おい、終わってっか?ボソッ

後輩:ま、まだです....ボソッ


少し泣きそうになっている。


〇〇:わかった。後は俺が家でやっとくからさ、帰っていいぞボソッ

後輩:毎回....すみません...ボソッ

上司:残業は無しだからなー。上からの通告だから。


残業は無し。つまり、終わってないならタイムカードを切れということなのだろう。まだまだ働き方改革なんぞ普及していないように思える。

自分の仕事もまだ少し残っている。〇〇はタイムカードを切って、少し会社に残ることにした。


〇〇:..........ん....あ、もうこんな時間か。


外はもう暗い。後輩の分もここでやろうと躍起になってしまった。


ザーーー ピシャ! 外は豪雨に雷。


〇〇:やっば......電車止まってる...


スマホで確認するも、電車は止まっているようだ。


〇〇:ツイてねぇなぁ.....


近くの漫喫にでも泊まろう。そう決めた。

〜〜

生憎、傘も持って来ていない。天気予報見てくればよかった。


〇〇:.....走るか.....ん?


意を決して、会社から出ようとすると、肩を叩かれた。


大園:傘、ないんですかぁ?

〇〇:お、大園さん....


肩を叩いたのは大園さんだった。


大園:電車、止まってるみたいですしねぇ.....来ます?

〇〇:へ?ど、どこに?

大園:私の家。

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〇〇:お、お邪魔します....

大園:どうぞー!


女性の家なんていつぶりだろう。結局大園さんに押し切られて泊まらせてもらうことになった。変な気を起こすタイプには見えなかったんだろう。


大園:......〇〇さん。私に気を遣ってちょっと濡れちゃってますねぇ...

〇〇:あ、大丈夫っすよ。タオルかなんか貰えれば。


大園さんの傘を俺が持って、二人で歩いて来たのだ。いわゆる相合傘。


大園:ダメですよぉ。風邪ひいちゃいます。お風呂沸かすので先に入っちゃってください!

〇〇:え、あ....ありがとうございます...。

〜〜

風呂に入ってる間も、なんだか落ち着かなかった。変な気を起こさないように必死だった。


〇〇:ふぅ....あ、お先....しました...

大園:あ、丁度料理出来上がりましたよ〜


思わず見惚れてしまった。キッチンに立っていたのは、いつもと違う格好の大園さんだった。


大園:食べましょ〜

〇〇:い、いいんですか?

大園:二人で食べた方が美味しいですし?いつも一人だと寂しいんです。

〇〇:そ、そうですか...


彼氏はいないんだろうか。とりあえず俺は大園さんの対面にすわった。

大園さんは食べずに、俺が食べる様子を笑みを浮かべながら待っている。

〇〇:い、いただきます....パクッ....ん、美味い...


最近はコンビニの弁当しか食っていない。大園さんの料理は身に染み渡るようだった。


大園:えへへぇ// 良かったぁ....パクッ...確かに、美味しいですねぇ笑

〇〇:自分で言いますか笑


そこからは割と打ち解けた方だと思う。二人でくだらない事を言い合ったり、上司の悪口を言ったりしていた。

少しだけ、大園さんの前では、素でいれた。

〜〜

〜〜

大園さんは今風呂に入っている。女性の家のリビングに一人。全く落ち着かない。


〇〇:.......雨止んできたな....今からでも....歩いて帰ろうかな..


ガチャガチャ ガタッ 大園さんが風呂から上がってくる音が聞こえてくる。

ここで最大のミス。俺は何を思ったのか、寝たふりをしてしまった。


〇〇:(何やってんだ俺.....)

大園:ふぅ...お風呂上がりましたぁ....って....寝ちゃってますぅ?


閉じた瞼の向こう側で大園さんの声と足音が聞こえる。ソファで寝ている俺に近づく気配がする。


〇〇:(.......え?)

大園:よしよし....私はいつも〇〇さんが頑張ってるの知ってますよぉ....ナデナデ


俺は今.....頭を撫でられている。まるで子供をあやすかのように。


大園:.....きっと〇〇さんは自分に厳しくて、人に優しい人だから.....私が〇〇さんの居場所になれれば良いんですけどねぇ....ナデナデ

〇〇:..............

大園:......"良い人"ですねぇ....〇〇さんは....

〇〇:......すみません大園さん。起きてます....

大園:へっ!?

泣いてしまう前に白状する事にした。ゆっくりと目を開けると目の前にはフードを被って恥ずかしそうにしている大園さんがいた。


大園:もう...いつから起きてたんですかぁ// 恥ずかしいです//

〇〇:すみません、最初からです笑

大園:////

〇〇:ありがとう....ございます...

大園:え?

〇〇:なんか....全部報われた気がしました。今日ここに来れて良かった。雨も止んだみたいなので、帰ります。


俺は立ち上がって、家を出て行こうとした。


ガシッ 腕を掴まれて動けない。


〇〇:へっ?

大園:....ずるいです。〇〇さんは。

〇〇:え?

大園:私だけ恥ずかしいこと言って//  見返りがないと、許さないです...

〇〇:え、あ、ご、ごめんなさい! 見返りかぁ....

大園:.....一緒に...寝てください...

〇〇:うぇ!?

〜〜

〜〜

大園:えへへぇ// 近いですねぇ。

〇〇:(寝れる訳ないだろう!!)


無理やり寝室に連れ込まれ、ベッドに放り込まれてしまった。〇〇は必死に別のことを考える。変な気を起こしてしまわないように。


大園:〇〇さん?

〇〇:.....はい。

大園:....私、〇〇さんの事好きなんです。

〇〇:え?

大園:だから....私くらいには甘えて欲しいですねぇ..


大園さんが俺の事好き?


〇〇:......俺じゃなくても....もっと良い人が・・んっ!


強く抱きしめられた。


大園:返事は聞いてないですよぉ....とりあえず今日は私に甘えてください。ね?

〇〇:え、あ......はい。


もはや抗う気も起きなかった。


大園:後でゆっくり溶かしてあげますからボソッ

〇〇:え?

大園:えへへ笑 何でもないです。おやすみなさい。

〇〇:.....おやすみなさい。

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大園:........おはようございまーす。

〇〇:ん....あぁ...おはようございます...


いつもはオフィスで聞こえる大園さんの声が耳元で聞こえた。


〇〇:....か、可愛い。

大園:恥ずかしいですよぉ//

思わず口に出てしまうほど可愛かった。


〇〇:昨日は泊めてくれてありがとうございます。大園さん。

大園:いえいえ。.....でもその大園さんっていうの、やめてください。

〇〇:え?

大園:同い年なんですから、"玲"って呼んでください。

〇〇:え、あ、わかりました.....玲?

大園:へへ// 朝ご飯できてますよ。〇〇さん...じゃなくて...〇〇?//


あぁ、きっと俺は、玲から離れられない。ゆっくりと溶かされていくんだろうと、思った。

でも、それがたまらなく嬉しかった。

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                   Finish




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