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癌を「自分で治す」と決める

癌の診断を受けるすこし前、たまたま読んでいた小林健さんの著書に、彼が癌を自分で治すくだりがあった。小林健さんはニューヨークで活躍する自然療法医で、その本は『長生きしたけりゃ素生力をつけなさい』だったと思う。

最初に訪れたクリニックで「(胸のしこりは)おそらく、治療の必要なもの(癌)でしょう」と言われた日、わたしは、不安がありありと形になって、現実になっていく、まさにその瞬間を体験しているような居心地の悪さを味わっていた。

クリニックの医師は「ここでこれ以上の検査をしても仕方がないから、治療のできる大きな病院へ行ってください」と言って、すぐに紹介状を用意してくれた。

この時まで、自分が癌になるなんて思ってもいなかったけど、もう避けられないことが起こり始めているのだなと、薄々わかってしまったような感じがあった。

その日、家に帰ると、インターネットで癌のことを調べ始めた。その時まで、癌について、特に乳がんに関しては「避けてきた」と言っていいほど、何も知らなかったのだ。

調べによると、左胸の乳がんにかかりやすいのは、甘いものや乳製品を摂りすぎている人。そして「自分さえ我慢すれば」と無理をしがちで、他人を優先してしまう、お人好しのハードワーカー。なんと、まさに、わたしだった。

癌になるまで、自分が無理をしていたことに気がつかなかったのだと思うと、涙が止まらなくなって、しばらくじっと静かに泣きながら、自分に起きていることを受け止めはじめた。そうすると、こうして身体が教えてくれて、生き方を見直す機会が得られたのは、なんと有難いことだろうと思えてきた。

癌は「もう限界だから生き方を変えてほしい」という、身体からのメッセージだったのだ。

左胸のしこりは、わたしの不完全さを象徴しているようでありながら、それでいて愛すべきわたしの一部だとも感じられて、もう、怖いものだとは思えなかった。

気のすむまでさめざめと泣いた後、わたしは前述の小林健さんの本を取り出して、癌に関する章を何度も読んだ。その夜遅く、仕事を終えた彼が帰ってくると、一部始終を話してから、その本の重要な部分を読んで聞かせ、わたしにもできるかな?と、やってみるつもりでいることを控えめに伝えた。

まだ正式な診断を受ける前だったけど、この時にはもう、癌は自分で治すのだと決めていた。

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