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『往来』のあとがき

この度、あひるひつじさん企画の文章アンソロジー『暮らしの中にある宇宙ー季節編ー』に、小説『往来』を寄稿させていただきました。

↑あひるひつじさんによる説明記事です。文章の一部が読めます。

↑イラストを担当されたスヤリさんの記事です。それぞれの文章に対応したイラストを描いてくださっていて、こちらではそれぞれに込められた意図について書いてらっしゃいます。サムネは『往来』のイラストです。最高……

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本題に入りますが、この記事は拙作『往来』のあとがきになります。
前回に寄稿させていただいた『特別でない嗜好』は、概ねこのnoteで書いてるような内容だということもあってそういうのは書かなかったんですが、今回は小説ということもあって至らない点も多く、せめてもの補足になれば……とこれを書くことにしました。

そのため、こちらの記事は、本文を読んで興味を持ってくださった方に読んでいただければ、と思います。本当に野暮なので、ヘタしたら読まない方がいいかもしれません。それでもいいよという方だけどうぞ。






・この文章のテーマは「ウソ」です。前作の皆さんのフィクションとノンフィクションが入り混じった作品群を読んだ時の「これ、ウソか?ホントか?」と思ってしまう感覚が面白いなと思ったので、わかりやすく現実と虚構が混じり合う構成にしてます。書く体制としては、通学の関連描写は実体験、女の子は全部ウソです。

・それを繋ぎうる、現実と虚構の間にあるものとして音楽があり、それを主人公が疑うという構造になってます。「彼女」と顔を合わせても主人公がイヤホンを取ろうとしないのも、イヤホンを外して話が終わるのも、そういった文脈での意味があります。

・それを際立たせる要素として、「彼女」に関してはちょっとだけ現実ではあり得ないことが起きています。自販機に硬貨を入れてないのに飲み物が出てきてるという本当に些細なものですが。
他にも、主人公が「彼女」に一度も触れていなかったり、話していなかったりというのも彼女の実在を疑わせる要素です。極端な言い方をすれば、主人公にだけ見えている幻のようにも取れるような感じにしています。

・最後にネタばらし的な展開を入れることも考えましたが(多分その方が話としての収まりはいい)、「所詮ウソはウソ」と彼女を否定するのはとても嫌だし、個人的な信条にも反するのでやめました。



スーパー大辞林より引用

・『往来』とは、①は電車、②は広義で駅のホーム、③は主人公がやってること、④は主人公と「彼女」のこと、となっています。ここがこの文章で一番うまくいったところかも。




・本作は前作『特別でない嗜好』の続編という側面も持たせています。最初に主人公が聴いてるのは『キラッ!満開スマイル』。前作で大きく取り上げた『秘密のトワレ』と同じ、ササキトモコさんの作品です。「南南西から鳴く風」という歌詞がある『なんてったって春』も、同じく前作で取り上げたサカナクションの曲です。「春」に沿わせつつ前作要素を……と思って入れました。

・最後に流れているのはフジファブリックの『桜の季節』。「いかにも春っぽい!」みたいな曲はもっとたくさんあるかもしれないですが、実際に自分が聴いてる音楽から選んだ結果こうなりました。でもMVに一切桜が出てないんだよな……まあ電車の車窓を見てるシーンがあるからプラマイゼロで……


・ここからは本当に裏話的になりますが、「彼女」の特徴は『秘密のトワレ』を歌っている一ノ瀬志希さんと重ねています。「全てを見通すような瞳」は個人的に一ノ瀬さんに感じている印象です。前作で「虚構に虚構を重ねることでかえって現実味を帯びる」という内容も、本作に絡んでたり絡んでなかったりすると思います。

・もはや裏話ですらないですが、「彼女」は『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』に登場する僕が大好きなキャラクター、大場ななとも重ねました。「甘い匂い」とか「鮮やかな髪」とかは二人ともの共通要素だったりします。
一ノ瀬志希さんもそうなのですが、第四の壁をも平然と超えてしまうような凄みがあるキャラが好きです。そういうメタフィクションとの親和性が高いキャラクター性を持っているという意味では、今作のテーマにも合っているかもしれません。流石にそれは言い訳かも。




・近くに座っていた人が観ていたのは

これ。めちゃくちゃ面白いから入れた。
というのは半分冗談ですが、「電車の中で他の人のスマホの画面をちょっと盗み見ちゃう」というのはちょっと生々しいあるあるとしてリアリティがあるんじゃないかという意図があの場面にはあります。


いろいろ書きました。「ふーん、そういうこと考えてたのね」と少しでも思ってもらえたなら幸いです。改めまして、素晴らしい機会をくださったあひるひつじさん、素敵なイラストを描いてくださったスヤリさん、ありがとうございました。

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